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Dr.ツクールの発明ノート

大発明家のDr.ツクール・ガラクータです。 ぼくは発明品を作ったり、世界中に出かけてあちこち見てきたり、 時には悪人やバケモノを退治したりと、なんだかんだ楽しく暮らしています。
ここではDr.ツクールの世界観を物語や絵で紹介して行きます。

なんて巨大な苺!

赤くて小さな粒々の模様があるそれは、たしかに巨大苺に見えた。

バレーボールぐらいあるその苺は、重さ15キロ弱。

こんなでっかい苺を見るのははじめてだ。
しかも、重い。

このでかい苺がもたらした出来事とその詳細はじつに驚くべき事実だ。
まさに神様のイタズラ。
智恵の実を食べたわれら人間も、それほど賢くはないということだろう。

世界のはずれ。
界外にはたくさんの世界からこぼれ落ちたモノたちがたどりつく場所だ。

あると思ったものが、ある日さがしてみると見つからない、そんな事がたまにあるとするならば、そのモノは世界の均衡からこぼれ落ちてしまったにちがいない。
この界外には多次元世界のありとあらゆる場所からさまざまなモノが集まるってくる。
それらを収集する事を界収と云って、中にはとんでもないモノを拾うこともあるのだ。

ぼくは友人を誘って界外へ出かけた。
界外での界収ルールは1つ。持ちかえれるモノはそれぞれ一点のみ。

さっそく宝さがしさながらに、あちこちさがし回った。

修さんは何処かの国の後ろ姿の女性ばかりあつめた写真集。

ペロ子は、あやしげな生き物のぬいぐるみ。
背中の線を引くと。なにやら言葉を喋るが、何語かさっぱりわからない。
「◎*#%△¥∈∂□」

すんごくさんはルゥー・ヴェトンの犬かばん(ハウンドバック)。尻尾をふりふりついて来る。
小さくても猟犬なのだ。

ミナムくんは今回バイトがあってこれなかった。

スゥーさんは
ゆらゆら揺れて光る電蝕くらげ。ピンクや緑、黄色の光り。色がかわってかなりキレイだ。

アーヤさんは
瓶に閉じ込められた風の精(シルフ)を見つけた。
心優しいアーヤさんは蓋を開けて逃がしてあげたが、なぜかアーヤさんの周りをヒューヒューうれしそうに回っている。

詩乃さんは
とても美しいどこかの国の民族衣装を見つけて、さっそくその服に着替えていた。

菓子実さんとアツケさんは、向こうでまだ楽しそうに何かさがしている。

ぼくは何かを感じるままに歩いていた。
モノと引き合う力があるはずだ。
波長が合えばかならず呼び合うだろうから。

それはコロンと落ちていた。
へたのない巨大な苺だ。
辺りには甘い香りが広がる。
ぼくは一目惚れして、それを抱えあげた。

なんだ、ずっしりと重い。
何かがつまってるのだろうか。
しっかりと抱えてみんなの元へもどった。

ぼくらはそれぞれ宝モノを見つけて家路についた。


家にかえって、ぼくはさっそくその苺について調べてみた。

「世界野菜果物大辞典」にはこんなでかい苺について出てなかった。
やっぱり果物の線はないかー。

鉱物の線も考えドワーフの「鉱石結晶大図録」を調べたが、こんなでか苺は出てなかった。
コレかなり固いんだけどなー。

魔法の生成物の線も考えて、アカデミーの魔法感知分析センターに持ち込んだが、これにもまったく反応なし。

ついでに透視線にもかけたが、中には何もうつらなかった。

アカデミーの長老たちにもこれが何なのかわからなかった。

これではもうお手あげだ。

しかたなく、でか苺をもちかえって、しげしげと眺めてもう一度考えた。
なにか見落としてる線はないのか?

