ヴィアンキ一族の彷徨う魂16人が、昇天した翌週水曜日だ。

 

俺達、古代ローマの神々は、二手に別れて主治医の診察を受けている。

 

帰国した直人と、無事にタイムスリップから戻った祐樹が揃う美月クリニック。

医師二人体勢となり外来診察をスタートした、倫太郎のトコだ。

 

昇天の儀式では神々もエネルギー、霊力を出し切った。年齢を重ねると二日後くらいから、心身にドーンと反動が押し寄せる。

 

鷲に変身していた親父ゼウスは、ヘビーな肩こりと筋肉痛に参っていた。

日がな一日、神殿付近の温泉に浸かり、マッサージを受けていた。


交信の魔術を途切れないよう続けたナルキッソスも、疲れを訴えていた。

お肌のケアすら、面倒だったようだ。

親父が温泉で見かけた際は、美肌の湯に浸かっていたそうだ。

 

それぞれ自覚症状は、異なるが。

こんな時は、即効性のあるプランタ注射を始め、医療の力を借りる。


神々も心身のメンテナンスは欠かせない、肝心な免疫力、霊力も劣ってしまうからな。

 

「ディオニュソスとシルバヌスを含め、総勢11名です」

ケンイチは手際よく、左右に別れた八角形の配置を元に予約してくれた。

 

 

さて、きさらぎ訪問診療クリニックは、倫太郎と亜子が不在だ。

訪問診療が、長引いているらしい。賢一郎と岸田主任が、俺たちを担当している。


人数も多いから、導線の良い処置室で、敢えて診察をお願いした。この部屋の右端には、不測の事態に備えて、机と椅子が備えてあった。


「アレス、見ろよ。処置室は、案外広かったんだな。今まで使わなかったのが、勿体ないくらいだよ」

「同感…エコーとレントゲン室も、稼働しているな」


エロスと俺は、活気づいたクリニックに目を見張った。

月曜日から新体制がスタートした、外来患者さまも徐々に増えているそうだ、幸先は良い。


変わらないのは、バッグ・ミュージックのクラシック音楽だ。賢一郎のチョイスは、ショパン集だった。


「僕は昔から、ジャン・マルク・ルイサダのファンなんだ。彼はショパン弾きだね」


へええ…賢一郎は案外、ロマンチストだな。

失礼を承知で、白衣を着てなければ、頭髪も涼しげな、眼鏡オジサンだ。


ルイサダは割と音を…旋律を繊細に揺らす。昇天したムネメ・ビアンキを、彷彿する演奏だな。

 

「ところでタイムスリップした、岸田主任たちはあ…。記憶は、スポッと抜けているんだね?

内なる表現を止める魔術かあ、倫太郎もうまいことネーミングしたね」

 

ディオニュソスよ、穿刺が苦手なのは分かる。しかし上半身を起こし、顔を右側へ背けなくてもよかろう。


クリニックで一番、採血上手な岸田主任も、狙いを定めたすんでのところで、手を止めたぞ。

 

 「ディオニュソス落ち着きなさい、危ないわ」


既に受診を済ませた女神アフロディーテが、酒神に付き添っている。彼は慢性疲労症候群のフォローだ。

 

「タイムスリップ中の出来事は、覚えていませんね。二階の休憩室で、椅子に腰かけていたら眠ってしまって、暫くして目が覚めた。その程度ですよ、ねえ賢一郎先生?」

 

「そう、ゼウスに誘導された所まで、覚えている。例え誰かに話しても、信じて貰えないよ。それはないから、安心して」

 

よし魔術で狙った効果は、維持できている。

今頃親父も、美月クリニックで反応を確かめ、ホッとしているだろう。


まあ職業上、守秘義務は慣れているし、彼らを信頼してる。未来さえ変わらなければ、強力な魔術は必要なかった。


岸田主任、ごめんな。

時間を遡り、香苗と関わってしまった。

艶やかな花魁だったろう前世の記憶は、二度と戻らない。


タイム・スリップ中に起きた事象は、消去する。未来が変われば、今ここで採血は取ってない。

 

