彷徨っていた
一か所にとどまることなく
アルバムが動画のように動く。
時には早く 時にはじれったいほどゆっくりと。
私は
母の背中にもたれて、シャボン玉を追いかけていたり
部室で 汗臭いシャツをのけながら掃除をしていたりしていた。
汗臭く、土埃の匂いがした。
彼。
私は、めざめた。
彼。
私の指に触れているのは彼。
「シュン」「しゅん」「駿」
彷徨っていた
一か所にとどまることなく
アルバムが動画のように動く。
時には早く 時にはじれったいほどゆっくりと。
私は
母の背中にもたれて、シャボン玉を追いかけていたり
部室で 汗臭いシャツをのけながら掃除をしていたりしていた。
汗臭く、土埃の匂いがした。
彼。
私は、めざめた。
彼。
私の指に触れているのは彼。
「シュン」「しゅん」「駿」
強い衝撃が 体中を駆け巡ったとき
笑顔が私の前にあった
そう笑顔・・・・
おぼろげな笑顔・・・
胸が苦しくなるような笑顔
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どれくらい経ったのだろうか
私の指先には、何も感じない
もう一度笑顔を見たい
探してみる 探してみる
頭の中 記憶・・・
胸が痛む 鼓動が強くなる 脳波が乱れる
誰も気づかない・・・。
PCのディスクトップを、ドキュメントを開き
ファイルを探すように、記憶をたどる
笑顔があった
なんて呼んでたかしら?
懐かしい あったかい思いが私を熱くした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「先生 采の様子がおかしい気がするんです。僕が手を握ってやると、瞼が動くような気がして」
「いや、ただの反射でしょう」
そう・・・
強い衝撃が、体の中をつらぬいた
まぶしい
あつい
わたしは、どこにいるの?
思いっきり声をだした・・・
のどがさける・・・・
でもなにも起こらない
こわい こわいよぅ こわい 助けて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「だめよ さわっちゃ」
わたしは、振り向きざまに 持っていたワイングラスを床に落とした
「あっ」
それは、母がとっても大切にしていたベニチアングラスで
小さな花とリボンがそよぐように
流れるように刻みつけられていた
大好きで大好きで、窓辺にこしかけて
陽の光にかざしながら くるくる回して
眺めるのが好きだった
あの日もとても気持ちのよい日だった
「あっ」
母の突然の声に 驚きワイングラスを床に落とした
同時に、音もなくワイングラスは砕け散った
急いでかけらを集めようとしたとき
ガラスのかけらが、指をついた
赤ワインのような鮮血が私のはいていたソックスを
赤く染めた
その時の傷が、私のひとさし指に残っている
彼は・・・
彼は、いつも私の傷を無意識になでるのが癖だった
そのしぐさがいとおしく 胸がひびく思いがした
あなたなの?