高そうなスーツを着た
ちよっと鼠先輩に似た
ハンサムな人物は
美容外科北村クリニックの院長
いまはなき
美容外科の大先輩である
大森清一先生
の
代理として
生きている、どの大先生よりも
上座にいる
任侠の世界では
このポジションを
「霊代」と呼ぶ
会長よりも
理事長よりも
総裁よりも
偉いんだ
嫉妬ぶかい村社会では
諸先輩を差し置いて
いい格好したら
学会や同門会で
針のムシロに座るのを覚悟しなければならない
だから
しきたり重視の
大森先生の弟子は
誰も
霊代を辞退する
いま
日本には
「日本美容外科学会」を名乗る学会が
二つある
一つは
慶応大学医学部出身の梅沢文雄先生が創立した
もう一つは
東大医学部出身の大森清一先生が創立した
もともと慶応と東大は仲が悪いが
この両先生は特別仲が悪く、弟子たちも
師匠の路線を固く守り
両先生が亡くなって久しいのに
学会は二つに分かれたまま
お互いを
誹謗中傷しあっている
親と子が
違う学会に入っているケースも多い
僕のライフワークは
この学会を統一すること
僕の真の姿を知らない
大森先生の弟子たちのうちには
僕のことを
「北の将軍様」とか
「武闘派の領袖」とか
言ってるそうだが
僕の望みは
平和を愛す
「学会統一」
今回は
美容外科学会の先人である梅沢文雄先生と大森清一先生を
「美容外科は、お二人の切磋琢磨によって発展してきた」と認定し
美容外科学会の顕彰委員会が
お二人をそろって表彰することに決めました
僕は顕彰委員会委員長だから
表彰状渡す仕事
梅沢文雄先生の分は
ご子息の梅沢文彦先生が受け取ることを快諾
北村院長は
警察病院で大森清一先生の指導をうけた
れっきとした
弟子
だから
大森清一先生の霊代として
表彰状を受け取る資格は十分だ
北村先生は
僕の
二番弟子
でもある
北村先生は
大森先生のもとでの兄弟子達なんか
ちっともこわがらない
何故なら
彼の本業は
武道家
そう
彼は
西野バレー団を創設した
西野こうぞう先生が
創設した
合気道西野流の
師範代
なんだ
師範の
西野こうぞう先生以外に
彼を
倒せる者なし
僕が考えるに
実戦で一番役に立つのは合気道である
ボクシングや空手は
傷害事件になりやすいし
レスリングや柔道は技が殺伐としているので
紳士的な解決には
むしろ
邪魔
だから
本当に強い格闘家は腰が低く
すぐ
あやまる
「負けるが勝ち」って
知ってるのが
一番強い人だよ
とは言え
「カンシンの股くぐり」を
いつもやってたら
「医師の尊厳」は
地に落ちるよね
荒れ狂うモンスターペイシェントを鎮めるには
合気道が
一番おすすめ
僕が
医者になったばかりの
四十年前
大学院に入ったせいで
大学病院からは
給料が出ない
生活費は
アルバイトで稼がねばならない
いいバイト先は
そろって
修羅場
お客さんが、しばしば暴徒と化す、船橋オートレース場とか
酔っ払いによる傷害事件の多い、盛り場の夜間診療所や
無制限に救急車を引き受ける救急病院とか・・・・・・・
はじめは
身をを護るために
仕方なく
荒れ狂う猛獣みたいなお客さまに
軽く
あしばらいくらわせたり
当て身を食らわせたりして
しのいだもんだ
これは
決して
過剰防衛じゃない
僕にモンスターペイシェントのあしらいかたを
指導してくれた先輩たちは
その後も
修羅場を職場として
働いていた
切られたり、刺されたり
満身創痍
僕に
モンスターペイシェントのあしらいかたを指導してくれた、一年先輩の藤本先生は
三島由紀夫みたいにモンスターペイシェントに斬首された
藤本先輩は
小肥りのちびっこて
小林亜星さんか高木ブーさんを彷彿させる
いじめやすそうなタイプ
教えてくれた技は
きわめて簡単
「小指をへし折る」だけ
刃物持って怒鳴りまくる酔っ払いの患者様
心の病のなせるわざか、アルコールの魔力か、薬物による幻覚なせいか・・・・・何でもいいから
武器も薬物も使わず
一瞬で鎮静化させてほしいと全ての人が望む情況
そんなとき
とにかく
凶暴な患者様を鎮静化させるのは病院をあずかる医師の使命
藤本先生
ニコニコしながら
患者様に近付き
握手・・・・・したように見えたのも一瞬
患者さま
刃物を取り落とし
おとなしくなった
足の小指を踏み潰して走り廻る患者様をおとなしくさせる技も
教えてくれたね
藤本先輩の話しは
余分だった
北村先生の話しに戻ろう
２０年くらい前に
北村先生の結婚式で
「兄弟子です」って
由美かおるさん
紹介された
由美さんが
水戸黄門と入浴してるときも
もくもくと練習につぐ練習
ついに
兄弟子をしのぎ
道場のナンバー2に
のぼりつめた
まことに
めでたい
さぞかし
強くなっただろうね
次の学会で
強そうなのを
けしかけるからね
スマートにさばいて見せてよ
楽しみ♪楽しみ♪ルンルン♪ルンルン