解題 「死刑と無期懲役」 | 刑事弁護人の憂鬱

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 どうにも初の死刑論であるが、消化不良ぎみでまとまりがよくありません。

 昔から、刑事政策は断片的で取っ付きにくいところがあり、特に死刑については、存廃論争に苦手意識があり、きちんと考えを整理したことがなかった。理念レベル、政策レベル、感情レベルにわけると理念レベルでは廃止論的、政策レベルではどちらもありだが現実的には消極的存置論ないし段階的死刑制限論、感情レベルでは存置論的と考えが揺れるからである。

 1990年代後半から以降の厳罰化、被害者保護支援の潮流が死刑存置の圧倒的な世論の背景となり、もはや廃止論、慎重論、批判的考察が無意味と化している昨今、森炎氏の「死刑と正義」、「司法殺人」が現にある死刑選択の基準、価値判断、事実上の終身刑たる無期懲役との比較からの死刑論のアプローチが新鮮な衝撃を受けた。また、近時の原田國男氏に代表される量刑論の研究の発展も死刑の判断基準に重要な視点を与えている。
 というわけで、死刑の現状、判断基準、背後にある価値判断、被害感情や社会の共感性と量刑との関係などから死刑論を切り込みたかったのだが、まだまだ勉強不足でしたね。もう少し錬ってから再チャレンジをこころみたい。

なお、厳罰化、ポピュリズム的刑事政策の国際比較の研究は、浜井浩一氏の「2円で刑務所、5億で執行猶予」が一般読み物でありながら、おもしろい。本格的な研究書もあるようなのでチャレンジしてみたいところである。

浜井氏の厳罰化を望む社会は社会や国に対する不信感が強く、犯罪に対する不安、体感治安が大きく感じる社会、プライバシーより監視カメラを容認するという分析は、オウム事件以降、日本社会が絶対悪と絶対善といった極端な2項対立の考えに支配されているとする森達也氏の著作「A」「A2」「A3」「死刑」などの分析とも類似する。

ポピュリズムは社会心理的分析が必要な領域であるが、きちんとした研究論文があれば読んでみたいが。法律の分野ではみあたりませんね。あたりまえか…