さて、センチメンタルな気持ちから、切り替えよう。俺は心電図の測定だ。ディオニュソスの、左隣のベッドへ横になった。


ちょうど彼の細い左腕に、針が刺さった。

怖いもの見たさで、つい苦手な物に目がいってしまう。

 

かつて戦いの神だった俺も、血液を見ると、背筋が寒くなる。アフロディーテには、やんちゃだった過去を思い出すからだ、痛いところを突かれた。あながち間違いでは、なさそうだ。

 

「アレス、一度、深呼吸しようか」

「分かった」


岸田主任と同世代、50代前半の賢一郎は、経験豊富だ。俺の苦手意識は、とうに見抜いているだろう。


ベッドの右サイドに立ち、血液がシリンジに吸い込まれる様子を、さりげなく塞いでくれた。


慣れた手つきで胸部、両手首と足首に電極を取り付け、検査をスタートした。

 

このところ動悸、頻脈を自覚していた。得に夜中だな、軽度の胸苦しさで目が覚めた。


やはり長い年月、彷徨っていた魂を送る事は、相当なエネルギーを消耗したようだ。疲労も溜まったのかもしれない。

 

「アレス、お疲れさま、終わったよ。心電図は正常範囲内の、心室性期外収縮(不整脈)のみだねえ…」


「病院は緊張するのに。胸苦しさは起こらないもんだな」


起き上がり、心電図を眺める。

見覚えのある、下へ細長く伸びた波形だ。


「心室性期外収縮の、詳しい評価も兼ねて。

24時間ホルダー心電図を、やってみようか。その結果で内服治療や、場合によってはカテーテル・アブレーションの治療を見当します」

 

「ホルダーは半年ぶりだ、丁度いいタイミングだと思う。うーん…カテーテル治療かあ…」


戸惑うアブレーション治療については、以前、倫太郎から説明を受けた。


首や足の付け根の血管から、心臓までカテーテルを通す。不整脈が起こる部位を、直接治療をする。正直、これは避けたい。

怖いし不安だ、痛い事は嫌だ。


まっ、先のことはわからない。


心電図を終えたので、今度は診察だ。

数メートル離れた、診察椅子に腰掛けた。


「血圧自己測定ノート」を取り出し、参考にした。血圧は頻脈発作時に上昇した程度、まずまずのコントロールだった。

こちらは合格。


賢一郎とのやり取りは、心配してくれたアフロディーテも聞いているだろう。今後の方向性は、伝わったはずだ。


俺は右方向へ、視線を移す。

岸田主任が腕を伸ばし、補液の速度を調節している。向かい側では、アフロディーテが、デオニュソスの右手を握っている。

 

ディオニュソスは病状が急転直下した「あの日」以来、再び食欲も落ちた。スープ類が中心で、固形物は喉を通らない。


だから賢一郎は、採血だけでなく、補液をオーダーした。


魂らを昇天させたあの日、儀式を終了してホテル・バリー二へ戻った。

そこで憔悴したナルキッソスから報告を受け、俺は血の気が引いた。

 

「ディオニュソスが、突然やって来て。もう大変だったんだ」

 

ナルキッソスが疲労困憊だったのは、交信の魔術を継続した上、急変したディオニュソスの対応に追われたからだった。

 

酒神は万が一、ネクタルの扱いにトラブルが発生したら、自分が出て行くつもりだった。

仲間の役に、立ちたかった。


考えたディオニュソスは、家族が寝静まってから、自宅の庭にペガサス、ネロを呼んだ。


子供のような発想だが、そこは酒神、ディナーで「特別なワイン」を振舞った。

家族は皆、爆睡していた。

 

「23時ですが、これからフィレンツェに向かう?奥さんは、承知しているんですか?」


「もちろんだよお、これが証明するよ」

 

訝しむネロに、ディオニュソスは「前回の採血データー」を見せた。


慢性疲労症候群は、原因がはっきりしない。遺伝要素やストレス、疲労など複数の要素があるらしいが、特定できてない。


だから症状の一つ感冒症状や、もしくわ既往歴がなければ、検査に異常は出ない。


酒神も持病の肝機能障害、肝臓機能データーの上昇以外は、採血で引っかかってない、これを利用した。

 

「僕の病気は、対症療法しかない。最近は発熱の頻度も減った。

その分、体力も戻っているんだよお。そろそろ復帰に向けて、リハビリしなきゃ」


「でも典型的な経過…半年以上、症状が断続的に続いているのでしょう?

