「なんで……こんな事に…」
「証拠も何も残ってないって…」
「それどころか外傷もないし持病もない…」
「でも…死んだんだ……恋は」
突然の事態に驚きとショックを隠せずにいるこの二人は青樹 直と山田 花音。二人とも立花 恋の友人である。恋の突然の死の知らせを受け駆けつけたのだ。今は警察から事情聴取を受けた後になる。勿論二人を疑っての物ではない、余りにも手掛かりがなく友人の二人に恋の事を聴いていたのだ。
「何か……何か手掛かりになる事が起きてないか考えよう…」
「うん、そうしよう」
良く晴れた昼時、落ち込んだ二人が歩いていると文字通り心が晴れた様子の美憂が歩いてきた。
「お前…なんでここにいんだよ」
「こっちは今っ…」
花音が言い終わる前に美憂が割り込み二人にこう告げた。
「恋さんの事、私知ってますよ。死因も全部、ぜ~んぶ」
驚く程晴れた笑顔の美憂に二人は思わずゾッと背筋が凍る。
「ただ極秘情報なので…三人だけになれる場所でお話しましょう?」
二人は仕方なくついていく。美憂が本当に情報を持っている確証は無い。しかしそれについていく程二人は恋の死の理由が知りたいのだ。

普段人が訪れない小さな神社。鳥居から本殿までの参道の脇、ここに三人は立っている。
「おい、本当に知ってるんだろうな」
「嘘だったらてめぇ、ただじゃ済まないからな」
「勿論本当ですよ?その前にこんなおとぎ話を知ってるとわかりやすいですよ」
美憂は二人にゲームの話をした。勿論二人はそんな話を信じるわけがない。
「てめぇ、ふざけてんのか?」
「ふざけてませんよ?ほら、これが証拠です」
美憂は録音テープを取り出し再生した。そこからは二人のやり取りが鮮明に残っていた。
「んなもん信じるわけねぇだろ!」
「………待って。それ、本物…?」
全く信じない直に対し花音は何かが憑いたかのような顔をしていた。
「あったよ、手掛かり。恋さ…やっとまとまったお金が入るって…チャンスがすぐそこにあったって言ってたよ!それがこれなんだよ!すぐそこってのはコイツ!さっきから大事そうに持ってるその手帳、そこにそのカードがあるんだろ!?」
美憂はつまらなそうな顔をした後、花音の言葉を肯定した。
「ネタバレが速いですよ…さて、ではお二人にも死んでもらいますね?」
「……は?」
「恋さんは関係者なので私が殺した証拠は基本的には存在しないんですが私が存在を許したこれとお二人は事実を知った。充分犯人としては始末する価値はありますよね?」
「いやなんでじゃあ聞かせたんだよ……」
「簡単ですよぉ、お前たちを!殺す為に決まってるでしょう!散々私を蹴って殴って笑って……そんな奴等を生かしておける訳がない!」
「くそ、なんなんだよこいつ…おい花音、逃げるぞ」
「あ、ああ……ああああ」
「花音!花音!くそっ…」
直はその場から立ち去ろうとした。しかし美憂の一言が足を止める。
「また逃げるんですかぁ?あのときみたいにぃ…ねぇ?怖いよぉ…助けてよぉ……お姉ちゃん……お姉ちゃん」
小さな子供の声を真似るように言ったそれは直に取っては聞きたくない言葉の一つだった。直は信じられないというのが目で見てわかる程動揺していた。
「は?………なんでお前がそれを知って…」
「さぁ?なんでですかね?」
「花音さんは……そう。あのときちゃんと話を聞いておかなかった事への後悔ですか」
涙で前が見えていないであろう花音は同時に恐怖で足が完全に動く様子が無かった。
「何を後悔しても無駄なの!アハハハハハッ」
鮮血が中を舞う。二つの叫び声が聞こえたような気がした。しかしもう遅い。花音の胸は既にナイフが刺さった後だった。そして花音は意識を手放した。その様子を見ていた直はそこから逃げようとしていた。
「うあ…くそっお前……」
「逃がしませんって………一緒に行こう?お姉ちゃん……?」
「お前に何がわかる!なんで知ってる!」
「いとこが溺れ行くのを貴方は見るしか無かった。幸い一命は取り留めたようですが……貴方は彼を見殺しにしようとしていた。あんなに苦しむ弟のように可愛がっていた彼を」
「誰から聞いたんだよ!お前…いい加減に…」
直が言い切る事は無かった。その喉には先程花音を貫いたナイフが刺さっている。
「誰から聞いたぁ?そんなの決まってるでしょう?貴方からですよ、私のオシリスの能力で貴方自身に聞いたんですよ」
「いやぁ容赦ないですね。しかもそれ、参加者でも何でもないですよね?証拠隠滅、どうするんですか?」
「っ!?……誰」
「名乗る程の者でもないですが……貴方のカードを欲する者ですかね。ただし僕はそんな凶器を持っていないので……こちらで」
「……。わかりました。良いでしょう」

