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Drunk on Speech

このサイトは慶應義塾大学英語会Chief of Speechだった作者が、今まで学んできたこと・感じてきたことを公開しているものです。

大学生向けのエッセイを次々と公開していく予定です。どうかみなさんのSpeech作りの参考にしていただければと思います。




不思議なもので、ほぼ5年周期でSpeechのMain Claimを予めパンフレットに掲載してしまう愚かな大会が熱病のように日本全国に次々と現れます。そして、そういう大会はその年に大いにバッシングを受け、翌年からはそうした間違いを犯さなくなるのですが、また5年くらいすると同じ過ちを再び犯してしまうのです。まるで株式市場の大暴落が5年周期でやってくるのを見ているようで、あまり気持ちの良いものではありません。

一体全体、Main Claimを予めパンフレットに載せる意味はどこにあるのでしょうか。
Main ClaimはSpeechの中でSpeakerが創意工夫を凝らして聴衆に伝えていかなくてはならないものです。本当に色々と熟考してSpeechを作ったSpeakerからしてみたら、予めパンフレットに自分のSpeechの内容が掲載されているのは迷惑以外の何物でもありません。逆に、Speechの中で聴衆にMain Claimを伝える能力がないSpeakerのために、大会実行委員会があらかじめ黒子となって聴衆に彼らの主張を伝えてあげているのだとしたら、そんな無能力のSpeakerを本選に上げている大会とは一体何なんだということになります。

さらに問題なのは、大会実行委員会がこういう暴挙に出ると、Speakerがせっかく苦労して編み出したTitleが泥だらけにされてしまうということです。
どんなに気の利いたTitleを作っても、聴衆はそのSpeechを聞く前に、そのSpeakerがなぜそのようなTitleを付けたのかがわかってしまうのです。

例えて言うならば、
Main Claimを予め載せてしまうということは、結婚式の2次会の幹事が、新婦のお色直しのドレスの写真を予め招待状に印刷して招待客に配ってしまうようなものです。招待客を驚かせようと思って一生懸命探し回ったお色直しのドレスを、予め招待客に暴露されてしまった。そんな幹事に対して新婦はどういう思いを抱くでしょうか。

重ねて言いましょう。
Main Claimを予めパンフレットに載せるのは絶対にやめるべきです。各実行委員会には、Speech大会運営の本質はどこにあるのかをもっと深く考えて欲しいと思います。




恵比寿にウエスティンホテルという高級ホテルがあります。このホテルはお客様から出たクレームをマイナスと捉えるのではなくて、それをどうクリアするかでホテルの価値をあげていこうと考えているそうです。例えば、リピーターのお客様から、「そば殻の枕が欲しかった」というアンケートでの要望があったとします。そうすると、次にその人がウエスティンホテルを訪れたときに、さりげなくそば殻の枕がベッドの上に置いてあるのです。それを見たお客様はそのサービスに感動し、ますますウエスティンホテルのファンになっていく。そういう好循環を自ら作り出しているのです。

各Speech大会もウエスティンホテルと同じくお客様からアンケートをもらっています。しかし、
アンケートをもらった時点でもう満足してしまっている大会が多いのではないかという気がしてなりません。皆さんご承知の通り、アンケートというものは、それをもらうということ自体が目的ではなくて、その結果を分析し、納得した点があれば次年度の大会に生かしていくということが目的なのです。もらっただけで満足して、アンケート結果を角に追いやってしまったのでは、アンケートを書いた人の努力が浮かばれません。

何年も連続して同じ大会に足を運んでいる人は、「去年もアンケートに書いたのに全然改善されていないな」という感想を持つことが多いそうです。
去年直したほうが良いと思って指摘した事項が全くそのまま放置されている。そういう大会運営の姿勢に落胆し、年々大会に足を運ぶ人が少なくなってきているのではないでしょうか。

アンケートの結果、特にクレームは宝の山です。大会実行委員長はその結果をわかりやすく分類し、次代の実行委員長にしっかりと引き継いであげなくてはなりません。それを引き継いだ新実行委員長は、すぐに
第一回実行委員会で、去年のアンケート結果にどのように対処していくか方針を立てるべきでしょう。去年の大会の記憶が薄らがないうちに去年出たクレームを処理する方策を練る、これが大事なのです。

昨年来場してくれたお客様が、昨年自分が指摘した事項が改善されているのを見る。そんな光景を目にしたお客様は、必ずその大会のリピーターになってくれることでしょう。
「大会の来場者を増やしたい」、「リピーターを獲得したい」という目的を達成するには、地味な努力を重ねることが一番効果的なのです。




大会に来客してくれたお客様がその大会に対してどのような印象を持ったのかを知る一つの手段としてアンケートがあります。大会主催者は、「素晴らしい大会だった」という言葉を励みにしつつ、「ここが足りなかった」というお客様からの言葉を真摯に受け止めて、次年度の大会の運営に活かさなくてはなりません。実はこのクレームこそが、年を追うごとに大会を成長させていく上で必要不可欠なものなのです。

ここで注意しなくてはならないのは、「とても気持ちのいいマネージでした」というようなお褒めの言葉が往々にして数行で終わる抽象的なものであるのに対して、「ここが不満だった」という言葉は極めて具体的で多岐にわたることが多いということです。そのため、お褒めの言葉は3分で書くことができても、
クレームをすべて網羅してもらうには最低でも20分ほどの時間がかかってしまうことが多いのです。

