不動産というのは、構造的に業者と顧客の間の情報格差が大きくなる業態だ。

 

 

理由は簡単で、不動産を賃貸、売買するのは一般人にとっては数年に一回、または一生に1回だったりするのに対して、業者は毎月、毎週、毎日手がけているのだから当然。

 

 

毎日接する食料品の値段が大体想像がついたり、2年に一回買い換える携帯であっても比較がしやすいのに対して、不動産は一つ一つ個別性が強いので単純比較が難しい(例えば同じマンション、同じ階でも南向きと北向きでは違う)上に、上記のように経験も少ないため業者の適当な意見を鵜呑みにしてしまったりする。

 

 

不動産業界に入ってくる人間も、千三つ商売(千回やって3つくらいしか当たらない商売のこと)の中で、一発当てて金稼ぎたいと言うモチベーションの人間が多いので、いつまで経っても「信用できない」というイメージからは脱却できない。

 

 

さて、そんな情報の不透明さを効率化するのがIT化であり不動産テックのはずだが、一向にパッとした企業が出てこない。不動産の購入・仕入れー売却プロセスを一定のシナリオを持って効率化して成功した企業はある(スターマイカなど)が、テクノロジーで業界を捲る企業はさっぱり出てこない。

 

 

業界の人間は全員グルで利益を分け合っているのでいつまで経ってもその声は出てこないが、レインズを一般解放してデータを誰でも使えるようにすればいいだけだ。不動産の取引情報はレインズに登録することが法的に義務付けられている。どんな悪徳不動産屋もこれを破ればアウトなので必ずレインズに記録は残る。

 

 

不動産ID検討だとか国土交通省データベースだとか、お偉方が集まって余計な議論をしているが、レインズデータにAPIでも作って誰でも接続できるようにすればいい。困るのはこんな業界データベースと一般人が見るホームページの間の情報格差を利用して儲けようという輩(そんな業者ばかりだが)だけ。なぜこれができないのか。

 

 

世界で違法行為の仲介手数料の両手取り(売主と買主両方から手数料を取ること)も日本では一向に規制の方向に向かわない。不動産業界が過去の「経験」を売りにしたおじさん(もはやおじいさん)だらけなのも、不動産業界が情報化を拒んで既得権益にしがみついているからなのである。