うーん。
はじめて見た時に感じたのはなんだっけ。
何処かで見たことあったような、なかったような。むー。

その晩はベットに入ってからも、あの苺がなんなのかぐるぐる考えてなかなか寝付けなかった。

次の日の朝。
ぼくは寝ぼけまなこで、遅い朝食の準備をしていた。
でか苺をテーブルのうえでゴロゴロころがしながら、朝食の献立などゆるゆる考えていた。

トーストにバターを塗ってオーブンに入れ、かるーく焼き色をつける。
固くなる前の表面カリカリ中しっとりがぼくは好きなのだ。
冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、まずはベーコンをカリカリに焼く。卵を手にとろうとして 「はっ!」とした。
あーーーーーっ!!

ぼくはフライパンの中のベーコンを置き去りにして書庫へ走った。

たしか、あれだ。
書庫はまさにそびえ立つ山だ。。
もはや棚に入りきらない本が床に平積みされて、
あちこちで山になっている。
その本の山をあっちこっちかき分けて、はるか下から緑の鱗模様のカバー本を引っ張り出した。
これだ!!
「世界幻獣百科大図鑑」
葛乃森書房。

あれはまちがいなく卵だ。
しかもすごく珍しい種類の。

ああ、あった。
なんだコレ!すごいぞっ!!
あっ!ベーコン。

フライパンの中の無惨な姿の焦げたベーコンを片付けて、ぼくはトーストをさっと食べ牛乳で押し込み、でか苺と共に出かけた。

葛の森家は代々魔法生物飼育官を務める家系である

葛之森の広大な敷地の中には絶滅危惧種である多数の幻獣が保護され飼育、繁殖されている。
この葛之森家の飼育補佐官のお嬢さんとぼくは知り合いなのだ。

ミナヲお嬢さんは白いグリフォンに乗って現れた。
「ごきげんようツクールおじ様」
「やお、久しぶりだね」
白いグリフォンもぼくをおぼえていてくれていたようで、くちばしをすり寄せて来る。
くすぐったいよ。

「今日来たのはこれのためなんだ」
「これって‥‥‥‥‥」
彼女はぼくの抱えた苺を見て、言葉を失った。

絶滅種の卵なんて普通手に入らないからな。

ぼくらはさっそく孵卵機に卵をうつした。

「おじ様、この卵は停滞期に入っます。この中ならすぐに活性期にはいりますから」
「どのくらいで生まれんだい?」
「そうですね、5時間ぐらいです」
「そんなに早く?!」
「はい、この孵卵機の中は時間経過を早めてありますから」
「なるほどねー」

ぼくは葛之森を案内してもらい、あの絶滅種のこれからについてあれこれ話した。

葛之森ではあの絶滅種に関しては公表しないそうだ。

一匹では繁殖できないし、どちらにしても絶滅はまぬがれない。
また、この事実が公になればあの新しい命はコレクターの標的になるだろうし、政府も標本対象としてしか扱わないとの事だった。

葛之森は生き物の命を第一に考えて、生き物と共に生きて来た家だ。

結局、ぼくが飼うことにした。
家族がふえるのはうれしい事だ。

卵から出てきのは、赤い翼とながいしっぽ、つぶらな瞳の小さな(それでも全長1.5メートルはある)ストロベリードラゴンだ。
とても甘い香りがする。
宝石のような真っ赤な肌には粒々がうかんでいる。

はじめて見たものを親と思うのは卵生の特徴だ。
ぼくの後をヨチヨチついてくる。
かわいい。
「クワァー、クワァー」となく。
これもかわいい。

成長したら簡単な言葉ならおぼえるそうだ、さすがドラゴン賢い。

首の下をなぜるととてもうれしそうにゴロゴロ喉をならす。

ストロベリードラゴンはかつては王家のお姫様のペットとして飼われていた時代もあった。
その姿はとても美しく、ブレスは甘い香りを吐く。
性格はおとなしく人なつっこい。
草食なのが珍しい。
卵は一つ、苺のような卵を産む。
魔法への耐性がつよく、ほとんどの魔法は効果がない。
アカデミーの魔法装置にまったく反応しないわけだ。

だか、その肌の美しさと人なつこい性格が災いし、乱獲につながり、すぐに絶滅してしまったそだ。
長老の世代も知るよしもない。

こんな美しい生き物を絶滅させてしまうとは、人類のおろかさが嘆かわしい。

こうしてあのでか苺からはドラゴンが生まれ、ぼくの家で飼われることになったのです。

2006/06/13