12月1日、アメリカの10年国際利回りが4.2を下回り、10月下旬に5%を上回る水準まで上昇していましたので、わずか1ヶ月ちょっとで0.8以上も下落してきた形になっています。そしてそれに伴ってドル円も下落してきていまして、12月たちは146円台まで下落してきています。なんでアメリカの10年国際周りが10月まで急上昇していたのかから振り返りたいと思います。

 

いくつか要因がありますが、主要なところで言うと、国際の発行増加による受給の悪化、米国債の格下げ懸念、FRBが高水準の政策金利を長く続ける姿勢を示していること、この3つが8月以降の大きな金利上昇、アメリカの10年金利で言うと4.2から5%ぐらいまで上がった要因になっていました。で、これらに改善が見られているというか、一時的に問題が先延ばしされたという状況になっています。1つ1つ見ていきますが、まず米国債の発行額については8月に増額されまして、3ヶ月ごとに金額が見直されるんですが、11月にまた増額されると警戒されていた中で、その金額が小幅に予想下回りました。月間の発行額について、事前の市場関係者の予想の中央値が1144億ドルだったんですが、110億ドルになると発表されまして、20億ドル予想を下回りました。

 

わずかに20億ドルだけなんですが、これから毎半期発行額が増えていって大変なことになるんじゃないかと見られていた中で、一時的に警戒がやいた形です。で、これが11月2日に起こった出来事です。ただ、これで安心というわけではありません。ウクライナ戦争に加えて、イスラエルの支援でもアメリカは財政支出が増えています。ですので、国際の発行額は次は2月にまた増額される可能性があります。ですので、これはあくまで一時的に懸念がやいだに過ぎません。

 

また、来年の2月に向けてはこの問題が再び注目される可能性があります。2つ目の要因は米国債の格下げ懸念です。アメリカは与野党で予算の問題でなかなか折り合いがつかない状況になっています。10月になかなか決まらなくて、一旦11月17日までの暫定予算というものを決定しました。で、11月17日までに合意に至らなかった場合はアメリカの政府の予算が執行できない、つまり公務員に給料を払えないみたいな状況になって政府機関が閉鎖される可能性があったんですが、そうした事態を回避するために、また1月までの暫定予算という形で先送りしています。

 

でも、もし政府機関が閉鎖されたりすると国家の財政運営についてガバナンスでのリスクがあるとして格付け会社は格下げするかもしれませんよ、と事前にアナウンスしていた形でした。そうしたこともあって心配されていたんですが、暫定予算という形で11月はひとまず先送りされたということで安心感が広がった形です。

 

ただ、あくまで来年の1月まで先延ばししただけなので、また来年の1月に向けては再度この問題が注目される可能性がありますということで、あくまで一時的な楽観といった具合になっています。

3つ目はFRBが高水準の制約金利を長く続ける姿勢を示していることですが、これがちょっと変わってきたというか、FRBの政策を決めるメンバーの一部が11月後半に来年の早めのタイミングで引き下げることを容認するような発言をしまして、一気に市場で利下げの期待が高まった形です。この発言をしたのはクリストファーウラーリジという人物です。この人はFRBの政策を決定するメンバーの中で比較的高派、つまり金融引き締めをしっかりやった方がいいといつも言っている人です。この人が利下げをしていくことが適切になるかもしれないと言い出したということは、他のメンバーも同じようなことを考え始めているのではないか、そんな見方が一気に広がった形になりました。

 

 

で、このウラー理事などがこうしたことを言い始めたのは思いの他、アメリカのインフレが落ち着いてきたというのがあります。アメリカの10月の消費者物価指数は11月14日に発表された時にも解説しましたが、予想を下回りました。そして、2022年6月をピークにずっと下がってきている形で、このまま下がってくるとFRBが目標とする2%まで順調に下がってくるのではないか、そんな期待が高まってきた形です。本当に2%に落ち着くかはまだ分かりませんが、この10月の消費者物価指数などを受けまして、物価に対して楽観的な見方が広がってきて、その結か高い政策金利をそんなに長く引っ張らなくても利下げできるようになるんじゃないか、そういった見方が増えてきてる形です。

