書評1 「人たちの言葉その折々」 | 刑事弁護人の憂鬱

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書評1 牧野英一著「人たちの言葉その折々」(信山社 1980年)
新派刑法学者を代表する牧野英一が戦後に書きためた古今東西の法律家、著名人の格言をテーマにしたエッセイ集。1970年没後に、晩年の書生であった土本武司氏(元最高検検事)が遺稿の中から編集して出版したもの。旧派刑法学者を代表する小野清一郎氏、団藤重光氏、元最高裁長官横田喜三郎氏らが前書きを執筆しており、牧野刑法学の影響力が伺える。牧野英一の刑法理論の特色については、中山研一著「刑法の基本思想」がコンパクトに紹介しているので、そちらを参照していただきたいが、本書は、むしろ、牧野英一の自由法論、「ローマ法に依ってローマ法の上に」の哲学をわかりやすくのべるとともにアメリカの法律家ホームズ、カードーゾなど英米法のプラグマティズム法学の紹介書ともいえる。終戦後、法律及び社会のアメリカ化の潮流を意識したものであろう。まだ、アマゾンで購入できるが、ほぼ絶版に近いので、大学図書館等で閲覧するのがベターかもしれない。実務家にとっても学生にとっても、同著の中の「トライアル・アンド・エラー」「より美しきもの」「われ等のミストレスたる法律」「歓喜と責務と生活と」は含蓄深い内容を含んでいる。もちろん、牧野理論の楽観主義と国家主義的色彩もあるのだが、その理論の功罪の検討は別の機会に…