「さて、それでは始めましょうか」
「ええ。その前にやることが」
「やること…ですか」
「冥界の楽園納める絶対の王 消えて無くなってそして潰れて!!創界神オシリス降臨!」
オシリスが現れたことに男は驚きを隠すどころか目を輝かせていた。しかしその輝きはどこか濁っていて歪んでいた。
「なるほど…それが貴方達の能力ですか!興味深いですねぇ!」
「…っ。ピラミッドボア、風切りヘビ、メルキオルがトラッシュニに落ちたので3コアオシリスに乗せます」
「把握しましたとも。では、先攻貰っても?」
「構いませんよ」
「それでは…スタートステップ」
男はターンを進める。バーストをセットし旅団の摩天楼を配置しターンを終えた。

「ネクサススタート……随分と呑気ですね?スタートステップ、コアステップ」
美憂はそう言いながら手札を一瞥し確認する。手札にはピラミッドボアが確認できる。
「ドローステップ、ピラミッドボアをトラッシュに捨てドロー枚数を増やします。メインステップ。ザンバを召喚、ターンエンド」

「それではこちらのターンですね」
男はドローしたカードを見てニヤリとしながらそう告げた。
「紫煙猪召喚、効果で霊獣王アメホシノミコトを破棄し一枚ドロー。続けてNo.32アイランドルートを配置効果で一枚ドロー、陰陽童召喚、ターンエンド」

「アメホシノミコト…随分と大きなカードですね」
「ハハハそうだろう?まぁでかすぎて今は使えないけどね」
「そのようですね。アイランドルート配置、風切りヘビ召喚。召喚時効果で紫煙猪のコアをリザーブに置く。さらに自分のネクサスがあるので1枚ドロー」
「紫煙猪は消滅だね」
「生還者カイトコブラを召喚。サンバでアタック」
「ライフで受けようか」
ザンバの攻撃がライフを砕くそれと同時にバーストが発動した。
「バースト発動、妖華吸血爪。2枚ドローするよ」
「カイトコブラでアタック」
美憂の続け様のアタックを男はライフで受ける。
「風切りヘビ………はアタックしないでおきますか。ターンエンド」

「さて、祭りを始めようか。闇に導け 今宵は君が女王として輝く時だ。闇の導き手ルチルを召喚する」
闇が何かを指し示す。その先からルチルが姿を見せる。男はそれに見惚れている様子だ。
「相変わらず美しいね…。自分のライフが3以下なので紫電の霊剣ライトニング・シオンを手札から召喚。召喚時効果で風切りヘビのコアをリザーブに置きデッキから一枚ドロー」
「めんどくさい手を……」
「バーストをセットしてターンエンドだ」

「このターンで決めます…スタートステップ」
「それは無理だと断言しよう。君のコアと僕のブロッカーを考えるとね?まあ致命傷なら与えられるかもしれないが」
「じゃあ致命傷で。コアステップ」
「おお、それは怖い」
「覚悟はいいですか?ドローステップ」
「良くない…と言ったら?」
「無視ですね。メインステップ」
「無視か。それは残念だ」
「ザンバのソウルコアを通常のコアに入れ替えます。そして風切りヘビのコアをザンバに乗せます」
風切りヘビはこれにより消滅。ザンバのコアは3つとなった。
「アタックステップ、天鎌の勇者ザンバでアタック!そして煌臨!」
天より降り注ぐ光が一体の勇者を包み込む。勇者に変わり現れたのは妖蛇の神皇シェンマドーだ。
「煌臨時効果発揮。自分のトラッシュにあるコスト6以下な妖蛇を持つスピリットを3枚までノーコストで召喚する。風切りヘビを2体、メルキオルを召喚」
「おお、そんなカードがいたのか」
「風切りヘビの召喚時効果でライトニング・シオンと闇の導き手ルチルのコアを一つずつリザーブに置き2枚ドロー。続けてメルキオルの効果発揮、デッキから3枚破棄します」
破棄されたカードは黒龍神ゼオ・デュラム、七海大名シロナガス、No.32アイランドルート
「その後メルキオル以外の妖蛇を持つカードを加えます。今回はゼオ・デュラムを手札に加えます」
「はぁ、残念だ…」
「でしょうね」
肩を落とした男に美憂は当然のように返した。しかしその残念とは美憂の想像している意味では無かった。
「相手による自分のスピリットの消滅によりバースト発動、妖刀ムラサメだ」
「んな、そのカードは…」
「相手のスピリット一体のコアを3個リザーブに置く。妖蛇の神皇シェンマドーのコアを3個リザーブに置く」
「う、うそ……。でもまだ!風切りヘビでアタック」
「ムラサメで…」
「フラッシュタイミング、オシリスの神技を発動させムラサメのコアをリザーブへ」
「使いたく無かったんだけどねぇ…ムルシエラのアクセルを使おう。コアが3個以下のスピリットを全て破壊する」
「う…ターンエンド」

