刑事政策の基礎 刑罰論その1「死刑と無期懲役」(下)その3
(4)形式的類型的アプローチ(従前の量刑相場)
元判事の森炎氏は、裁判員制度が始まる前までは、以上の判例の立場と別の枠組みで裁判実務は行われてきたと指摘する。すなわち、①「「殺害された被害者が三人以上であれば原則的に死刑を選択し、二人の場合はケース・バイ・ケースで決め、被害者の数が一人であれば原則として死刑は選択しない」、②「金銭目的」や「計画性」がある場合は死刑選択の方向で考慮する、③修正要素として、少年犯罪か共犯での役割(主犯格か従たる役割か)などを考慮するという(森・死刑と正義18頁以下参照)。
① 被害者の数 ア 3人以上 原則 死刑選択
イ 2人 ケース・バイ・ケース
ウ 1人 原則 死刑選択せず=無期懲役など
② 金銭目的や計画性 有り 死刑選択の方向
無し 死刑回避の方向
③ 修正要素 ア 少年犯罪 死刑回避の方向
(なお判例は絶対的考慮要素としない)
イ 共犯事件
主犯格 死刑選択の方向
従たる役割 死刑回避の方向
※①②③の組み合わせは、①において、2人殺害のイが死刑選択のボーダーラインとなるが、①イの場合でも②金銭目的や計画性があると死刑選択の方向になり、③のア 少年事件やイ 共犯事件における従たる役割の場合は死刑回避の方向になる。①ウの1人殺害で死刑選択される例外的場合として、殺人で無期懲役判決後、仮釈放中に別の殺人を犯した場合(重罪反復)などとされる(森・前掲20頁)。
これは統計的にも裏付けられるという(森・前掲21頁~22頁)。
すなわち、
(1999年から2008年までの10年間)
3人以上殺害 死刑率約94パーセント
無期懲役率約6パーセント
2人殺害 金銭目的がある場合
死刑率約81パーセント
無期懲役率約19パーセント
金銭目的がない場合
死刑率約52パーセント
無期懲役率約48パーセント
1人殺害 死刑率約0.2パーセント