肝臓の機能も低下してます、余計にダルさは増すでしょう、無理はいけませんよ」

 

酒神は、慎重な態度を崩さないネロの背中にまたがり、ローマの上空へ飛んだ。

 

倫太郎から「慢性疲労症候群・自宅療養を必要とする」、診断書を最高神ゼウスへ提出してから、はや3ヶ月。


たまには解放感に浸り、夜空をドライブ、楽しみたかった。

 

暫くすると、肌寒さを感じた。

夜中に風を切って、進む影響だろう。


酒神は持参した「ディオニュソス教の葡萄酒」、特別なワインをチビチビ飲み体を温めつつ、気分を高揚させた。

 

因みに自己解放をモットーにした「ディオニュソス教」は、かつてローマ帝国でも信仰を集めた。


画家ベラスケスやティツィアーノが、ズバリを描いているから、詳細は省く。


しかし慢性疲労症候群は、教祖が生み出した「自己解放の葡萄酒」すら、いとも簡単に跳ね飛ばした。

 

「僕は発熱、心身の痛みから、いいや病気から解放される。それで、ええじゃないかあーっ!」

 

フィレンツェに到着したディオニュソスは、発熱した上に泥酔。 

かつ全身に、強い痛みを訴えていた。


後から本人に聞いたところ、全身の痛みは発熱時とは限らず、疲労時にも起こるらしい。

症状は、個人差がある。

生活に支障が出るほど極度の疲労、重度のケースでは鬱症状も起こる、複雑な病気だな。

 

「彷徨える魂らも、全ての痛みから解放だあ!

みな僕に、ついてこおーい!」

特別な葡萄酒は、教祖ディオニュソスを復活させてしまった。

 

普段は冷静沈着なナルキッソスも、乗せてきたネロも、豹変した彼の状態に血相を変えた。

 

自己解放した酒神の霊力は、パワフルだった。今にも丘の上へ、駆け上がりそうな勢いだ。


「離せえーっ!解放で、ええじゃないかっ!」


ホテルの従業員とネロが止めようが、ナルキッソスが静止の魔術を掛けようが、全てをブロックした。

 

神々の主治医4人は、揃って丘の上にいる。

しかし「内なる表現を止める魔術」が浸透し、身動きは取れない。


仮に誰か一人を、覚醒させるのは可能だ。

でも敏感な彼らは、魔術の効果の一つ「鎮痛」を感じてしまうだろう。

 

