
新年に相応しい「Happy」とか「New Year」のタイトルはないかと棚を眺めていると「Happy Minors」に目が留まった。聴き込んだレコードはタイトルを見るだけで音が聴こえてくるが、このアルバムは、タイトルを目にすると思わず笑みがこぼれる。少年が3人並んだだけのジャケット・デザインなのだが、表情や服装、ポーズが何とも愛らしい。バート・ゴールドブラットの手による逸品だ。
トリオや3管で構成されたレッド・ミッチェルの初リーダー作で、、どの曲でもレナード・フェーザーをして「ジャズにおける最高のベース・ソロイスト」と言わしめたプレイがたっぷり聴けるのが嬉しい。おそらくジャズ喫茶世代ならポール・チェンバースと並んで数多く聴いているベースだ。毎日どこかの店でかかるといわれたピアノトリオの大名盤ハンプトン・ホーズのトリオや、これまたアンドレ・プレヴィンの人気盤「キング・サイズ」で腸に響く音を鳴らしている。リーダー作こそ少ないが、参加したセッションとなると毎週1枚ずつ話題にしてもゆうに3年はかかるだろう。それだけミュージシャンに信頼の厚いベーシストだ。
初リーダー作に相応しいメンバーが揃っている。ジャケットに並んだ文字のサイズからもビッグネイムとわかるボブ・ブルックマイヤーとズート・シムズ、そしてコンテ・カンドリにクロード・ウィリアムソン、スタン・リーヴィー。この作品はズートが参加していることで話題を呼んだが、そのズートを大きくフューチャーしたのが「Scrapple From The Apple」だ。パーカーの愛奏曲で、循環コードのシンプルな作りからジャムセッションでよく演奏される。ここでは短いテーマのあと少々テンポを落としてベースを刻んでいるのだが、バップナンバーとなるとやたら張り切るウィリアムソンとの掛け合いが面白い。
このアルバムはかなり昔にジャズ喫茶で片面しか聴いたことがなく、CDで全曲聴いたのは最近のことだ。ベツレヘムの10吋オリジナル盤はマニア垂涎の的で、とある中古レコード店の店主曰く、このレコードはディスクよりもジャケットの状態が良いほうが高く売れるという。一度は部屋に飾ってみたいジャケットだ。きっと「Happy」な気分だろうなぁ。「Minor」だから無理な話か。