カサンドラ・ウィルソンの訃報が大きく報じられたジャズ誌の片隅に8月29日に亡くなったジーン・バートンシーニの名前があった。顔写真はないもののビル・チャーラップとショーン・スミスをフューチャーしたキアロスクーロ盤のジャケットを掲載している。ナイロン弦ギターの名手バートンシーニのファンに配慮したのだろう。

 

 クラーク・テリー「Tread Ye Lightly」、デューク・ピアソン「Prairie Dog」、ポール・デスモンド「Bridge Over Trouble Water」、チャールス・マクファーソンのメインストリーム第1弾、ウェイン・ショーター「Odyssey of Iska」、ボビー・ハッチャーソン「Natural Illusions」、ヒューバート・ロウズ「Carnegie Hall」、チェット・ベイカー「The Best Thing For You」等々、それぞれのプレイヤーの要であり分岐点ともいえる作品に参加している。

 

 リーダー名で買ったレコードを聴き進むうち柔らかいピッキングに的を射るバッキング、メリハリのあるフレーズに閃きのあるアドリブライン、美しく澄んだ音色に上品且つ洗練されたハーモニーにこのギターは誰だろう?と思わずジャケットのクレジットを見返したことがあるだろう。カーメン・マクレエやトニー・ベネット、ナンシー・ウィルソンの歌伴に定評があるが、ジャズからラテン、ボサノヴァまで数多くのレコーディングを遺している。

 

 リーダー作は20数枚。どれもリーダー然としたところはない。サイド参加のレコードは100枚近い。どれも上品に引き締まっている。シンガーやホーン奏者がここでギターが欲しいなと思ったときにまず名前が浮かぶ人だったに違いない。享年89歳。合掌。