先週、19日にボジョレーヌーヴォーが解禁され、酒屋には色とりどりのラベルに身をくるんだボトルが並んだ。何処にその差があるのかと思うピンキリの価格で、CDなら廃盤と廉価盤ほどの開きがある。もっとも年代物のワインとなるとブルーノートのオリジナル盤を超える値なのでこれでも安いのかもしれない。ワイン党ではないが、この日くらいはお手頃の価格で新酒を味わってみようか。

 ワインネタなら「酒バラ」か「New Bottle Old Wine」と推理された方を裏切って新酒に因んで「Old Bottles-New Wine」を選んでみた。天才とか鬼才とか超バカテクと呼ばれるトロンボーン奏者のレイ・アンダーソンだ。レイを最初に聴いたのは70年代後半のアンソニー・ブラクストンとのセッションだったが、フリー・ジャズなのでテクニック云々は伝わってこないし、このスタイルによくあることで乱暴な言い方をするならラズウェル・ラッドやグレシャン・モンカー3世と見分けが付かない。その後、80年代に当時流行りのジャズ・ファンクに路線を変えたことで忘れかけていた。

 そんな頃聴いたのがこのENJA移籍第一弾だ。レーベルは変わっても例によってレイはフリーかファンクかと思いきや何とスタンダードを演っている。それもフリー奏者によくありがちなメロディーをズタズタに切り取るものではなく、崩さずに演奏しているではないか。基本的に歌物はどのようなスタイルであろうとメロディーを大切にというのが持論なので、それだけで好印象だ。圧巻は「In A Mellotone」で、太くて濁った厚みのある音からハイノートまで自在に操っている。ビッグバンド何人分にも匹敵する音をトロンボーン1本で表現できるのだから間違いなくバカテクである。

 さて、そのボジョレーヌーヴォーの味だが・・・やはり価格なりだった。選んだ銘柄が悪かったといえばそれまでだが、ワイン音痴の舌でもわかるほどざらつきがあるし、香りも深みがない。フランスの諺に「女とワインは、年をとる程味が出る」というのがある。確かにワインは寝かせるほど味わいを増すが、女性はどうだろう。「女房と畳は新しいほうがいい」という日本の諺がしっくりくる。