僕は
治療費は途方もなく高いが
不可能を可能にする
神の手をもつ天才美容外科医っていう
都市伝説が
一人歩きしてるらしい
都市伝説の成り立ちには
ネタもとがあるはず
理由をいろいろ考えた
もう
四十年も医者やってるんだもん
認知能力が低下した昔の患者様が
僕を美化して
孫たちにすりこんでいるのかもしれん
人間は
本能的に
昔のいやなことは忘れようとするが
幸せな思い出は忘れないように
するものだ
老人にとって
昔の思い出は
つねに
甘美である
昔の患者様にとって
僕が甘美の対象になっているのではないかと
推測出来る
甘美の対象は神格化される
孫や子供に神話を聞かせりゃ
都市伝説が生まれるかもしれない
しかし
一番可能性のあるのは
世界中にいる
僕の弟子が
勝手に
神話をでっちあげてることじゃないかと思う
特に中国では
自分達の正当性を権威付けるために
一度しか接触しなかったのに
勝手に
「師匠」にされてしまう
自分の師匠がゴッドハンドなら
自分も
ゴッドハンド予備軍なんだから
患者様から尊敬を勝ち得るのに有利だろう
現に「高須先生の弟子に手術して貰ったが、気に入らない。大先生にやり直ししてもらいたい」って外国人が
よく来る
弟子である証拠は
僕と
にこやかに写ってる写真
外国人の医者に
「尊敬してます」って言われりゃ
ツーショット断れないよ
♪名前も知らない
あなたとわたし♪
なのに
勝手に弟子になっちゃうんだよ
名前も知らない不祥の弟子達が
日本の闇社会で繰り広げる
真実のディアスポリスについて
語る
（続く）