夏だ!ビキニだ!サマージャンボだ!1等4億円だ!ではなく夏といえばジャズ・フェスだ。ここ札幌でも今月初めからサッポロ・シティ・ジャズが始まった。特設会場を中心に長期に亘って多くのプログラムが組まれているが、メンバーを見て吃驚仰天!日本ジャズ界の重鎮の名もあるとはいえ、このプレイヤーのどこがジャズよ!と言いたくなるメンバーばかりだ。本物のジャズより、Jポップのほうが人を呼べるということだろうか。

 今や全国で開催されるジャズ・フェスはニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに倣ったものだが、60年のその第7回フェスに抗議したのはミンガスである。怒れるミンガスの声を聞いてみよう。「フェスティヴァルが経済的にも大成功を収めているにもかかわらず、その出演料が不当に安い!」と。出演できるのが名誉だからギャラは安くてもかまわない、が主催者側の主張か。日本の某放送局の年末の番組のような構図だ。さらに、「同フェスが回を重ねるごとに当初の主旨から逸脱し、非音楽的で、コマーシャリズムにのったお祭り騒ぎに終始している!」と。何と、サッポロ・シティ・ジャズのプログラムを開いた小生と同じ意見ではないか。

 同年、フェスの出演を拒否したミンガスは、親友のナット・ヘントフの協力を仰ぎ、同会場の近くのホテルで独自にコンサートを開催している。そのとき集まったジャズ・アーティスト・ギルドと呼ばれるメンバーで録音したのが「ニューポート・レベルズ」で、盟友のマックス・ローチをはじめエリック・ドルフィー、ロイ・エルドリッジ、トミー・フラナガン、ジョー・ジョーンズ等、錚々たる顔が並ぶ。反逆児の抗議となると騒々しい感じがするが、音楽的には優れたもので、「Wrap Your Troubles in Dreams」というスタンダードも取り上げている。「苦しみを夢に隠して」という邦題が付いているが、ミンガスが隠したのは怒りだろう。怒りを全て顕わにしたら翌年のフェスはなかったかもしれない。

 大規模のジャズ・フェスを運営するためには出演プレイヤーのスケジュールの調整や、スポンサーの意向等々、一観客には想像も付かない苦労もあるだろうが、サッポロ・シティ・ジャズが「札幌がジャズの街になる」をスローガンに創設されたなら、ジャズの冠に恥じない本物のジャズで構成されたフェスティヴァルにすべきではないか。来年は、「私をジャズ・フェスに連れてって」の声がかかるのを期待したい。