Tony Bennett(August 3, 1926 – July 21, 2023)が他界して4ケ月が経過するが、日本では目立った追悼番組、特集などは
これまで、知る限りでは見受けられない。欧米では3冊ほど著作が発売されているが、残念ながら翻訳本は
でていない。"Good Life"は1998年に刊行された自伝で、日本ではこれまであまり報じられていないエピソードが満載でファンの方には注目していただきたい。今回はこの書籍の内容を紹介しながら彼の音楽活動をたどります。
自伝のタイトルになっている"Good life"(Sacha Distel-Jack Rearden)はフランスの作品で1963年
全米18位を記録しています。
1950年CBSと契約したBennettの最初の大ヒットはMitch Millerが制作しPercy Faithが編曲した
"Because of you"(Arthur Hammerstein-Dudley Wilkinson)でチャートの第1位を記録した。
Bennettの目指したのはジャズ・シンガーであったが、CBSで制作部門を統括していたMitch Millerはジャズに理解がなく
1950年代を通じてノベルティソングの録音をトニーにすすめた。抵抗はしたが、Hank Williamsの"Cold cold heart"の
カバーは再び全米第1位を記録するなど本人には不本意な結果だった。
1953年の”Rags to riches”「貧者から富者へ」(Richard Adler-Jerry Ross)も全米第1位を8週間記録しますが、
本人はそれほど気に入ってなかったようです。
Rosemary ClooneyもBennettと同様な体験をした歌手で"Come on a my house"「家へおいでよ」(1951)も
そうした状況下で録音された作品でした。
"In the middle of the island"(Nick Acquaviva-Ted Varnick)は1957年全米9位を記録しましたが、本人が納得して
録音したわけではなかったようです。
彼のジャズに対する関心の高さは、Roulette Recordsに所属していたCount Basieとの共演を実現させたことにも
現れています。1958年にはPhiladelphiaのLatin CasinoでのBasieとの共演盤"In person"にも示されています。ただ
録音がモノラルでされたため、後日スタジオで再録音し後にライブ効果を加えたと書かれています。また、Rouletteで
Basieとのスタジオ録音を残しています。当然ながらMitch Millerは反対したようです。
Mitch Millerは1960年代初期までTonyのレコード制作にかかわったが、1962年にだした1枚のシングルがその後、人生
に大きな影響をあたえました。
"I left my heart in San Francisco"「霧のサンフランシスコ」(Douglas Cross-George Coreyは全米19位を記録し
グラミー賞を受賞。
サンフランシスコのホテルに出演した際、この曲を歌うと大きな反響をえて大ヒットにつながったのです。
この年の6月9日にCarnegie Hallに出演し、そのライブアルバムも発売されます。1953-54年にかけて大ヒットし
最高位2位を記録したMusical"Kismet"のナンバー。
"Stranger in paradise"(Robert B. Wright-George Forrest)
「ヒット曲より、ヒットアルバム」というモットーをもとに、スタンダード性の高い作品を数多く録音します。
"Fly me to the moon"(Bart Howard)は1965年全米84位を記録。
"Shadow of your smile"「いそしぎ」(Paul Francis Webster-Johhny Mandel)は最高位95位(1965)でしたが
グラミー賞,アカデミー主題歌賞を受賞します。
この曲を収録したアルバム"Movie song album"は1966年最高位18位を記録します。
"For once in my life"(Ronald Miller-Orlando Murden)は1967年全米91位を記録し後にStevie Wonder盤
が大ヒットします。
この年にはCBSの社長にClive Davisが就任しロックに力をいれジャズ系のアーティストを冷遇します。Duke Ellingtonはアルバムのセールスが伸びないことを理由に解雇。MOR系のシンガーにはアルバムに同時代のヒット曲を含めるよう要求します。
1969年のアルバム"I've gotta be me"は最高位137位を記録。
"What the world needs now is love"「世界は愛を求めている」(Hal David-Burt Bacharach)
翌1970年"Greatest hits of today"をリリースして社長の要請に応じますが最高位は144位どまり。
1971年には"Love story"「ある愛の詩」(Carl Sigman-Francis Lai)を録音し、同名のアルバムは最高位67位を記録します。
シングルは114位どまりでした。
同年にはキャリアの集大成ともいえるアルバム"Get happy with the London Philharmonic Orch."がリリースされます。
ロンドンのRoyal Albert Hotelでのコンサートの実況録音盤で、TVでも放映されました。音源がTVで、録音状態は必ずしも
ベストではありませんが、ジャズに傾倒する彼の姿勢が伺われる作品です。指揮にRobert Farnon, PianoにJohn Bunch
を迎えた豪華なショウで日本でもTV放映されました。
アルバムの最高位は195位どまり。
"Get happy"(Ted Koehler-Harold Arlen)は1930年の作品。Judy GralndがMusical"Summer stock"で歌いポピュラー
になりました。
CBS所属のヴォーカリスト、Andy Williams、Johnny Mathis, Jerry Valeなどはいずれも社長の指示を受けアルバムの
当時のヒット曲を加え、ある程度のセールスを維持しました。
Tonyはヒット曲よりスタンダードにこだわり、"Summer of '42"(182位)"With love"(167位)を1972年リリースします。
"With love"は彼がアイドルとしているシナトラに捧げたアルバムで、シナトラは「お金を払っても聴きたいのはTony Bennett
だ。」と発言したことを心に刻み。この年CBSを退社し、新たな活動を目指します。移籍先はMike Curbの経営する
MGM/Curbで、その後の紆余曲折は、次年度に続けます。
"I'll begin again"(Leslie Bricusse)ライブ映像ですが、スタジオ録音としてはアルバム「ある愛の詩」に
収録されています。













