勝利のために31 それは本当に国民性の違いだけなのか | Drunk on Speech

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このサイトは慶應義塾大学英語会Chief of Speechだった作者が、今まで学んできたこと・感じてきたことを公開しているものです。

大学生向けのエッセイを次々と公開していく予定です。どうかみなさんのSpeech作りの参考にしていただければと思います。


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日本の家計貯蓄率がなぜ高いのかというテーマを、経済学部にいたことがある人は必ず一度は聞いたことがあるでしょう。この現象については、諸説が経済学者から提起されているようですが、今のところ一番支持されているのが「ライフサイクル仮説」という理論です。この理論は簡単に言ってしまえば、我々は若年時代に貯蓄を蓄え、老年時代にその蓄えを生活費に充てるために取り崩すという仮説です。バブル以前の日本の人口構成は若年層が老年層に比して多く、そのために貯蓄率が高かったというのが要旨です。

一方、日本の貯蓄率が高いのは、国民的な儒教的美徳観から倹約が奨励されていたからだという説を唱える人がいます。しかし、私はこの説に対しては非常に懐疑的です。皆さんも、「宵越しの銭は持たない」という言葉を聞いたことがあるでしょう。江戸時代の日本では、稼いだ金は一晩経たないうちにパッと使ってしまうのがカッコ良かったのです。たかだか150年ほど前には、いつまでも女々しく金を溜め込んでいた輩は周りの人からさげすまれていたのに、逆にその150年後には儒教的美徳観から倹約が奨励されているというのです。これには少々無理があると言えないでしょうか

ここで重要なのは何らかの現象の背景にある理由を、「単純に国民性の違いだけで片付けるな」ということです。皆さんの周りのSpeechを見返してみてください。「アメリカ人にはボランティアを奨励する国民性がある」、「ドイツ人にはリサイクルを徹底する国民性がある」などという主張をよく耳にするのでしょう。しかし、これらの現象は本当に国民性の違いだけから生まれるものなのでしょうか。私は違うと思います。

ある現象の背景には、必ず論理的な理由があるはずです。上の貯蓄率の例で言えば、人口構成からくる理由の他にも、バブル崩壊後の資産価格低下による逆資産効果や、家計が予想する期待所得低下や不確実性増大によって貯蓄率が高くなる、などが考えられます。同じように、なぜアメリカ人がボランティアに積極的に参加し、ドイツ人が進んでリサイクルに取り組むのかは、「そうすることで彼らに得になる何かがある」からのはずです。

国民性の違いというには、少なくとも平安時代頃から続いていることをあげてほしいものです。逆に言えば、それだけ長く続いているものを、あなたの7分間のSpeechなどで変えることなど出来ません。ですから問題の根本原因を国民性の違いを理由にして逃げてはいけないのです。何故なら、あなたがそこで分析をサボったツケは、あなたがとることになるからです。

『勝利のために31』
背景にある論理的理由を考える