一族の野望を遂げるために翻弄した、彼らの運命を目の当たりにして、「心のイタミ」が生じるだろう。


すると今度は、昇天を控えた魂の誰かが、「心のイタミ」を受け取ってしまう。現世に未練が湧いて、足止めになる。


だから、魔術を解くわけにいかないし、丘の上にはSOSできない。

ペガサスネロが「おとり」役となり、低空飛行で飛び回り、酒神の注意を引いた。


その隙にナルキッソスが、カミさんアーリィ…アリアドネに連絡を付けた。


事態を聞いたアーリィは、心臓が止まるかと思うくらい、一瞬、放心してしまった。


それでも正気を取り戻し、眠っていた4人の子供と家族を起こし、応援を頼んだ。タクシー・バタフライで、瞬時に時空を移動した。


 「半年以上前から鎮痛解熱剤を始め、薬草まで煎じて浴びるほど飲んだ。でも病気は、治らない。

神は、それでもええじゃないか、こう言いたいんだろうー!!」


「ディ―オ…ええじゃないかは、吉兆のお札が降って来た、そんな噂が広まって。大きな騒動に発展したのよ」


アーリィはまるで子供をあやすように、爆発した夫をなだめた。

普段は陽気な彼女も、アナタは演劇の神でもあったわね…ジョークを飛ばす余裕もなかった。


「貴方も元気になったら、喜ばれる神さまでありたいでしょう?」


「はぁーい。皆と特別な葡萄酒で、陶酔したいでぇーすっ!」


カミさんと子供たち大家族に助けを借り、「ディオニュソス教の復活」は、こうして幕を閉じた。



「あの日は、皆に迷惑をかけちゃった。ナルキッソスは、帯状疱疹が再燃してないだろうか?」


「アイツは温泉に浸かっていたし、プラセンタ注射だけで済むだろう。ディオニュソス、回復は焦るなよ」


愛の神さまエロスは、彼が横になるベッドの端に腰掛け慰めている。


「それは分かってるよ…。生涯に渡り、症状をコントロールする病気なんだよね」


楽天的な性格のディオニュソスは、少しずつ、複雑な病気を受け入れている。


ところでアーリィは、本日診察に付き添ってない。だから処置室で、みな同時に診察を依頼した。


あれだけのエピソードが起こったからには、酒神を一人にできない。


実はアリアドネは、イタリア旅行へやって来た、中沢さん夫婦を案内している。

ここを退職した、ナースの中ちゃんだ。


案内を約束していたエロスは、旅行期間の一部が、昇天の儀式と重なってしまった。

そこで中ちゃんと顔見知りのアーリィが、代役を買って出た。


夫婦はナポリに滞在する。

ここは治安の良くなったイタリアでも、ナビゲートされた方が、初心者は無難なエリアだ。

 

愛の神さまは中部のトスカーナ州、モンテルキの街で夫婦と合流する。

ここで「出産の聖母」を案内し、子宝や安産祈願をするようだ。

 

「胸のレントゲン、終わったよ。愛の神さま、交代です。大事な仕事が、控えているだろ」


「生まれ変わる前、魂どうしで約束があるでしよ、お子様の誕生は、それ次第なんだ。

俺の仕事は、チャンスを演出するだけ。そのためには、自分の心身も万全でないとね」

 

マスクを付けたシルバヌスがレントゲンから戻り、エロスとハイタッチを交わした。


神々の音楽療法士、カストラートのシルバヌスは、大事な声が多少、かすれている。


まあ彼の場合は、おそらく風邪ではない。

昇天の儀式で、声をからしてしまった。


親友ガイウスから急に以来を受け、準備不足もあった、申し訳なかったな。

自宅では声を出さず、喉の保湿を始め、ケアに務めていたようだ。

 

「シルバヌス、ここへ座れよ」

「アレス、ありがと」

 

診察を終えた俺は、親友とハイタッチしながら、席を譲った。


岸田主任が準備を終えて待つ、出入り口付近へ進んだ。勇気の必要な採血で、診察は終了だ。

 

「ええと、シルバヌスは…胸のレントゲンは陰影像はありません。良かった、オペラの登場人物のように、胸は病んでいませんよ」


「おおっ、胸のヤマイではない!

ああっ…神は我を救って下さった」

 

背後から、ゴソゴソ物音がした。

シルバヌスは両手でも広げて、喜びを解放…演じているのだろう。

元オペラ歌手は、生前からサービス精神旺盛だったな。

 

「シルバヌス、今の役柄は?」

「ディオニュソス、想像に任せるよ。テノール以上の声域なら、演じられる」

 

みんな、優しいですね…。

俺の左腕に針を刺す主任が、俯いたまま微笑んでいる。


今日は血液を見ても、平静だな。

親父の「内なる表現を止める魔術」、鎮静・鎮静効果は俺にも及んでいるのか。

それとも、主任の笑顔のお陰だろうか。

 

 

「空気が和んだところで、水を差すようですが。シルバヌス、腹部のレントゲンは気になりますね。お腹は張ってませんか、出てますか?」

 

えっ、賢一郎は何て言った?

俺は首を捻り、振り向いてしまった。


ちょうど賢一郎が、腹部のレントゲンを指していた。

親友は前のめりで、画面を覗き込んでいる。

 

「やっぱりかあ…僕は昔から、ガスも溜まりやすいし、詰まりがちだったんだ」


親友は偏食だ、生前から肉類が中心だった。いっそヘルシーな和食に切り替えろ…って、俺も人の事は言えない。

 

「そうでしたか。じゃあ便秘薬や、整腸剤を処方しておきましょうか」


「ホホホッ、声は治ってきたので。今度はお腹をスッキリ爽快にしなきゃ、お願いします」

 

