oyasumi pun pun | ほんのうみ

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 ほんのやまにのぼったら ほんのうみにしずみたい  

先週、姉の家に泊まった時に姉に借りた漫画

久し振りに読んだ漫画だったけど、これがとても面白かった

最近たまーに漫画読んでもイマイチなかんじで

更に漫画から離れていくかんじだったのですが

こうやって鳥肌たつほど面白い漫画を読んでしまうと

あ、もっと読まないと!とわくわくしてくる

(これかくために自分でもオトナ買いしてしまいました**)



おやすみプンプン



ほんのうみ




人生に絶望したり、夢みたり非常に青臭くて平凡なようで、とても非凡なプンプンのめくるめく日々

まず主人公とその親族だけがタッチ自体違う。

そしてほとんどしゃべらない。

そのおかげでプンプンは独立したキャラクターではなく、なににでも投射できます。

自分にしたり、とくに固定しない無の存在にしたり。各自想像できる漫画です。


お母さんが殴られた状態で倒れてる場面とか欲望に正直なだけの善もクソもない神様とか

5巻の不倫~逃亡~そしてなぜかプンプンのSEX、狂言愛子ちゃん。

いちいち驚かされる展開なのになぜかなるべくしてなったみたいな流れだし

そのシュールさが作品をきらきら光らせてる

青臭いとはいっても、基本的に文学は青臭さから出発しているわけで

これは立派な文学作品

でも小説と違って、漫画だからこそ表現できる絵でも魅せる


タクシー運転手が言った言葉

あたしは馬鹿だから、よくわかりませんけどね。

罪を背負った人間が本当に必要なものは罰じゃなくて、

許される苦しみを知ることなんじゃないかって思うんです。


これ、さりげなく出てくるだけで別にこの漫画のテーマでもなんでもないんだけど

ドストエフスキー「罪と罰」のテーマなんですよね。

人間が罰を感じるのは、罪を犯して報復的に与えられる罰そのものではなく

罪を犯しても赦される環境、自分を待ってくれてる人がいた、という事実に申し訳なくて苦しむ・・・。


エヴァの感想でもかいたけど、アニメや漫画というのは過去に散々考察されてきた哲学的思考を

わかり易い形で若い読者に提供してるんだなぁと思った

そういう意味の足かけになるならやっぱりアニメ漫画の効力ってすごいとおもうし

また、読者もその与えられたいわばベスト盤のような名言に単品で反応してないで

どういう経由でこうかいてるか、どういう意味なのか、自分はどうか、とか考えてみてはじめて意味がある。

原点といえる作品を探して読んでみてもいいのかもしれない




ちなみに個人的にツボなのはこの作品における女性の書き方

愛子ちゃんにしろ翠ちゃんにしろ16歳の少女にしろ。

結局女というのは男以上に男であって、ズルいし非情だし深いし、そして孤独



愛子ちゃんが、矢口先輩という完璧な彼氏が出来る

スポーツ万能、ハンサム、なんでもできる人気者なのに驕らなくて誰にでもやさしい

矢口先輩は愛子ちゃんのために怪我してるままそれを言わず無理に試合に挑む

まさに少女漫画のヒーローみたいな完璧にかっこいいのだ


しかし、愛子ちゃんは怪我を無理して頑張る先輩をみてなにも感じない。

先輩のすごくがんばってるのは、私のためじゃなくて自分のためだ、と。

愛子(私)のために頑張る自分に酔っているだけなんだ。

それは結局は愛子のためなんかじゃない、そんなの私は求めてない、と


人間同士なんてそういうものである。自分を中心に相手を思いやり、

いくら最愛の人とはいえ、触れられない部分もあり、お互いが自立する面ではして、そして共鳴する部分ではする

それが正しい恋愛だというのは理解しても、自分にはあわない、と切り捨てるあまりに痛々しい愛子ちゃん

「自分探し」を果敢にしようともがく




他人同士が好きになったり付き合ったりするのって
なんなんだろうね?