多くの大会では、
「大会終了後にアンケートを受付に提出してください」としていますが、これでは具体的な不足点をアンケートに落とし込む時間がありません。Speechの最中は暗くて紙に文字が書けないし、休憩時間中は他大学の人と話をする人が多いでしょう。まさか授賞式でアンケートを書く人はいないでしょうし、レセプションではお皿とコップで両手がふさがっていますからアンケートどころではないのです。おまけに、せっかく書いたアンケートを提出し忘れて持って帰ってしまう人も意外と多くいます。

そう考えると、宝の山に化けるかもしれないクレームが書かれたアンケートは、実は大会実行委員会には提出されないことが多いということがわかるでしょう。実際、私の友人の多くも、
「あのことをアンケートに書いておけば良かったなぁ」と後悔するのは帰りの電車の中であることが多いと洩らしていました。

大会実行委員会は、帰りの電車の中で思いついてもらったこともきちんと捕捉するようなシステムを考えなくてはなりません。一番いいのは
各大会のWebサイト上にアンケートのページを持つことです。Webサイト上にアンケートを作っておけば、大会終了後も色々な人が書き込みをしてくれるでしょう。鉛筆で紙に文字を書くのが億劫だった人でも、Web上であればキーボードを操作して具体的なアドバイスを色々と提供してくれるかもしれません。

大会が終わればアンケートも終わりだと思ったら大間違いです。
お客様の本音は、大会がすべて終わった後に出てきます。その貴重な本音を、お客様の負担のない形で書いてもらい、次年度の大会実行委員会への大事な資料としてまとめておくことが必要なのです。




大会の実行委員会によくありがちな間違いの一つが、「とにかく誰でも良いからヘルパーをかき集めろ」ということです。「人数さえいれば何とかなる、足りないよりも全然ましじゃないか」、というわけです。

実際、母校の福澤杯にもこんなに必要なのかというくらい運営のヘルパーが毎年つきます。当然Speechセクションの人間だけでは足りないので、他のセクションの人にも手伝ってもらうことになるのです。
その中の多くは大会の運営を親身になって進めてくれますが、余りに多くのヘルパーを集めてしまうと中にはやる気のない人も混ざってしまいます。

「ドラマの公演前で忙しいのにかったるいな」
「手伝いに来てやっているんだから文句言うなよ」


みたいな暴言を大会中に平気な顔をして吐く人間までもが混ざってしまうのです。

こういう人達は大会に主体的に関わって何かを学ぼうという姿勢がありませんから、お客様そっちのけで内輪でつるみ出したりします。特にレセプションのときなどは、主催者であるにもかかわらずお客様よりも先に料理に手をつけ、一つのテーブルを自校の人間だけで固めてしまい、他校の人やOB・OGと会話することなどありません。
それに乗じて一部のSpeechセクションの人間までもがその輪の中で固まってしまうので、せっかく来場した客から見たら、「このESSは一体何なんだ?」ということになってしまうのです。

誤解を恐れずに言えば、
大会実行委員長は会場にいるだけで害になるようなヘルパーをリストアップしてはいけません。Speech大会に対して全く興味のない他セクションの人には来てもらう必要など全くないのです。逆にSpeechセクションに所属しているからという理由だけでヘルパーをやらせてもいけないのです。今まで一回も大会に出たことのないようなやる気のないSpeechセクション員を呼ぶよりも、他セクションにもかかわらず大会運営にも一生懸命に手を貸してくれる人にヘルパーを御願いするべきです。

仕事の量からヘルパーの人数を割り出すのではなく、まず最初に有能なヘルパーをかき集めてみましょう。その上で、この人数でこの仕事量をこなせるかどうか考えてみてください。有能な人は守備範囲も広いので、複数の仕事をこなすことができます。実は、「この人数で十分運営を進行させることができるじゃないか」ということがわかると思います。そして、ヘルパーの方にしても、一人で複数の仕事をこなしていった方が大会から学べることも飛躍的に増えるのです。




真面目な大会実行委員会ほど細かい運営マニュアルの作成にご熱心なようです。もちろん運営マニュアルを充実させることで、大会のマネージのレベルを底上げしていくことは重要です。ですが、マニュアルが充実していることに安心し、それを飛び越えたサービスを提供できるパンツケアが育たなくなってしまったら逆効果です。

大隈杯の当日、私はぎりぎりまで家で寝ていたせいもあって朝食を抜かしていました。また生来の緊張症も手伝って、手が凍るように冷たくなってしまいDeliveryの練習もはかどらないという有様でした。そんな私を気遣って、パンツケアの女性が「大丈夫ですか」と声をかけてくれました。
私が朝食を抜かしたこと、手が冷えていることを伝えると、その女性は上級生に「10分だけ抜けてきます」と行って外に駆け出し、おにぎりと温かいコーンスープとカイロを買ってきてくれたのです。他のパンツケアがマニュアル通りお菓子とお茶を出している間に、彼女はマニュアル外のサービスを提供することで私をサポートしてくれたのです。これほど大会のマネージで感動したことはありませんでした。

マニュアルに書いてあるサービスというのは、すべての人に均質に提供されるサービスです。しかし、本当に感動を呼ぶサービスというのは、「他人にはしなくて、自分だけにしてくれたおもてなし」なのです。ですから、大会の実行委員長がマニュアルを遵守することだけを下級生に教育していては、Speakerから感心されることはあっても、感動されることは少なくなってしまいます。

私が大隈杯で運良く優勝することができたのはパンツケアだった彼女のおかげだと思っています。彼女のような人は、きっとこの先どんな職業について、どんな道を歩んでも成功していくと思います。

ただ唯一悔やまれる点は、私のSpeechが力不足だったせいで、彼女がSpeechセクション以外のセクションに行ってしまったことでしょうか。。。