トヨタの79月期の決算が非常に好調で株価が大きく上昇しています。トヨタだけではなく、欧米の主要な自動車会社の79月期の決算も発表されています。私の子供が最近投資に興味を持っていて、日本株を買うんだったらやっぱりトヨタじゃないかという話をしているんですが、この自動車会社の置かれている状況を知ることは投資について学ぶ上で非常に重要な要素が含まれていると思っています。

一般的なイメージでは自動車会社というと、日本を代表する産業で、海外でもジェネラルモーターズ、フォード、フォルクスワーゲン、BMWなど大企業がたくさんあるというイメージがあると思いますが、債権市場ではこれらの会社は格付けも低く、投資家は高い利回りじゃないと買いたくないそんな業界になっています。

 

日本には自動車業界に詳しい人も多いと思いますので、そういう方にとっては復習みたいな内容になってしまうかもしれませんが、今回は世界の自動車業界の今の状況についてポイントを絞ってお話をしたいと思います。

 

まず、自動車業界の信用力が一般的にどう評価されているかというものの一例として、大手格付け会社の格付けを紹介したいと思います。S&Pの格付けですと、アメリカの大手自動車会社ジェネラルモーターズがB、フォードがBマイナス、ドイツの大手フォルクスワーゲンがB+、BMWがSLEA、メルセデスベンツがシルA、フランスのルノーはWBplus、韓国のヒュンダイがBplus、日本のトヨタがSA、プホンダがシルAマイナス。こうやって見ると全体的に格付けが低いのがお分かりいただけると思います。

1番高い格付けのトヨタでもsingleAプになっています。ではなぜこのように格付けが低いのか理由を上げてみると、そりゃそうだよねという話になると思うんですが、改めて解説しますと、この自動車というものは先進国だけではなく、新興国でもすでにそれなりに普及しているものです。これから自動車の普及率が爆発的に上がりそうなところってもう人口が急激に増加している国くらいで、もうほとんど多くの国では販売数が急増していくことはまず考えられません。

 

これは他の産業でも言えることなんですが、先進国ではほとんど一家に1台くらい車を持つのが当たり前になると、それ以上普及の余地がなくなります。冷蔵庫、洗濯機などの白物家電なんかも同じようなものかもしれません。そうなるともうある程度普及し切った後、どうなるかと言うと、世界のGDPの成長率と同じぐらいのペースでしか販売は伸びていかないということになります。これはスマホなんかでももうすでにそういう傾向になっていて、AppleなんかでももはやiPhoneが爆発的に売れるということをそもそも期待していませんし、Amazonももうオンラインショップを伸ばそうとはしていません。人口の大半に普及してしまったら、もうGDPを上回る成長というのは見込めなくなります。

 

そして、この自動車業界が直面しているのはただ成長が見込めないというだけではなく、EVなどの登場によって大きな変革が起こっています。EVなのかハイブリッドなのか、どこの会社がシェアを伸ばすのか、そうした予想みたいな話は自動車関連の専門の発信者がいると思いますので、そうした話は避けますが、この業界は今10年先を見通すのが非常に難しい状況に直面しています。

 

仮にEVの普及率がどんどん高まるとすれば、これまでガソリン車の製造で培ってきたノウハウが生かされる機会が非常に少なくなってしまったり、新しい会社が急速にシェアを伸ばす可能性もあります。イギリスみたいにガソリン車ゼロを目指す中で、ウルトラローエミッションゾーンというのを設けて規制よりも排出量の多い車に乗ると毎回お金を払わないといけないようなルールが導入されて、電気自動車に買い換えるのにもコストがかかるので車を持つのを諦めよう、そういう動きも増えています。

 

このように脱炭素政策がどういう風に進むかにも大きな影響を受ける形になります。ということで非常に不透明な業界になっていまして、そうした不透明な部分が格付けを下げる要因、そして投資家が高い利回りを求める要因になっています。

 

非常に大きな流れを解説しましたが、もうちょっと最近の動きを説明しますと、この自動車業界は新型コロナのパンデミックが始まった2020年に大きく落ち込みました。もう覚えている方も多いと思いますが、コロナで消費が落ち込んだというのもありましたが、サプライチェーンの混乱で供給が制限されてしまったということも大きく影響した形でした。2021年に少し回復しましたが、2022年はウクライナ戦争で再びサプライチェーンの混乱と原材料価格の高騰で販売が落ち込みました。2023年はそうした混乱が落ち着く形で販売が回復してきています。ただ決して好調と言えるわけではなく、北米ではEVの販売不振やテスラの価格引き下げなどで競争が激化しているというのがあります。テスラは販売台数の減少や価格の引き下げによって営業利益・準利益ともに前年同期を下回っています。EVへの需要が思いの外伸びない形になっています。

 

そして同様に州の自動車メーカーもEVの販売に苦戦している形になっています。欧州メーカーで最もEVの販売を伸ばしているのはBMWですが、中国での販売も含めて販売台数に占めるEVの割合は15.1%となっており、2025年までに20%を目指していますが、達成は厳しいと見られています。この背景には中国企業が収益を無視した値下げを行って販売シェアの獲得に動いていることも影響していると言われています。

ただ欧州の自動車メーカーの多くはEVへのシフトという潮流は変わらないとしています。こうした世界的にEVの成長速度が鈍ってくる中で、ハイブリッド車を事業基盤としているトヨタが好調になっている形です。トヨタは北米、欧州などで販売を伸ばしました。そして、従業員の賃上げも業界に逆風になっています。全米自動車労働組合(UAW)は月30日に4年間で25%の賃上げなどで暫定合意したと報じられていますが、こうした従業員の賃金上昇もこれから長期間にわたって自動車メーカーの財務を圧迫する形になります。

 

ということで、自動車業界についてざっくりとご説明しました。今回の決算ではトヨタは円安の恩恵を除いても非常に好調でしたが、今後もこうした調子が続くかには不透明感が残る形になっています。この業界に長期の投資をするにあたっては、この自動車業界が例えば10年後とかもっと先にどうなっていくのか、それこそハイブリッドとEVがどのようなシェア争いを繰り広げるのか、そうした部分にある程度見通しを持つことができるような、この業界に精通していないとなかなか長期の投資をするのは難しいという状況にあるのが実情でしょう。

 

こうした自動車業界の実情を踏まえて、子供と話したのは、自動車業界についてとことん調べて、自動車会社に投資をするというのも1つの方法。ただ、そもそもGDP並みにしか成長しないところに投資をするんだったら、マクドナルドの方がいいんじゃないか、なんてお話をしました。

 

マクドナルドはファストフード業界では圧倒的な地位を築いていて、自動車会社のようにEVへのシフトみたいな、そんな変化も特にありません。そして、世界ではインドみたいな国のように人口が急速に増えていて、さらに経済成長で中間層が増えることが実と見られている国では、需要が伸びる可能性が極めて高いと見られています。貧困層から中間層にシフトしていく過程では、コカ・コーラだったり、マクドナルドだったり、日本もかつてそうだったように、そうしたものの需要が伸びる傾向があります。どういう業界がどのような状況に置かれていて、どれぐらいの成長が期待できるのか、投資を行う際にはそうした部分を見ていくことも必要でしょう。