明けましておめでとうございます。毎月発売されるおびただしい数の新旧譜から選りすぐりのアルバムを毎週紹介してきた当ブログも11年目に入りました。開設当初はブログブームに便乗していたずらに書いてみようかという軽いノリでしたが、日を追うごとに増えるアクセス数に弾みが付きました。また、鍛えられた耳で本物を選んでのコメントに励まされました。ジャズを愛する読者と一体になったブログはライフワークでもあります。

 さて、正月恒例の福笑いジャケット。今年は「naomi and the keiichi sasaki trio featuring duke matsuda」です。私の耳元でささやくように歌っているのは薄野のジュリー・ロンドンことナオミさんです。その後ろにいるのは志藤奨さんです。シャイなギタリストですのでこの写真になりましたが、歌うフレーズと語る音は前面に響きます。そんな感じでいいんじゃない、と納得しているのは見事なブラッシュワークでシンガーをサポートする佐々木慶一さんです。そして、しなやかな指で強靭なビートを刻むのはこのジャケットを制作した鈴木由一さんです。ともに私がこよなく愛するジャズスポット「DAY BY DAY」の素敵なメンバーです。

 元になっている印象的な構図のジャケットはオランダの歌姫リタ・ライスの「Jazz Pictures」です。バックを固めるのは夫君のピム・ヤコブスのトリオにケニー・クラーク。このアルバムがヴォーカル名盤と呼ばれるのはケニーの参加が大きいでしょう。バスドラの一打、スネアやシンバルの一音に刺激されてリタが乗ってくる様子が伝わってきます。絵は一本の線や一つの丸から描きだし、それに色づけをすることで作品が仕上がります。同じようにジャズもピアノやトランペットの一音にシンガーや楽器が音を付けて素晴らしい演奏になります。それこそが「Jazz Pictures」でしょう。

今年もキャンバスいっぱいに広がるジャズの風景を紹介していきますので、昨年同様ご愛読いただければ幸いです。コメント欄はベスト3企画がメインですが、ベストの1枚、聴き比べてみたい曲、気になるアルバム等、ベスト3にかかわらずコメントをお寄せください。また、ジャズに関するご質問、ご感想もお待ちしております。完成された絵に隠れたデッサンの話題にも及ぶかも知れませんが、今年もよろしくお願いします。