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どこまで話したっけ?

そうそう

医学部学生のマネーロンダリングの話しだったね

当時
東大紛争の真っ盛り

安田講堂の攻防戦
知ってる?

全国規模の学生闘争の嵐が
吹きすさんでいた

嵐のもとは
東大医学部の学生運動

今と違い
当時の東大医学部の学生は
貧しく

卒業したら
早く稼いで経済状態を改善することを夢みる
苦学生も多かった

ところが
卒業して医師免許を取得しても
生活はいっこうに良くならない

「インターン制度」というものがあった

卒業してから一年間はインターンとして
ただ働きしなければ
一人前の医者になれないと
法律で定められてた

一人前の医者になった後も
東大病院では
多くの若い医者が「無給医局員」として
ただ働きさせられていた

大学院生の医者はただ働きさせられた上
月謝まで巻き上げられてた

これもそれも
若い医者から搾取する
「医局制度」のせいだ

貧乏な医学生たちは
考えたんだね

「インターン制度粉砕!」 「医局解体」をスローガンに
実力行使

教授をつるしあげ
教室をロックアウト
毛沢東の文化大革命のまねごと

多かれ少なかれ
貧乏な学生の多い大学では
学生が紅衛兵のように
荒れ狂ってた

裕福な開業医の子弟ばかりの
我が昭和大学医学部は
プチブルの学校

太い 親のすねをかじるのに
抵抗をおぼえない
ボンボンが大多数

のんびりした校風で
教授と生徒は
仲がいい

あんな
善良な教授
いじめるやつは
僕らが
許さん

学生運動の無風地帯

インターン制度があったって ちっとも 困らないし

東大の大学院に無試験同様で入れるなら

月謝払って
ただ働きしても
なんともないもん

「とりあえず、願書出しに行こう」

様子の下見に偵察隊出発

「大変だ!カクマルや中核の奴らがゲバ棒もってパトロールしてる」

見つかったら

本気で革命するつもりの過激派学生は
僕らのような学生を
「腐敗分子!」として
総轄しちゃうに違いない

「空手部と剣道部と柔道部のOBで決死隊作って、過激派蹴散らして、突入するか」

僕が提案

「突入計画は、いつもの麻雀荘で練ろう。有志は集まれ」

雀荘には
誰も来ない

ちくしょう
いくじなしのプチブルめ