DEF LEPPARD
「SLANG」 (1996)
- スラング/デフ・レパード
- ¥2,243
- Amazon.co.jp
今日は友人Kの話をさせていただきます。
Kは専門学校時代の友人でしたが、ウチらと出会う以前の音楽傾向は、100%J-POPの流行りもの好きで、特にユニコーン、バクチク、小室系なんかが好きな、まあ普通の兄ちゃんでした。
専門学校のウチらのクラスには、おいらを始め洋楽好きが多かったため、その影響もあってKも洋楽を聴き始めました。
まあその当時Kが好きだったのは、ボン・ジョヴィ、ミスター・ビッグ、ニルヴァーナという、本当にベタなバンドばかりでした。
それでもKは、色々とウチらに何か良いバンドはないか?と聞いてきて、色々と聴いてみてはいたようですが、イマイチHM/HRは受け付けないようでした。
そもそもバラードが大好きな奴で、激しい曲自体が苦手なようでしたので、おいらは当時、基本的にKにはあまりタッチしていなかったのですが。
メタル耐性の無い人に、無理矢理メタルを薦めても仕方ありませんし、世の中にはKに合った音楽は沢山あるだろう、というスタンスでした。
卒業後、ちょっと疎遠になりましたが、数年後に再会してから直々遊ぶようになりました。
まあ相変わらず色々と聞いてくるから、とりあえずおいらが聴いている中で、Kも聴けそうなものは色々とアドバイスしました。
基本的には、この前の『初めて聴くHM/HR』の初級 のものですが、ただおいらはもちっと一般的なポップス系のものを聴いた方がいいんでないの?とは常々言ってました。
まあ色々あって現在Kが好きなバンドは、ボン・ジョヴィ、ミスター・ビッグ、オアシス、レッチリ、フー・ファイターズ、リンキン・パーク、マリリン・マンソン、ワィルドハーツ、ジェット、エアロスミス、スリップノット、グリーン・デイなんかです。
ワィルドハーツだけおいらの影響が出ていますが、基本的にはおいらが言うことは何も無いという感じです。
遂には自分が良いと思わないバンドだから薦めるという、変な感じになったりしてますからね。
まあここ数年忙しくなってからは、元々住んでる所も遠いですし、またしばらく疎遠になっているから現在どんな感じになっているのかは分かりませんが、今だったらニッケルバック、ディスターブド辺りを薦めますかね(既に聴いてるかもしれんが)。
Kの音楽傾向は、見てお分かりの通りのベタな流行りものばかりですが、何故か本人はあまり有名では無い知る人ぞ知る的なマニアックなものを好きになりたいというのもあるらしく、それでおいらに色々と聞いてきたりしてたのですが、実際お好みテープで色々と聴かせても、ほとんど分かんねえという意見でしたし、基本的においらに教えれることは無い!って、ずっと言ってたんですけどね。
ただそんな中でも、プライド&グローリーをムチャクチャ気に入ったり(以前書いたことあります が、あいつです)、ヴァレンシアやロビー様、アンドリュー、ゴットハード、ステイタス・クォー、それと以外にもAC/DCも気に入ってました。
さてそんなKですが、おいら以外にも別の友人の意見や、ネットなんかで自分で調べて独自で色々と聴いているようですが、何というか何故そのアルバムを最初に聴くかな~というものばかり聴いてるんですよね。
例えば
エクストリーム「WAITING FOR THE PUNCHLINE」
ハロウィン「DARKLIDE」
メタリカ「ST. ANGER」
モトリー「THEATER OF PAIN」
デフ・レパード「SLANG」
と、こんな感じです。
分かる人には分かるでしょうが、見事にそれは最初には聴いちゃダメ!ってアルバムばかり聴いております。
別の友人曰く、「中古屋に行って、売っていたものを何も考えずに買ってるんじゃねえ?」との事ですが、なるほどですね。
何故中古屋にそのアルバムが置いてあるのかを考えれば、迂闊に手は出せないはずなんですけどねぇ
実際おいらもアドバイスする時に、「そのバンドならこのアルバムを買ってみるのがいい、」っていつも言ってるのに、見事に忠告を無視してよした方がいいアルバムばかり買ってるし(-"- ;)
それでいて、そのアルバムがダメだった時に文句を言ってきますからね。薦めてねーよ
まあ現在疎遠になっているのも、そんな感じなヤツだから面倒くさくなってるからってのもあります(爆)
ただそれでも「DARKLIDE」とか「SLANG」は気に入ったようで、Kの音楽傾向が90年代のダークなオルタナ風味のサウンド中心だとすると、確かに一周して正しい選択をしているとは言えますが、果たしてそれでいいのか?
