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「今回の交渉でOB大統領は闇の勢力の存在を認めました。 アメリカという超大国に深く食い込んでいる影の政府とでも いうべき存在を」
「それは、前政権のバックだった石油資本の類ですか?」 それだけには止まりません、政府にも軍にも深く根を張り 実質的にアメリカの世界戦略を左右し得る第四の世界宗教 とでもいうべき存在です」
「第四の世界宗教?それは…」
「世界の神話には多くの共通点が指摘されていますが、それを 集約すれば神の世界の物語が人間界と関わりを持つストーリー に発展するものになりますね」
「それはそうですね、日本の神話にしても混沌の中から世界が 生まれ、神々が現われて様々な物語を生み出しながら人間の 世界に繋がってきています。 創世神話というのは、どの国も似たような構造を持っていますね」
「これは素直に考えればそういう神話はルーツを同じにする という事なのです」 神話に影響しているというような話ですね」 古代の人類が共通体験を基に神話を創り出し、それが世界に 伝播したと考えられるのです」
「総理、それはOB大統領がそう言われたのですか?」 ローマ法王庁をも支配する宗教勢力が存在していると」 隠れているという事です。世界の人々は各々の信仰を持っている と思っているのですがそれが大本では繋がっているというのです」
「それは…俄かには信じ難い話ですね」 思ってもいなかった話らしいですね。 ただ、我々はある証拠を見せられました」
「証拠?」
「ワシントンのスミソニアン博物館に一般に公開していないスペース があるのですが、そこには主にアポロ計画以降のアメリカの宇宙開発 の資料が収蔵されています。 月から火星へ目標が変わり人類は本格的な宇宙への進出を始める 事になるのですが、そこで大事件が起きました」
「大事件ですか?」 総理の傍らにいた技本の開発官が立ち上がった。
「えー、私、防衛省技術研究本部、誘導武器担当開発官の来栖 と申します。先般、総理に同行してスミソニアンを視察しまして アメリカ側から問題の資料を見せられました、これは主に火星探査 についての資料ですがその中に1976年火星に着陸した米探査船 MPFの観測データがありました」 (「その頃は人類が初めて火星に探査機を送った時代だったな」) 小林は防大時代の基礎教育の講義を思い出した。
「はい。それによりますと、同船の探査機が1時間毎に火星地表面 に送られてくるマイクロ波を検知した為米政府はその後大規模な 調査を実施し、その結果地表面から約35000㎞上空に第3衛星 M3(全長1㎞の円筒形)を発見して、これが人工天体で発電衛星 である事を確認したという事です」
「はあ、まあ人工天体M3の内部には自律ロボットが降下して内部 構造が解析され、ちょうど人間サイズの生命体が活動するのに 適した構造になっていたという事が判明しましたのでヒューマノイド型 の生命体を称して火星人と表現するのは間違いではないでしょうね」 地球外生命の存在を確認した米政府は国家プロジェクトMR2を始動 しました。
以後4回の衛星調査が実施され1997年までに更に10基の人工 衛星を確認してM4~M13と命名しました。これは直径100mの 球形で電波中継用の静止衛星と推測されています。以後、米国に よる発電衛星開発、並びにマイクロ波送信衛星ネットワークの構築 計画が実動段階に入りました」
「そうか…アメリカは30年の歳月をかけて火星人の遺産を利用 しようとしてきたのか。という事は今アメリカのやっている世界的な 太陽光発電のネットワーク構想というのは?」
「当然、この発見を基礎としたMR2計画の一環と言えますね。 米国は既に2000年には発電衛星第1号機E14を開発し、2005年 に初の大気圏外発電衛星の2基・E560、561(全長1.5㎞の円筒形) を地球・月間のラグランジュポイントに設置する事に成功しました。
更に20基の中継用衛星E562~E581(直径100mの球形)を開発し 順次地表から約35800㎞上空に配置していって、2006年にこれを 完了しました」
(「もう発電衛星のネットワークは3年前に完成していたのか!… それから全世界へ向けての発電機頒布が始まる訳だな。 中東を中心とする産油国勢力が生産調整に入り出したのもこの頃だ もしアメリカの動きを察知していたのならそれは何処かからのリークに 違いない。 はアメリカの世界戦略を牽制した上で次に発電衛星ネットワーク自体 の支配を狙ってくるんじゃないのか?OB大統領とそいつらの関係は? 五島総理は大統領から何を言われたんだ…俺達の運命は?」) どのようなアクションを起こすべきか判断出来ない状態になっていた。
「小林2佐、どうかされましたか?」 総理、OB大統領はその闇の勢力の存在を明かした上で総理に 何をしろと言われたんですか?」
「小林2佐!」 安倍が小林のあまりに直接的なものの言いように顔をしかめた。 するかで、今後の世界の運命は大きく変わってくると思われます。 いったい大統領は?」
再び来栖が話し始めた。 地球と同じような誕生過程を辿り一時期は地球とよく似た環境が あって、生命が存在していたという説もありました。但し、太陽からの 距離と自身の質量の問題で生命に適した環境も早期に失われたと 考えられていました。
ただその場合、文明の発達のスピードも惑星としての環境の変化に 比例していたのではないかという考え方があり、火星は地球に比べて 既に何万年も前に宇宙空間に雄飛していたという可能性が探られて きました。 今回の発見は正にそれを証明する事になったのですが、ではこれらの 衛星を作った火星人達は何処へ行ったのかという問題が新たに提出
「発電衛星を作った火星人達が何処へ行ったのか、ですか?」 一同は来栖の口元と五島総理の表情に注目した。
世界を操る闇の勢力の正体が、明らかにされようとしていた。 つづく |