イギリスのスナク首相が高速鉄道計画「ハイスピード2」を縮小すると発表しました。この計画は日立が車両を受注しており、日本企業も関わっているプロジェクトです。すでにこの件は日経新聞などでも報道されていますが、イギリスのメディアなどで報じられていることを含めてもう少し詳しく解説したいと思います。

 

詳しく見ていくと、かなり怪しいと言いますか、今回の縮小前で建設費用が18兆

 

まず、この「ハイスピード2」というのがどういう計画なのかから簡単に振り返りたいと思います。元々、2007年に労働党政権の時代に提案されたのが始まりなんですが、イギリスを南北に結ぶ1大国家プロジェクトとなっています。民間企業であるJRが建設している日本の中央リニア新幹線などと違って、このハイスピード2はイギリス政府が税金で建設しているものです。

 

計画は3段階に分かれていまして、まず第1フェーズではロンドンからバーミンガムが結ばれます。バーミンガムというのは先日財政破綻に陥ったイギリス第2の都市です。第2フェーズはそこから2つの路線に分かれて、1つは中西部のマンチェスターに、そしてもう1つの路線はリーズに結ばれます。そして第3フェーズではそこからさらに北に伸びる計画になっています。

 

元々これらの地域に鉄道が走っていないわけではないんですが、新たにハイスピード2を建設することで輸送時間の短縮と輸送量の増加が期待できるとされています。じゃあ、どれぐらい違うのかという話なんですが、これまでロンドンバーミンガム間の鉄道は80分かかっていたところをハイスピード2では50分に短縮されるとされています。30分短縮するために膨大な費用をかけて、しかも立ち退きとか環境破壊とかもたくさんしてまでやる必要があるのか、みたいな話はずっとあるんですが、進めてきた人たちはメリットはこれだけではないとして、2万人の雇用が見込めるほか、南部と北部の各地の経済を是正すると主張してきた形です。イギリスという国はロンドンなどを中心に南部の経済が発展している一方で、北部はかなり遅れていて南北間格差が大きくなっています。サハの労働党らしい提案だったと言えるかもしれません。

 

その後、保守党政権に変わって何度か事業の中止も検討されました。計画の詳細が発表された2012年時点で建設費は327ポンドとされていましたが、2015年の資産では560ポンドに膨れ上がり、その後政府の見積もりではさらに倍増して1000億ポンドにまで膨らむとされていました。この計画を進めているのはイギリス政府によって設立された「ハイスピード2 Limited」という会社です。この会社が中心になってイギリスの企業が建設を担ってきているのですが、この「ハイスピード2 Limited」の管理が失敗し、費用が大幅に増額されたとされています。

 

しかし、ボリスジョンソン政権の時にそれでも計画を実行するということを決定し、2020年に第1フェーズの建設がスタートしました。しかし、2021年の時点で第2フェーズの2路線のうち、リーズにつなぐ方の路線の建設計画がキャンセルになり、そして今回、第2フェーズのマンチェスターの方の路線の建設もキャンセルになり、まさに全ての第2フェーズの路線がキャンセルになった形です。ということで、今建設されている第1フェーズしかこのハイスピード2は建設されないことが決まった形です。それでも現在建設している第1フェーズの部分だけで、費用は710億ポンドに達するとされています。この見積もりは2019年時点の価格で計算されたもので、その後の材料費や人件費の上昇は考慮されていないということです。政権としてはどんどん費用が拡大することにストップをかけた状況ですが、実際に最終的にどれだけ費用がかかるかはっきりとしたができていないということで、コストの把握に努めるとしています。

 

財政難で増税しないといけない状況になっているイギリス政府としては現実的な決定と言えるのではないでしょうか。

このハイスピード2に関わっている日本企業ですが、日立がフランスの鉄道車両メーカーのアストムと共同で車両製造保守を受注しています。52編成の車両を製造し、1編成あたり8両で契約金額は197億7000万ポンド(当時の日本円で約3000億円程度)とされていました。今回発表された計画変更で、この日立が受注している契約に変更はないということです。ただし、第2フェーズ以降の建設も進められていたら、さらに受注できていた可能性もあるかもしれませんので、そうした期待がなくなったという意味では全くマイナスがないというわけではないでしょう。

 

そして、なぜこのハイスピード2はこんなに費用が膨れ上がったのか。日本の中央新幹線が大体10兆円と言われていますが、ハイスピード2のロンドンバーミンガム間は少なくとも710億ポンド(日本円で10兆円以上)です。ロンドンバーミンガム間は日本の東京名古屋間よりも距離も短く、しかも平らなところが多く、山も少ないのでトンネルも多くはありません。一応、ロンドンバーミンガム間にはチルターン給水所という標高260mぐらいの丘があって、そこはトンネルを掘っているらしいんですが、そんなにトンネルが多いわけでもありません。一方、フランスで建設が計画されているボルドーからフランス南部を結ぶ高速鉄道はロンドンバーミンガム間の2倍の距離ですが、140億ユーロ(大体121億円)から7900ポンド(中央値は3200ポンド)ということなんですが、ハイスピード2のフェーズ1は1kmあたり2億5000万ポンドにも達するということです。要因は複合要因だということなんですが、この新しい路線を作るために、ロンドンのユーストンなど都心の駅を開発するのに土地の取得費用を含めて非常に高いコストがかかっているということです。

 

それから、900軒以上の建物を壊し、そこに住んでいた住民への保証費用も高額になっているとか、環境団体からの反対が根強く、環境破壊を緩和するために食事をしたりといった活動も行っていて、そうした費用が重んじられているとされています。しかし、それだけでこんなに高くなるんでしょうかともっと安くできるんじゃないかとメディアでも指摘されている形です。ということで、このハイスピード2のコストについては異常に高く、そしてかなり不透明というのが実情です。政権としてもコストを把握することに努めると言っていますが、政府がやっていることで利権が絡んでひどいことになっている可能性があるのかもしれません。

 

インドネシアが中国に発注した高速鉄道と変わらない、もっとひどいんじゃないかと思ってしまうような状況ですが、そういう意味ではストップをかけたスナック政権の決定は懸命な判断だったと言えるのではないでしょうか。

 

今回のハイスピード2の問題からも、イギリス政府、大丈夫ですかと思ってしまったのは私だけではないでしょう。このところ、財政状況の悪化、さらにはエネルギー問題、インフレなど、様々なところでイギリス社会の暴落が目立ってきています。今後もイギリス経済で起こっていることをお伝えしていきたいと思っています。また、取り上げるテーマなどについてはTwitterの方でも視聴者の皆様に意見をいただいておりますので、そちらもフォローしていただけると幸いです。

 

ということで、本日はイギリスの高速鉄道ハイスピード2が計画を縮小することになったことについてお話ししました。