いくらそれらのアルバムを聴いて、ハロウィンやデフレパを気に入った所で、他のアルバムではそういった音楽は演っていないんだから、それ以上の広がりは期待できないし、そういう音楽がお好みなら『餅は餅屋』じゃないけど、そういう音楽専門のバンドを聴いた方がいんでねえの?って思うんですけど。
結局その後、デフレパの「X」を聴いて、普通にこっちのが良いって言ってましたしね( ̄_ ̄ i)
おいらが年末に『初めて聴くHM/HR100枚』 なんて企画をやったり、日々このブログにおいて、初めに聴くならこのアルバムがいいよ、って事にこだわっているのは、最初にどのアルバムを聴くか、もっと言えばどのバンドを聴くかってのが、かな~りその後の音楽人生に関わってくるかってのを知っているからこそ、最初は良い入り口から入ってほしいんですね。
おいら自信は聴き始めの頃に、周りに誰一人としてHM/HRを知っている人間がいなかったから、完全に独学で学んだ結果、最初は超ベタな所ばかりからスタートして、徐々に掘り下げていった感じだったので、結果的に誰かの余計な知識を植え付けられず、良い感じに段階を踏んで、知識が蓄えられていった感じがします。
前の職場の同僚が、新人の子に何か聴いてみたいと言われて、メイデンの3rdをいきなり薦めておりました。
確かにヘヴィメタルを代表する名盤ではありますが、正直最初に聴くメタルアルバムとしては、あまりにもハードルが高過ぎると思うし、実際その子も全然ピンと来ていないようで、結局そこでストップしてしまったようでした。
おいらに聴いてくれてれば、もう少し聴きやすいヤツを紹介していたのにな~(^ _ ^ ;)
あとおいらの知り合いのメタル好きの女の子で、まだメタルなんか全く興味が無かった頃に、当時の彼氏からナイルをおもっきし聴かされて、しばらくメタルが嫌だったという子がおりました。
その娘は後にブラックメタル、アーク・エネミー、パンテラ、セルティック・フロストなんかを好きになったりしましたが、それでも最初はそんな感じだったんですね。
ただこれは、おいらもむかし普通の子にデスメタルを無理矢理聴かせて、嫌がるさまを楽しんでたことがよくあったのでw、これは反省ですね(^▽^;)
ではKも気に入ったデフレパの「スラング」ですが、「パイロマニア」、「ヒステリア」で80年代に大成功を収め、HM/HRを代表するバンドとなったデフレパでしたが、90年代はグランジ・オルタナに浸食されてしまい、HM/HRが壊滅状態だった時代に、見事に流行に便乗したアルバムとして当時はおもっきし批判されました。
結果的に本作は失敗作となっていますが、全英5位、全米14位ですから、売れていないというわけではないんですよね。
まあ2作続けて全米1位獲っていた後だし、売上もミリオンに遠く及んでいませんが、原点回帰した復活作と言われている次作の「ユーフォーリア」も、売り上げは「スラング」とどっこいどっこいなんですよね。
さて肝心の音楽の方ですが、決してオルタナ化したというわけではなく、前作までの緻密に造り込んだオーバー・プロデュースを止めて、シンプルな音作りに徹して、デフレパ本来のメロディの魅力にこだわったアルバムと言った方が正しいでしょう。
そういう意味ではオルタナ化したというよりは、メタリカの「ブラックアルバム」に近い方法論のように思えます。
デフレパらしからぬシンプルなサウンドや、ダークというよりは落ち着いた曲調に心を閉ざさなければ、普通にデフレパならではの優れたメロディ満載のアルバムと言えます。
そうした所から、昨今ではこのアルバムを再評価する向きもあるようですし、実際悪くないアルバムだと思います。
ただやっぱり悪くない止まりなんですよね。
これだという特筆すべき曲があまり無く、何かアルバム一枚通して流して聴いてしまうというか。
ただし単なるBGMとする分には、いい感じにゆったりと身をゆだねながら心地よく聴けるからOKなようには思えますが、やっぱりそれなりに良いけど地味なアルバムという評価で、「ブラックアルバム」ほどの完成度は無いです。
ただそんな中でもノリの良い③”Slang”は、デフレパの中で1~2を争う位に大好きな曲です。
名曲揃いだけど、ライヴ映えしないものが多い「ヒステリア」の曲と違って、ライヴでこそ本領発揮する曲だからですかね。
デフレパはイギリスのバンドでありながら、デビュー作から”ハロー・アメリカ”と言って、常にアメリカを意識した活動をしてきた為、90年代という時代にも、その時のアメリカに迎合せざるを得なかったんですかね。
よく90年代という時代に、デフレパが「ヒステリア」や「アドレナライズ」のようなアルバムを続けて作ってもダメだったろうという意見がありますし、「スラング」の失敗があったればこその「ユーフォーリア」の歓待とも言われていますが。
ボン・ジョヴィが95年に「THESE DAYS」、エアロが97年に「NINE LIVES」と時代におもねることなく、自分たちらしさを押し通して普通に成功を収めました。(ボンはアメリカでは、ちょっと落ちましたが)
そしてこの2バンドは、未だにハードロックを代表するバンドとしての世界的な地位を保っていますが、デフレパはどうも1ランク落ちる大物ベテランバンドの1つになってしまった感があります。
ずっと安定した活動は続けているし、アルバムのクオリティも相変わらず高いんですけどね。
「スラング」で1回ファンを離してしまったダメージは、予想以上にデカかったということでしょうか。
もし96年に相変わらずのデフレパらしいアルバムを出していたら、どういう事になっていましたかね。あまり時代に左右されにくい音楽性だから、普通に受け入れられた気はするんですけどね。
むしろ「アドレナライズ」を出した92年に「スラング」を出していたら、あまり流行に便乗した感がなく迎え入れられて、それを踏まえた上で96年に「ユーフォーリア」が出ていたら、また違った感じだったかもしれません。
96年という年は一番メタルが落ち込んでいた時代でしたから、結局『デフレパお前もか』という批判しか出ませんでしたし、仮に「スラング」が否の打ちどころの無い名盤だったとしても、批判は避けられなかったと思います(メタリカのように新規ファンを大量に獲得して、以降「スラング」路線が続いた可能性はありますが)。
まあたらればの話ですし、結果的にそれほどの名盤を作れず失敗したから、現在の昔ながらのデフレパがあるわけですけどね。
「ヒステリア」や「アドレナライズ」の作り込み過ぎている音が受け入れられないという人は、この「スラング」は意外とOKな感じがします。中古も安そうだから聴いてみてもいい気はします。
ただしこのアルバムでデフレパを気に入ったとしても、この次に聴くべきアルバムは無いのが難点ですが。(しいて挙げれば「X」かな)