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ピタンギー邸は
山のなかにある
登山道の入口は電動式のゲートがあり
このゲートから遥か彼方のピタンギー邸のガードマンがTVカメラで見張っている

タクシーの窓から僕が顔を出すと
ゲートは開いた

舗装された登山道をタクシーで走ること三十分

ピタンギー邸が見えてきた
ピタンギー邸の隣に
患者や崇拝者から献上された宝物を陳列する秘宝館が見える
その隣に
空手や柔道の練習の為の武道館が併設されてる

ピタンギー先生はブラジル柔術のグレイシー一家のタニマチで主治医なのだ
グレイシー一家の技のいくつかはピタンギー先生のアイデアで生み出された
ピタンギー先生は格闘技マニアで空手二段
奇しくも僕と同じ流派
僕が大学の空手部で習ってた寸止めルールの松濤館流
ピタンギー先生と組み手やってみたことがあるが
とても二段とは思えない鈍さ

きっと段位をプレゼントされたか金で買ったのだろう

柔道なら僕と三男は講道館の二段なんだが

一生懸命昇段試験受けてた三男と違い

僕の二段はピタンギー先生と同じ

段位をくれた講道館館長の加納りせい先生は「理論が優れているので二段にする」って言って
プレゼントしてくれたもの

今度、正道館の石井館長にお願いして、空手も二段買っちゃおうかな

ピタンギー邸の応接室は地下にある
地下室の隣はプールでプールの水位は応接室の天井
応接室の南側の壁面は透明なアクリル
つまり
応接室から水族園みたいにプールの中が見えるんだ

ピタンギー先生は
このプールで泳ぐのが大好きだ
最高のもてなしは
自分が泳ぐところを
この応接室で客に見せること

そのあと
プールから戻ったピタンギー先生を
シャンパン飲みながら

「すばらしい泳ぎですね」とか「八十歳とは思えない美しい肉体でしね」って
誉めそやすのが作法なのだ