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「人工天体M3には名前がついていました」 「名前?何という名前ですか?」
来栖は1枚の写真を取り出した。 一同は車座になってその写真に見入った。 更に、来栖はもう1枚の写真を小林に渡した。
「これは、アルファベットですね…ああ!」 写真は衛星内部を撮影したものを拡大してあったが、そこには はっきりと [Ατλαντίς] の文字が読み取れた。
「ああ…アトランティス。これはギリシャ語ですか?」 文字です。 これが衛星自体の名前なのか単に出入口という意味なのか は分かりませんが、この衛星を古代のギリシャ人が作ったとは 思えません。だとすれば、結論は一つです」
「これを作ったものがギリシャ人になった、という事ですか?」 言葉からすると伝説の大陸との関係が推測されますね」
「しかし、それはプラトンの書いた本に出てくる架空の大陸でしょう?」 を書いたつもりはなかったと思いますが、その中でアトランティスは 強大な軍事国家でヨーロッパを支配しギリシャとは敵対関係にあった としていますね。
その後の大地震と洪水で海に没してしまうのですが、これは 支配と被支配の逆転という関係性を示唆する逸話ではないか と思われます。 つまり支配者が天変地異で滅ぶというのは多くの場合クーデター や反乱がその裏に隠されている訳です」
「という事はアトランティスは沈んだのではなく、支配していた 各地域の反乱で滅んだと?」 宗教権力というか一種の権威によって古代世界を動かしていた のではないかと思われます」
「それで、その権威の中心に火星人がいたと言うのですか?」 の未開社会に介入したのか更に以前の人類発祥の頃から徐々に 移住してきたのか、その辺りの研究はまだ多くの謎に包まれて いますので。
何れにしても、プラトンの頃には両者は完全に同化して異星人 というような存在ではなく発達した異文化を持つ集団という程度 の認識になっていたのではないでしょうか」
「火星人は地球人と同化した…」 小林はまたも自分の理解を超える状況に言葉を失った。 してきた火星の人類が地球の固有種を滅ぼして、以後自分達が 地球人としてその後の世界を築いていったという仮説も成り立ちます」
「そんな大昔に戦争があったという事ですか?」 論じる事は出来ません、文字通り猿と人くらいの差があったと 考えられますので。現実的な可能性としては彼らが持ち込んだ 病原菌等が原生人類を絶滅させたというようなシナリオになる でしょうか。 とにかく、発見された文化のあまりの共通性から、我々は直接 火星人の子孫とでも言えるような存在であると考えてもおかしく ないのです」 世界戦略を立ててきたと思われます、またそこから逆に 古代から陰で世界の宗教を支配してきたアトランティスを 信奉する勢力の存在も明らかになってきたのです」
「しかし、その連中は単なる旗印として伝説の大陸を利用している だけじゃないんですか?世界は元々アトランティスのものだった というような」 当のアトランティス勢力は自分達の正当性を再認識したよう ですね。 この問題は宗教の蓋然性を論じるのと同じですから結論は 出ませんが、現実的な脅威としてOB大統領はその勢力の 台頭を危惧しています」
「その連中は単なる宗教勢力ではないという事ですか?」 ロシアの軍内部にもその影響が及んでいると考えられます」 クウェートに核を投下したのもその連中ですか?」
「OB大統領は国内のテロ勢力の一掃を企図していますが それがロシア等の他国に広がっているとしたら問題は簡単 ではありません」
「大統領は我々に全面的な協力を要請してきました。今、 発電衛星の世界的ネットワークの始動により世界の経済界は 再編され各国の軍事バランスも崩れようとしています、大統領 は逆にこの機会を利用して、自分達の支配権を奪還しようとして くる闇の勢力をあぶり出して一気に壊滅させる、他国の勢力に 対してはギリギリの軍事介入も視野に入れているようです」
「それは、一つ間違えれば!」 のです。幸い在日米軍の反乱勢力は自衛隊の尽力で壊滅させる 事が出来ましたが」 でした。では今回の合同演習も米軍内部の反乱勢力を誘い出す為の?」
「ゆきかぜには多大の負担をかける事になりますが、既に敵は 能力者の集団を擁してMR2自体への妨害工作に出ている模様です。 火星人の話は置くとしても、この基幹エネルギーへの転換は必ず 成功させなければなりません、それこそ今後の人類の生存に直結 してくる問題です。 我々はどのような妨害があろうと最早、前に進むしか道が無いのです」
「総理…分かりました。自分達は軍人です、命令とあれば何処へでも 向かいますし敵は殲滅します。ゆきかぜの体制が整い次第合同演習 に参加します」 と言っても過言ではありません。あなた方はいつでも危機を乗り越えて くれた、今後更に過酷な司令を下すかも知れませんが」
「総理が米軍から救い出した真喜志1尉ですが、彼女が以前、 言った事があります。軍人として任官した以上いつでも戦死する 覚悟を持っているべきだと、我々は当然その覚悟で任務を遂行 します。梅田艦長以外のメンバーには衛星の件だけ伝えます、 アメリカの新技術という事で。連中にはそれで十分です(笑)」 人間を増やしている」 を信頼しています、長官共々これからも日本の舵取りをよろしく お願いします」 利倉が時計を見て声をかけた。
「ではみなさん、今日はご苦労様でした」 そう言うと総理と官房長官が部屋を後にした。
小林2佐は今後起こるであろう大きな戦いの予兆を感じていた。
つづく |