マレーシアでは中国企業が開発を行っている都市がゴーストタウン化しています。アジアでは、中国の不動産企業などが手掛ける物件がたくさんありますので、それらが建設途中で止まってしまったりといったところがいろんなところで起こっています。そして今日お話しするのはカンボジアの話なんですが、これはもっとさらにひどいというか、規模がとんでもなくでかい話です。

 

カンボジアの海岸線の5分の1を含む巨大なリゾートの開発計画が15年も経っても全然進んでいなくて、中国企業が国立公園内で自然破壊をしまくった上、途中で放置しているほか、多くの村民が立ち退きを強いられて人権問題も指摘されています。このカンボジアという国は1990年代まで泥の内戦が行われていたのはご存知のことと思いますが、2000年代以降は中国のサポートを受けて急速に発展して北国です。

 

今回はこのカンボジアで中国が手がけているというか、手がけていた世界最大のリゾート、ダラサコールリゾートについてお話ししたいと思います。まずカンボジアという国について簡単にお話しますが、タイベトナム、ラオスの間に囲まれた比較的小さな国で、人口は1600万人、世界のGDPランキングでは107位となっていまして、経済的にはあまり注目される機会が少ない国だと思います。1人当たりGDPは2021年時点で1625ドルとなっていまして、3000ドル以下が貧困といった見方がある中で、まだまだ非常に国民の生活水準が低いことがわかります。

 

第二次世界大戦中は日本が統治していた時期もありましたが、1945年以降はフランス領に復帰してその後1953年に独立しています。その後は長い内戦の時代が続き、多くの命が失われたことはご存知かと思います。1993年に国連監視のもと、民主選挙が行われその後は政治も安定してきています。

 

経済はこれだけGDPの水準が低い国ということで、農業、漁業、林業などが中心であるものの、近年は法政産業などが成長し、輸出が増加しています。一方、1人当たりGDPは低水準であるものの、成長率は近年非常に高い水準を達成しています。2004年から2007年にかけては10%を超える成長を達成し、2010年代に入ってもおおむね5%を超える成長が続きました。2022年はプラスの5.1%、2023年はさらに高い成長が期待されています。この高い経済成長率を実現してきた背景に中国の存在があると言われています。2000年代以降、中国がカンボジアに積極的に行って開発を行ってきたことは多くの方がご存知のことと思います。2010年代にはカンボジアの一部の街で中国人の方が多く住んでいるというようなところもあると言われ、もはやカンボジアは中国の一部になったとも言われました。

 

海外からの直接投資の9割以上が中国によるものという状況も長く続いたとされています。ただし、カンボジアという国は政府債務自体は低水準に抑えていて、アフリカの多くの国のように対中債務を抱えるいわゆる借金漬け外交みたいな状況にはなっていません。ですが、中国への依存度が非常に高い経済構造になっているのは確かです。

 

そうしたカンボジアで中国企業が開発中とされているダラサコールリゾートという世界最大のリゾートがあります。一応開発中とされていますが、ずっと開発は止まっていて、森林を破壊してそのまま放置しているというような状態になっています。ダラサコールリゾートは大自然を要するダラサコール国立公園の中にあります。当初は3万9000ヘクタールの面積で計画されていましたが、その後さらに9000ヘクタール追加されて現在は4万5000ヘクタールとされています。この面積がどれぐらいかイメージが湧きづらいと思いますが、東京ドームに例えると1万個分ぐらいになります。東京23区で13000ヘクタールぐらいだそうですので、いかにこのダラサコールリゾートが広いかがお分かりいただけると思います。カンボジアが有する海岸線の5分の1がこのダラサコールリゾートの内側に含まれる形になります。

 

このダラサコールリゾートの開発を手がけているのがユニオンデベロップメントグループ、通称ユニオンロードという会社です。この会社は中国の天津ユニオンという天津市にある不動産開発企業がカンボジアに設立した会社です。イギリスのBBCなどの報道によれば、このダラサコールリゾートの土地をたったの100万ドル(日本円で1億5000万円ぐらい)で99年間リースしているそうです。この辺り、カンボジアで中国がいかにやりたい放題になっているかがわかります。ユニオンロードは2030年までに長期滞在者を130万人とし、毎年700万人の観光客が訪れ、100万人の雇用を創出するとしています。しかし、実態は全くかけ離れたものになっていまして、ホテルとカジノが一軒建設されたぐらいで、あとは道路も整備されておらず、ゴーストタウンとゴーストフォレストとも言うべき開発途中の破壊された森林が残されている形になっています。

 

このリゾートの開発でダラサコール国立公園内の原生林の20%が失われたとされています。さらに、このリゾートを開発するために1千世帯以上の村民が立ち退きを強いられたということなんですが、その住民には海岸沿いの木造住宅が提供されたということで、住民への人権侵害も問題視されています。そして、このリゾートの近くのダラサコール空港を中国軍が使う可能性があるということで、アメリカなどはユニオン労働制裁の対象にするなどの措置を取っていて、この辺り以前から問題になっていました。

 

このユニオンロードはカンボジアの与党幹部とズブズブの関係になっていると言われています。また、ユニオンロードの背後には天津の共産党幹部や一帯一路構想を主導した共産党の幹部もいるとされています。このほか、ダラサコールリゾートの開発にはタイやミャンマーとの国境付近で違法な家事の運営しているほか、人身売買などを行っている中国人グループも出資をしているとイギリスのメディアなどが報じています。

 

このダラサコールリゾートの開発、なかなか闇が深いのがお分かりいただけると思います。どう考えても明るい未来はなさそうです。