 

で、これに関しては12月の12日に発表される11月の消費者物価数が非常に重要な意味を持つことになります。11月も予想通りということになれば、やっぱり来年早めの利下げができるだろう、そうした見方がますます正当化される可能性があるでしょう。逆に予想外に消費者物価数が高止まりを示唆するようなものだったということになると、やっぱり来年そんなに早く利下げはできませんね、とそういった話になっておそらく米国債の利回りは11月に低下した分のいくらかを戻す、つまり金利上昇になる可能性があるでしょう。そういう意味で今回の12月12日の消費者物価数は非常に重要になると思っています。

 

そしてそれを受けて12月13日から14日にかけてアメリカの金融政策を決定するFMCが開催されますので、この消費者物価数がそれを大きく左右することになるでしょう。ということでまとめますと、米国債の発行増額や米国債の格下げに関してはあくまで問題が先延ばしされただけで、来年の前半にはまた懸念が高まる可能性があります。ですので、再び金利が上昇する可能性も十分にあります。一方、FRBの金融政策については消費者物価指数の動向次第といったところで、12月12日に発表される11月の消費者物価数が今後の行方に非常に大きな影響を与える形になると見られます。

 

で、私が今後についてどういう風に予想しているかと言いますと、消費者物価数は正直予想を下回るか上回るかを予想するのは容易ではありませんが、今の緩やかな低下傾向は継続するのではないかと見ています。物価の見通しについてお話すると、それだけで動画1本分ぐらいになってしまいますので、簡単に要点だけお話ししますが、今の金融引き締めが効いていて、徐々に米国経済は減速してきていると見ています。その中で、消費者物価指数の前年比での伸びも低下傾向が継続していくと考えています。

 

で、だからと言って金利がここからまだまだ下がるかと言いますと、そうはならないと見ています。12月1日の時点で債権市場は2024年に0.25%の利下げを5回以上も織り込んでいる状況です。実際、アメリカの景気が本格的に悪くなってきて、それだけ利下げをしなければいけなくなる可能性もあるでしょう。ただ、実際にそうした景気の悪化が鮮明になってくるのにはまだしばらく時間がかかると見ています。ですので、この12月から来年の1月にかけては今のマーケットの利下げの折り込みはまだちょっと先走りすぎ、つまり金利はもう1度上昇してくる可能性があるのではないかと思っています。

 

そして国際発行の増額や暫定予算の期限の問題もありますので、今の4.2を下回る10年国債の利回りは再び4.5程度までは上昇する可能性があるというのが私の見方です。ただ、また5%まで上昇してくるかと言うと、そこまではもう上昇することはないと見ています。もうFRBの利上げは終了した可能性が高く、もう一度そこまで金利が上がっていく材料はもうないと見ています。

 

では、アメリカの10年金利が4.5まで戻すことがあった場合、ドルがどうなるかと言いますと、ドルはもうそれほど上昇しない可能性があるかもしれません。ドルはユーロなどの他の通貨に対して下落が鮮明になってきています。ドル円で見ると円が安すぎるのでドルが上がっているように見えますが、ドルユーロなどで見るとドルは下落傾向が鮮明になっています。

 

今後また米国債の格下げや国際の受給悪化が懸念されて金利上昇になった場合、ドルの買材料にはならないので、米国債の利回りが上昇したとしても、ドルはユーロなどの他の通貨に対しては強くならないと予想しています。ただ、ドル円に関しては日銀の政策にも左右されるでしょう。来年の早いタイミングでマイナス金利の解除の期待が高まるようですと、円ドル安になる可能性が高いですが、そうならなかった場合は140円台から150円程度での推移が続いていくことになるかもしれません。