先週、靖国参拝を巡り財界と小泉首相が本音を洩らしていた。「行ってくれるな」という財界と、「それと政治は別だ」とはっきりお断りしたという首相。感情をオブラートに包んだ「遺憾に思う」よりストレートな「不快だ」のほうが解り易い。外交が絡むと何かと歯切れが悪かっただけに、ポスト小泉を踏まえた発言なのだろうが、互いに主張することも必要だ。

 黒人の人権回復を主張したマックス・ローチのアルバムに「ウイ・インシスト」がある。60年の録音でブッカー・リトルやゲストでコールマン・ホーキンスも参加している。アメリカ南部で黒人の市民権が剥奪されていた60年代に、4人の黒人学生がレストランの白人専用のカウンター席に座ったことから広がった、座り込み運動「シット・イン」を、思い起こすジャケットが強烈だ。内容はジャケット以上にインパクトあるもので、ローチ夫人、アビー・リンカーンのヴォーカルというより叫び、いや悲鳴に近いもので、一度聴いたら忘れられない迫力がある。

 30年以上前にジャズ喫茶でサラ回し(皿洗いではありません、レコード係りのこと)をしていた時、このレコードをかけていたら警官が来たことがあった。女性の悲鳴が聞こえたと通報があったらしい。どうやらいつも煩いと苦情を寄せている隣の小料理屋の仕業のようだ。当時、東京都内で一番でかい音と云われていただけに隣近所の苦情は珍しくない。その時はいつもよりボリュームを上げていたのかもしれない。警官に悲鳴部分を聴いて頂いてお帰り願ったが、照明が暗いとか音が大きすぎるとか色々と来たついでに言っていた。JBLに念仏なのだが・・・

 度々通報されても困るので、後日、隣の小料理屋に謝罪を兼ねて飲みに行った。確かに壁を通してD130は良く鳴っていた。「こちらも大音量が売りですので御理解ください」と詫びを入れたのがだ、品の良い女将は「こちらは落ち着いた店を売りにしております」と切り返えされた。強気で主張する小生に、怒りをオブラートに包んだ「あなたの仰ることに驚きを禁じ得ません」とも言われた。どうやら平たく言えば「ふざけた事を言うな、ばかやろう」の意味合いらしい。それから、少しばかり音量が下がったような気がする。