刑事政策の基礎 「自由刑・施設内処遇・仮釈放と執行猶予」その5 | 刑事弁護人の憂鬱

刑事弁護人の憂鬱

日々負われる弁護士業務の備忘録、独自の見解、裁判外の弁護活動の実情、つぶやきエトセトラ

     ウ 矯正処遇の内容

   刑務作業

刑務作業は、「刑事施設において受刑者に行わせる労務」をいう(川出=金・前掲178頁)。懲役受刑者では義務的であり(法12条2項、92条)、懲罰の内容でもある。これに対し、禁錮及び勾留受刑者では任意的である(請願作業)。いずれも受刑者の改善更生のための手段、矯正処遇である。

刑務作業は、受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより、その心身の健康を維持し、勤労意欲を養成し、規律ある生活態度及び共同生活における自己の役割・責任を自覚させるとともに職業的知識及び技能を付与することにより、その社会復帰を促進させることを目的とされている(日本の刑事施設26頁)。

刑務作業は、①生産作業(市場性のある商品を製造する作業及び労務を提供する作業)、②自営作業(刑事施設の維持にかかる作業、炊事・洗濯などの経理作業、建物の修繕などの営繕作業)、③職業訓練の3種類ある。①②を一般作業という。

③職業訓練を通じた資格や免許取得も実施されているが、現実には物的設備や指導人員の有限性から希望する受刑者すべてが職業訓練を受けることができるわけではない。

大半の刑務作業は、①の木工工場、印刷工場などの工場作業である。よって、刑務所は巨大な「工場施設」ともいえる。

かかる刑務作業については、「作業報奨金」が受刑者に支給されるが(法98条)、非常に低廉であり(法務省矯正局は、日本の刑事施設26頁において、2011年度予算一人一月平均4723円という。)、これでは、釈放後の更生資金としても、被害者への弁償金としても役立たない。金額については、労働の対価性や社会復帰の準備を考慮し、妥当な相当額の支給を検討すべきであろう※。

 

 

※刑務作業と作業報奨金

  旧監獄法では、「作業賞与金」とされ、監獄の長の裁量による支給で有り、一般的な行状も金額算出に考慮され、恩恵的側面が強かった。

しかし、新法は、作業報奨金を必ず支給しなければならないとして、権利性を認め、一般的行状は考慮せず、作業成績就業に関する事項のみを金額算出に考慮するものとして、報酬的性格を重視するとともに、受刑者の勤労意欲を高め社会復帰に役立たせるという報奨金的性格・更生資金的性格も重視するものである(法98条、川出=金・前掲182頁)。

よって、新法の作業報奨金は、報酬的・報奨金的・更正資金的性格を併有するものであり、刑務作業という労働の対価としての純粋な賃金というわけではない。仮に純粋な賃金と考えると(賃金説)、刑務作業のうち職業訓練に作業報奨金を支給することが困難となるが、これは法の規定と矛盾するだけでなく、改善更生の観点からも妥当でない。

 

      ② 改善指導

        改善指導は、受刑者に犯罪の責任を自覚させ、社会生活に適応するのに必要な知識や生活態度を習得させるために必要な指導を行うものである。すべての受刑者を対象とした一般改善指導と特定の事情を有することによって改善更生、円滑な社会復帰に支障が認められる受刑者を対象とした特別改善指導がある(日本の刑事施設28頁)。前者は、被害者の心情の理解と罪の反省、規則正しい生活習慣、釈放後の生活設計、順法精神などを指導する。後者は、薬物依存離脱、暴力団離脱、性犯罪防止、交通安全等の指導がある。特別改善指導は、個別処遇の具体化・実践であるが、詳細は後述する。

 

      ③ 教科指導

 義務教育等が修了していないまたは学力が不十分であり、このため改善更生、社会復帰に支障が生じると認められる受刑者に対して、その学力に応じた教育を行う。受刑者のうち希望者は、中学校または高等学校卒業程度認定試験を受験することができる。

  

     エ 刑務所内の生活

       一般的な受刑者の一日の生活スケジュールは以下のとおりである(日本の刑事施設10頁)。

 

       午前6時45分 起床

       午前7時    点検・朝食

       午前8時    刑務作業開始

       午前10時~10時30分 運動

       午後12時~12時40分 昼食

       午後12時40分~刑務作業

       午後2時30分~2時40分 休憩

       午後4時40分 刑務作業終了

       午後5時    点検・夕食

       午後6時~9時 余暇時間

       午後9時    就寝

 

受刑者の居室は、単独室または共同室である。食卓、小机、トイレ、清掃用具などが備え付けられている。受刑者の衣類寝具は貸与されるが、下着、靴下等について自分の私物を用いる(自弁)することができる。食事は国が給付する。刑務所内で、係の受刑者が調理し給食として出すのが原則であったが、最近、受刑者の高齢化や衛生面から外部への委託が検討されはじめている。