「まったく…よくもやってくれたねぇ?」
「お互い様では?」
「…………ふぅ」
男はドローしたカードを見ると少し残念そうにしていた。
「ここでアビス・アポカリプスを引ける運は無かったか…」
「それを引けていたら?」
「さぁ、どうなってただろうね?。マジック、リターンスモークを使う。トラッシュのコスト4以下のスピリットを召喚する勿論指定カードは
高天原より君臨せよ 全てを統べる我が神よ!霊獣王アメホシノミコトを召喚する」
天より巨大なそれが現れる。それは王と、神と呼ぶに相応しい風格と共にフィールドに現れそして全てを恐怖させた。
「アメホシノミコトのコスト8でしょう!なぜそんな事が!」
「アメホシノミコトはトラッシュにいる時はコストを4と扱う。そのせいだよ」
「そんなデタラメな…」
「更にルチル召喚。ルチルの効果でトラッシュからライトニング・シオンをアメホシノミコトに直接合体。効果で1枚ドロー。アメホシノミコトにコアを置いてLv2にするよ」
彼の言葉と共にアメホシノミコトが動き出す。そして、アメホシノミコトの効果も動きだした。
「アメホシノミコトのアタック時効果、トラッシュの紫のカードを手札に戻す。指定するのはルチルだ」
「ラ、ライフで受ける」
「ターンエンドだ」

「スタートステップ、コアステップ」
何かを急ぐようにターンを進める。何かを察したのだろうか?その眼に輝きは無い。しかしこのドローによりそれは変わった。 
「これは……意外なカードが来ましたね。それなら…智の伝承者メルキオル召喚」
破棄されたのはリミテッドバリア、黒龍神ゼオ・デュラム、スネイルスケルター。手札に戻したのは妖蛇の神皇シェンマドーだ。
「ザンバを召喚。ザンバにコアを3個乗せます。メルキオルでアタック」
「……フラッシュは無い」
「では有りがたく。
屍従え現れ出でよ 呪われし者の軍勢が貴方を包み込む  妖蛇の神皇シェンマドー煌臨」
「無駄な事を。今ので君のリザーブのコアは一つ。召喚できるのは一体だけだ」
「メルキオルのコアも込みで風切りヘビ2体を召喚。風切りヘビの効果でアメホシノミコトからコアをリザーブに」
これによりフィールドには闇の導き手ルチルと陰陽童だけとなった。しかしもはやそれは関係ない。
「シェンマドーでアタック、アタック時効果で系統妖蛇を持つ自分のスピリットはブロックされません」
「なるほど……ハハ、敵わないなぁ。ライフで受けよう」
「風切りヘビでアタック」
「ライフだ」
「ラスト、風切りヘビでアタック」
「君の勝ちだ、おめでとう。ライフで受ける」


気付けば雨が降っていた。丁度、二人を殺した血が落ちるし雨は丁度いい。そんな事を思いながら美憂は歩いていた。
「Requiem~♪~~♪eis, Domine」
何かを鼻歌混じりに歌いながら彼女は姿を消した。それは何かを鎮める女神の歌。


時はほぼ同じくとある人通りの少ない場所の廃墟ビル。
「ほらほらぁ…はやく言いなさいよぉ?さもないとぉ…貴方の家族まで怖い目に合うわよん?」
「家族…家族には手を出さないでくれっ頼む!」
「だったらはやく言ってよねぇ?私も急いでるの」
「わかった!わかったから!言う、言う!まず赤の使い手、七星 海、紫、雨影 美憂、し、白…月野 幸輝」
「は?」
「……え?」
「なんでもない。続けなさい」
「黄色、守崎 弘人」
「………守崎」
「あ、青…野村 礼二」
「これで全部ね」
「あ、あぁ……そうだ。だから家族には…」
バァンと音がよく響き赤い何かが溢れかえる。
「心配しないで?約束は守るから…フフ。にしても…守崎 弘人……か。確か……試す価値はあるわね。まだ7月だし余裕もあるでしょ」