映画「叛逆のサウンドトラック」。1960年代のコンゴ動乱を当時の実録アーカイブ映像とジャズの演奏シーンで構成したドキュメンタリーである。ナレーションがないので国家間の争いや、国連加盟国の政治家の名前を知らないと利害関係が分かり難い。間に挟まるジャズ・ミュージシャンの映像は何の脈絡もないのでやや陳腐に映る。
これからご覧になる方もいるので否定はしないが、政治に疎いジャズファンの視点から観た感想を記しておこう。11年間に亘ってソ連の最高指導者であったフルシチョフが度々出てくるのだが、演説の巧さに驚いた。説得力がありユーモアもある。米国に一歩も譲らなかっただけのことはある。一方、当時の米大統領アイゼンハワーはコンゴの初代首相ルムンバがニューヨークを訪れ国連で演説を行った際、会談を拒否しゴルフに興じていた。 自ら主導するリーダーとCIAの操り人形の違いなのだろう。
そして注目のジャズ映像。検索するとユーチューブで何でも見られる時代だが、初めて目にしたものがあった。サッチモのジャズと政治についての発言は鋭いし、ガレスピーが大統領に立候補する経緯は興味深い。演奏シーンでは女性トロンボーン奏者のメルバ・リストンに圧倒された。ベイシーやガレスピーのアレンジャーとして有名だが、楽器のテクニックもなかなかのもの。メトロ・ジャズ盤「Melba Liston And Her 'Bones」を改めて聴きたくなる。
さてタイトルのサウンドトラックは何か?マックス・ローチの「We Insist」である。映画には出てこないが、バーのドアを開けた途端、踵を返すあのジャケットだ。未だコンゴでは難民が近隣諸国に逃れ、多くの子供達が飢餓の危険にさらされ、米国では依然として人種差別が続いている。アビー・リンカーンの叫びは続いているのだ。