優しい家族がいるのに、
さらに愛情を求めるなんて欲張りだと思う。


どんなに好きで彼氏彼女になったとしても

きっと永遠に他人以上の存在にはなれないんだ。

でも、あたしはそんなの嫌だ。
余計なもの全部捨ててただ、あたしだけを見てほしい。


矢口先輩はいい人だよ・・・・


やさしくて真面目で格好良くて。


・・・けど、

あの人にはまだ

逃げ場所が

たくさんある



あの人はきっと・・・・・・



あたしなんかいなくても

ひとりで幸せになれる人なんだ。





結局また





あたしはひとりぼっち。




……覚えてる?小学校の時に書いた作文。


あたしは将来、女優か、歌手か、モデルになりたいって書いたんだ。
たぶん、たくさんの人に自分を知って欲しかったんだと思う。


けど、今は違う。

一人だけでいい。


たった一人でいいから
頭のてっぺんから爪先まで1ミリの間違いも無いくらい

完全にわかり合いたい。


その人と二人きりになれるなら

他にはなにもいらない。


もし、その夢が叶うなら、

わたしはその瞬間に死んでもいい。




・・・・うん、自分に似てるなぁって思いすぎて読んでて辛かった。

愛子ちゃんの考えがとてもわかる。堂々といってしまえば愛子だ私は。

とはいっても弱くズルいから愛子ちゃんほど振り切れず、その姿を隠してるけど

本質的には愛子ちゃんみたいな恋愛こそ理想的ですべてなんだ。

それが最低だろうがおかしかろうが、そういう考えは否定できない


1ミリのズレもなくわかり合いたい

自分のすべてを認めてほしい

これは一見素敵なようで、そうではない

依存であり異常である

なぜならそれは「不可能」であるからである


お互いが1ミリのズレもなくなんて絶対無理なのだ

もしもそういう恋愛が出来たとしたら

それはどちらかが無理をしている状態なのである

それはまさに、マゾとサドの恋愛に繋がっていく

そういえばプンプンは愛子ちゃんと出会う前に好きだった女は自分をいじめた女である



私は谷崎潤一郎が好きなんだけど、谷崎もこういう女性をよく書く

破滅型の女と、それに付随する男はスーパースターなんかじゃないけど兎に角誠意だけは誰にも負けない

春琴抄 に至っては佐助は最終的に愛するが故、針で目まで潰す


そこに思想やメッセージなんていらないのだ

意味などいらない、ただその気持ちが美しい

谷崎の表現はマゾヒズムを乗り越えた耽美主義なのである。

こういう行為が気持ち悪いとかストーカーとか思わず、お互い酔ってしまう

悪魔主義とでもいうのだろうか。異常なのである

でも、それを求める


愛子ちゃんも小学生のプンプン相手に

夏休みに一緒に鹿児島に逃げたいと無理を言う

無理とわかっていて「こないと殺すから」と脅して言う


それは無理なのだ。

でも100%無理ではないのだ。

その僅かな可能性を求めていたのだ。

そこに理由なんてない

ただ、愛子ちゃんの中で

愛子ちゃんの本当に愛する相手なら来るはずだったのだ


しかしプンプンは普通の人だった。

プンプンにだって事情とか生活とか限度がある。

だから、こなかった。

そして別れた。



普通は思うだろう

世界の中心は愛子ちゃんだけじゃない

プンプンにだって感情はあるし希望はある

愛子ちゃんの求める関係は異常だ


しかし、愛子ちゃんはそんなことはとっくにわかっている

なにもかも自信たっぷりな自分をつくりあげてる矢口先輩にそんなことを求めない・・・

不安定で、繊細で、道に迷い込んだプンプンに求める。


自分にすべて一致する相手

自分がすべて賭ける相手を



相手の思いやりが極端に欠けてるけど

なんなんだろう

単なるワガママなだけなのか

相手もそれを求めてる、と運命の相手だから!と思いこんでるのか。。。


客観的に愛子としてみたら、ないわ~と思う自分もいるのね

だって愛子はそれだけのものをプンプンに示していたのか?

自分だけじゃなく、プンプンを絶対裏切らないで、プンプンのすべてを受け入れる覚悟が

もしプンプンがそれを感じてたら、強盗して金作って、鹿児島にいっていたのではないか。。


でもそこでまた深い愛子ちゃんとプンプンの出会った頃の会話


「プンプン私のこと好き?」

コクコク!

「じゃあ私もプンプンが好き!」


読んでると胸がずきずきする

愛子、そんなんじゃだめだよ愛子ちゃん!
だけど、そのぶっとんだ思考わかるんです



私は愛子ちゃんと出会ってふと自分を省みる

私は愛子ちゃんみたな考えを捨てるべきか

それとも愛子ちゃんであり私のであるポリシーを貫き通すか

答えは明白だ

こういう思想でいても、破滅しかまっていない

マトモな人からみれば


愛子ちゃんは自己中心的なワガママ女にすぎない

愛子ちゃんは誰でもいい

自分にあてはまるなら誰でもいい

自分にあてはまってくれるなら誰でもいいのだ

そして闇に引きずり込む

引きずり込まれたくないから、離れる


でも、どこかで思ってしまう自分もいる

常識だからって足並み揃えるのは、なんだかつまらないじゃない?と・・・

水辺のそばでもしかして

もしかして

誰か、くるかもしれないじゃない・・・・・・・・・・・・・・・



ぶっとびたいなら強くなければいけない

弱いなら安全に生きなければいけない



こんなにも深層心理的なにかを孕んだ漫画があるとは。。。

面白いです












「試合なんていかなくていいから、二人で駆け落ちしよう」って。


あの人「意味わかんねー」って、笑ってた。


それで、やっとはっきりとわかった


違うな、って。


住む世界が全然。


あたし・・・・・


変なこと言ってると思う?
















どうか、プンプンと愛子ちゃんが悲劇的な結末にならないでほしい





溶けて欲しい


二人が、愛に包まれたまま細胞が溶ければいいのに

























あたしね



何度も何度も同じ夢を見るんだ。




誰かをずっと待ってる夢。









暗い闇の中の水辺のほとりで、

あたしはずっと誰かを待ってるの。


きっと何年も何十年もずっとね。


でも、ある時、

あたしのことをじっと

見てる人がいるのに

気が付いて、


全然 見覚えの無い

オバサンだったけど、

あたしは嬉しくって

足をひきずりながら

駆け寄るんだ。


・・・けど、よく見ると

それはただ、水面に

映ったあたしなの。



なんか、ひどくさみしい気分になって・・・・・・・・・・・・・


目が覚める。