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Dr.ツクールの発明ノート

大発明家のDr.ツクール・ガラクータです。 ぼくは発明品を作ったり、世界中に出かけてあちこち見てきたり、 時には悪人やバケモノを退治したりと、なんだかんだ楽しく暮らしています。
ここではDr.ツクールの世界観を物語や絵で紹介して行きます。

4月のはじめ 
かねてから注文していた例のものが手に入ったと 
植物業者から連絡が来た。 

ぼくはその知らせにさっそく出かけて 
その例のものを家に持ちかえった。 

小さい植木鉢に一株、 
その植物は肉厚のツルッとした明るい緑の葉を広げて 
じっとしていた。 

業者の話しでは 
希少種の中でもさらに珍しい 
サンポトデ・アルク種なんだそうな。 

ぼくはさっそく 
ロムストレムルの歩行植物図鑑を引っぱり出して来て 
しらべにかかった。 
サンポ、サンポトデ・アルクっと 
おっ、あった。あった! 
さすが賢人ロムストレムルだ。 

サンポトデ・アルク 
歩行植物目コレマニア科 

ゴンドワナのマレナ山岳一帯にのみ見られる稀少種。 
一本の茎と肉厚の双葉が特徴。 
夏前に赤い花を咲かせる。 

とだけ書かれていた。 
へー赤い花か。 

業者の話しでは 
幼年期には普通に鉢植えでかまわないらしい。 
歩行期に入ると根を出して歩きはじめるそうだ。 

ぼくは日当たりの良い場所に鉢を置き 
業者におしえられた通りに一週間に一度水をやった。 
もっとも、家を開ける時が多いぼくにかわって 
もっぱらの世話はアシスタント女の子がしてくれていた。 

5月の連休前 

出張からかえって来て 
ふと鉢に目をやると、そこには何もなかった。 
あわてたぼくがアシスタントの子にそれを話すと 
ベランダを指さして笑った。 

そこには歩行植物が足?根で立っていた。 

なんでも、もう3日前から歩き出したそうだ。 
はじめて歩く所が見れなかったのが 
少しザンネンだったが 
それでもテクテクと歩く姿を見ると 
とても可愛らしく心が和む。 

おどろいた事にアシスタントの子にはなついている?ようだ。 
彼女が葉をなぜると大人しくしているのに 
ぼくが触ろうとすると嫌そうに葉を揺するのだ。 
これには閉口した。 
ぼくが買って来たのに。 

なので、できるだけ家にいる時は 
歩行植物の近くにいて 
序々に距離をちぢめて行くことにした。 

慣れてくれると良いのだけど。 

庭を散歩?する歩行植物を眺めて 
観察するることにした。 
  

6月のある日 

テクテク歩いていた植物が 
とつぜん立ち止まってうごかなくなった。 

様子を見に近寄ると 
トマトの葉に葉喰いの幼虫を発見。 

幼虫を目の前?にした植物は 
ブルブルと震え出して一目散に逃げ出したのだ。 
そのはやい事。 
こっちの方がおどろいた。 
軒下に逃げ込んだ植物はしばらく出てこなかった。 


歩行植物がぼくに慣れてくれるきっかけは 
7月、不審者の侵入からはじまった。 

うちの外壁には防犯用のまじないがかかっていて、 
招かざる客が外壁を乗りこえ入ってくると 
すぐにわかる仕掛けになっている。 

かけつけると 
庭先に入り込んだ猫に歩行植物が 
バシバシころがされていた!! 

傷はふかく、もうダメかと思ったが 

すぐに癒し手の方に来てもらった。 
さすがに植物の治療ははじめてなので「どうなるかわかりませんよ」 
との事だったが、なんとか傷口もふさがって 
歩けはしなかったが、 
鉢植えに根付かせると枯れる事はなかった。 

ぼくは時々葉をなぜて 
「すぐ歩けるようになるさ」と声をかけ 
植物用の栄養剤を与え、回復を待った。 

一ヶ月近くかかって 
歩行植物はまたテクテクと歩きだした。 
なぜかぼくに恩を感じているかはわからないが 
もうぼくが触っても嫌がらなかった。 

8月のはじめ 
それをはじめに見つけたのはぼくだった。 
双葉の間にゴミでも挟まっているのかと見ると 
そこには 
小さなつぼみがあった。 

ぼくはとんで行ってアシスタントの子にそれをおしえた。 

その日はちょっとしたお祝いで 
ぼくらは一緒に買い物へ行き、料理をして 
めったに飲まないワインでぼくも乾杯した。 

それから10日後、 

朝ぼくはアシスタントの子におこされた。 
早く、早くとせかされたぼくは 
寝ぼけまなこでそれを見て 
「あっ」と声が出た。 

大きな赤い花が咲いていた。 

双葉の間からスッと高くのびた 
赤い花弁は 
朝日をうけて大きく開いていた。 

ぼくらは手をとりあって喜び合った。 

その花を見せたくて 
親しい人たちに声をかけ 
お花見?パーティーを開いた。 

歩行植物のもの珍しさもあってか 
めったに顔を出さない人たちも 
差し入れを持って、ぞくぞくとあらわれた。 
なかなか会えない友達と会えた事を 
ぼくらは花に感謝した。 


お盆がすぎるとめっきりさむくなり 

歩行植物も光合成のために止まっている時間が長くなった。 


9月のおわり 
夕方の買い物からかえると 
歩行植物がどこにも見あらない 

ぼくとアシスタントは 
軒下や草木のかげ、 
家の中 
近所まであちこちさがしたのだか 
ついに見つける事はできなかった。 

原因はまったくわからなかった。 


それから、秋がすぎ 

冬が来て 

また春が来た。 


4月のはじめ 

庭の芝生はここの所の春の日差しをうけて 
生き生きとしている。 

そろそろ庭の手入れでもはじめようと 
ふと、菜園を見ると、 


小さな双葉が芽を出していた。 
肉厚のツルッとした明るい緑の葉が見えた。 

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後日談。 

もちろんその日ぼくらはちょっとしたお祝をした。 

よくよく調べてみると 
サンポトデ・アルク種は越冬する事がわかった。 

時期的には冬でなかったので 
気が付かなかったのだが 
原産地のゴンドワナのマレナ山岳は 
この地より、はるかに温かいから 

こちらの初秋は 
もうあちらでは冬なんだと知った。 

歩行植物は雨がふったあとのやわらかい土に 
根で穴をほって冬眠?するとの事。 
近年の研究でわかった事だが、 
まだアカデミー内でも発表されておらず 
一般には知られていないそうだ。 

親しい植物業者が消えた歩行植物の話しをしたら 
そう、おしえてくれた。 

2006 4/10 初稿 
2008 6/01 改稿