
先週、過小評価されている一人としてチャールス・マクファーソンを挙げた。600稿近くアップしているので、とうの昔に話題にしたと思っていたが、何とまだ一度も名前すら出たことがない。正当な評価を下すのはジャズを愛する者の務めである、と大見得切ったので反省しきりだ。遅れてきたビ・バッパーという三文形容詞を覆す如く、遅れての紹介で魅力をお伝えしよう。
60年にミンガス・グループに参加したことで名前が知られたマクファーソンだが、あの灰汁の強い稀代のベーシストと共演していたのが不思議なくらい王道を行くアルト奏者だ。このバンドや師匠であるバリー・ハリスと共演してキャリアを積み上げ、プレスティッジから初リーダー作を録音する運びになる。その名も「Bebop Revisited! 」である。このタイトルと、バップの代表曲「Hot House」にファッツ・ナヴァロの「Nostalgia」、パウエルの「Wail」、パーカーの名演で知られる「Embraceable You」というガチガチの選曲、ハリスにカーメル・ジョーンズ、ネルソン・ボイド、アルバート・ヒースという人選、間違いなくビ・バップだ。
録音された64年に戻って検証しよう。東京オリンピックが開催された年である。ミンガス・グループで共演したエリック・ドルフィーが亡くなっている。マイルスが初来日した。コルトレーンが「至上の愛」、ピーターソンが「We Get Requests」を録音。ニュージャズの動きが活発化する。いわゆる「ジャズの10月革命」だ。銀座に「ジャズ・ギャラリー8」が開店したのもこの年だ。モダンとフリーが混然とするシーンにビ・バップとなれば、仮にリアルタイムで聴いていたとしたら間違いなく違和感を覚えるだろう。もしジャズ喫茶で今月の新譜と紹介されたら、小生だって今頃バップかい?と言ったかもしれない。
日本と本国の評価の違いは先の稿でも触れたが、本国では人気がありプレスティッジを皮切りにMainstream、XANADU、Timeless、Arabesque、Enja等のレーベルから順調にリリースされている。勿論スタイルは大きく変わらない。「Bebop Revisited! 」から半世紀経った今、フリージャズやフュージョンに走った連中もスタンダード回帰でバップ・ナンバーを取り上げている。マクファーソンは先を行ったビ・バッパーかも知れない。