ジャケット・デザインと演奏内容からスーパー・サイケデリック・ジャズ・サウンドと呼ばれたチャールス・ロイド「Love-In」、四ヘン形のジョーヘン、童顔の悪魔マクリーン「Demon's Dance」、「お城のエヴァンス」、ティモンズの遺作「Do You Know the Way?」、バルトークに行き着いたコニッツの「piecemeal」、超新星ショーター。そしてマイルス殿下の「Bitches Brew」。

 

 1960年代後半を彩ったアルバムで、10月26日に亡くなったジャック・ディジョネットが参加している。スタイルの違いは勿論のこと個性が強い面々ばかりだ。そのバックで縦横無尽に変幻自在に臨機応変に千変万化する。八面六臂とはこれか。ロイドの後ろで陽気に、ジョーヘンとマクリーンの時はやんちゃだ。一方、エヴァンスの後ろに座るとリリシズムを盛り立てる繊細な音を刻む。ティモンズとの連帯感、コニッツとの距離感、ショーターとの一体感。申し分ない。エレクトリック・マイルスの起爆剤とも言える怒濤のドラミング。全て同じスティックから刻まれるビートである。

 

 「The DeJohnette Complex」は満を持して69年に発表した記念すべきファーストアルバムだ。やんわりと静かに始まり、2曲目の「The Major General」はスピード感溢れるドラムソロで始まる。それに刺激されたベニー・モウピンの骨太のソロが凄い。3曲目の「Miles' Mode」はロイ・ヘインズにドラムを任せメロディカを吹いているのだが、これが面白い。ピアノも上手いディジョネットだが、もしテナーを手にしていたらコルトレーンと張り合ったかも知れない。リリースと同時に聴いたが、今聴いても55年前の作品とは思えないほど新鮮に響く。半世紀先も見据えていたということだろうか。

 

 ディスコグラフィーを開いてみるとリーダー作が50枚ほどある。常に変化するジャズシーンを生きたドラマーの証だ。参加アルバムはファースト・コール・ドラマーだけあり、ゆうに150を超える。その全てを聴いているわけではないが、クレジットに「Jack DeJohnette(ds)」があると安心して買った。享年83歳。合掌。