シルバヌスは急遽、儀式に呼ばれた。お腹の調子も…整える時間は、なかったわけか。


実際セラピーでは倍音効果のある、ヴォカリーズで歌った。張ったお腹では、なおさら腹式呼吸が、スムーズにいかなかった。


つい声だけで歌おうとして、声帯に負荷を掛けてしまったそうだが。

長寿なんだから、そろそろ偏食をなおせ、俺も塩分を控える。

 

 

「はい、採血は終わりましたよ」

「さすが主任、痛くなかった。ありがとう」


岸田主任が右腕に刺した針を抜いた、その時だ。

荒ちゃんこと、事務の荒川さんが、ひょっこり顔を出した。

 

「診察中にすみません。ガイウス・カエサルの事で、報告があるんです」

おやっ、彼女の表情が険しい。


「市民病院から、急変の連絡か?」

デオニュソスの件もあり、俺はまさかの事態を想定した。

 

胃石除去手術から二日目、月曜日だ、ガイウスは消化器外科病棟へ転棟した。

キーパーソンの女神アテナを始め、ヘパイストスや、ヘルメスによると。


彼はお腹の傷を痛がりつつも、リハビリを兼ねて病棟や外を歩行し、順調に回復していた。


急変であれば、神格化したローマ皇帝は全員集合し、駆けつけた方が良いだろうか?

 

「急変ではありません、ご心配なく」


やれやれ…。

しかし、ホッとしたのも束の間だった。


「体格のがっちりした女性がいらして。彼の入院先を教えて欲しい、待っているんです。

詳細は後で話すからと、教えてくれません。困ったなあ…」


やはり彼女は俺たちの動きを、把握していたな。ガイウスと親しい神々は、昇天の儀式で不在だった。

タイミングを、見計らっていたに違いない。


「二人は、ガイウスの親友ね。事前に、相談されたのでしょう。私にも、打ち明けてくれれば良かったのに、一緒に考えたわ」


「ええじゃないかあー…では、解決できないね」

 

アフロディーテとデオニュソスの指摘は、ごもっとも。シルバヌスと俺は、顔を合わせたまま、返事が出てこない。


ガイウス本人から、抜毛症と毛髪胃石…病気の治療に関して、彼女に黙っておくよう、もろもろ口止めされた。


遅かれ早かれ、こんな事態は予測していたが、いざとなると困る。儀式の準備を言い訳に、解決策を後まわしにしていた。


ああ…ちょうどノクターン16番が流れている。

二人の関係は、曲の雰囲気に似ているだろうか?


どこか夢見ごごちで、官能的。

ルイサダの演奏が、それを深めてゆく。


二人は互いに「心のイタミ」を知っている、かけがえのない存在なんだ。

だからこそガイウスは治療に関して、彼女に黙っていた。


「生まれ変わって、日本人女性と恋がしたい」

これは、彼の本心ではない。


旅立ってから、暴君のレッテルを貼られてしまったローマ皇帝の素顔は…本当は繊細だ。


「スマートな身のこなしのガイウスと、堂々とした彼女の雰囲気。荒ちゃんは、この差に、びっくりしたでしょ?」


「アハハッ、ごめんなさい。勢いが強くて、つい押されちゃったんです。ガイウスの恋人でしょうが、あまりにもイメージが離れていて…」


『ハハハッ…』


シルバヌスが機転を聴かせくれたお陰で、処置室に優しい笑顔が溢れたが。


さて、どうしたもんだか。

いっそ「特別な葡萄酒」を持ち出して、ええじゃないかー!

俺だって、たまには叫びたい。



たいへん送ればせながら

本年もどうぞ宜しくお願い致します


色々起こりますが

幸せな時間を、過ごせますように

 


お時間を割いてお読み下さり

どうもありがとうございました

写真 文 Akito

 

参考図書ほか

数研出版

門脇禎ニ 著

新 日本史

 

新潮社

塩野七海 著

ローマ人の物語 Ⅶ

 

河出書房新社

杉全美帆子 著

イラストで読む ギリシャ神話の神々

 

ナツメ社

福永伴子 監修

自律神経失調症の治し方

 

春秋出版

ショパン集2 

ノクターン16番 変ホ長調 作品55-2

 

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村