これは私のものである。

『親王飾り』だけなので、出すのも片付けるのもとても簡単なのである。
穏やかで清楚な顔つきが、とても気に入っている。

元々は『七段飾り』であった。私も確かに覚えている。
『しもじもの者たち』は何回もの引越しをする中でいなくなってしまったのだ。

どうやら実家の母はそれをいたく気にしているようだが
もしも、もしも七段15人揃いのまま私が受け継いでいたら
その出し入れの面倒さと私の性質を考えたら、
おそらく二度と陽の目は見ていないものと思われる。
そしてそれは毎年恒例の『ケンカの火種』となっていたことだろう。

だからこれでよかったのだよ。
たぶん、夫も心からそう思っている。
母よ、いいかげんに娘の性質を直視しなさい。


そしてあと一組、小さな陶製の親王飾りがある。

これは一人暮らしを始めてからすぐ、
旅行先の京都で購入したものなのだ。

これは玄関に飾った。


それから実は、我が家にはまだまだたくさん雛人形があるのだ。

息子が、公民館や幼稚園、学校などでつくったものたちだ。
残念ながら、それほど『器用さ』とか『センス』、到底感じられるシロモノではない。

でも、どうしても処分できずにいる。
一時、あまりに年々増え続けるのでさすがに「どうしよう・・」と思い悩んだが
ここ2~3年、どうやら増加はストップしているのでこのままいくつもりだ。

何かを呪っているようだったり、ムンクの『叫び』のようだったり、
はたまたすんご~く呆けた表情だったりと、
およそ『雛人形』とはかけ離れたやつらばかりなのだが、
母にとっては宝物なのである。

だってこれはみんな、「かあさんのだよ♪」そう言ってくれたものなんだもの。