翌週、CICには梅田以下の幹部士官が集まり、きみ達の

実戦訓練が始まろうとしていた。

 

「よし、スクリーン始動」

菊川の声が掛かるとスクリーンに周囲の護衛艦の様子が

映し出された。
「おおー、」

CICにはどよめきが起こった。
「よく映ってるじゃないか。俊之、視界は360度あるのか?」

大田が尋ねた。

 

「ああ、その内もっとびっくりするぞ」
「うん?何だ?」
「まあ見ていろ」

菊川は得意気だった。
「他艦の準備は?」
「はっ、艦長、完了しています」

小林が答えた。

 

「真喜志1尉、いけるか?」
「はっ、いつでもOKです」

スクリーンの前の美弥子が、きみとうなずき合った。
「よし、演習開始」
「了解、合同演習開始、菊川3佐、オペレーションを指揮せよ」
「了解、オペレーション開始、模擬ターゲット射出!」

菊川の号令と共にゆきかぜから5機の模擬ターゲットが

射出された。

 

スクリーンには上昇していくミサイルの姿が捉えられた。
「あっ!」

大田が叫んだ。

 

「これは、何処から撮ってるんだ?」

何とスクリーンには真上からゆきかぜを捉えた映像が
映し出された。だれもが反射的に自分の頭上を見上げた。

 

「ヘリが出てるのか?」

大田の言葉をよそにスクリーンのミサイルが反転し、画面は

ゆきかぜに向かっていくミサイルの視点に切り替わった。
「おっ、これは、模擬弾のカメラか?」

小林が首を傾げた。

 

「迎撃ミサイル発射!」

菊川が叫ぶと5発のスタンダードミサイルが発射され、画面は

再び真上に切り替わった。次々にターゲットに命中し炸裂して

いくミサイル!
「おー、やった」
「第2弾模擬ターゲット射出!」

菊川が叫ぶと、また5機の模擬ターゲットが射出された。

「よし、迎撃ミサイル。今度は射出だけしろ」
「何?」

大田が驚いて菊川を見た。

 

間、髪を容れず迎撃ミサイルが射出された。上空で一瞬、

静止したようなミサイルが次々に点火しターゲットに向かって

接近していく。
「うっ、おー!」

迎撃ミサイルの視点で、ちょうど反転するターゲットが直前に

捉えられた。次の瞬間、5機のターゲットが一斉に爆発した!

 

「うわっ、やった!」
「凄い!どうやって撮ったんだ俊之!」
「スクリーンの操作はきみさんがやっている」

菊川の言葉にCICの視線がきみに集まった。

 

「迎撃ミサイルの誘導は真喜志1尉だ」
「えっ、」

他のオペレーター達も信じられないという表情で美弥子と

スクリーンを見比べている。

 

「よし、第3弾模擬ターゲット射出、なっちゃん、スクリーンを」
「はい!」

菊川の言葉になっちがスクリーンの前に進み出た。今度は

10機の模擬ターゲットが射出され5機づつに展開して反転し

ゆきかぜに向かってきた。

 

「よし、迎撃ミサイル射出!」

美弥子ときみはミサイルが射出されたのを見てうなずき合った。
バラバラの軌道を描いて飛んでくるターゲットに次々とミサイル

が命中していった!

 

「オー!やったー!」

CICに歓声がこだました。

「よし、菊川3佐オペレーション終了」
「了解、オペレーション終了。艦長、管制訓練成功です!」
「ごくろうさん、真喜志1尉、きみさん。お見事でした」

二人は揃って敬礼した。

 

「では引き続きスクリーン管制だ。ひなさん、ナッキー」
「はい、」

二人がスクリーンの前に進み出ると、ゆきかぜ周辺で演習中の

護衛艦が映し出された。

 

「よし、模擬ターゲットを追ってみようか」
「了解、」

二人は順に他艦の模擬ターゲットを追いかけ始め、画面には

目の前で爆発するミサイルの映像が大写しになった。

 

「おー!凄いな」

CICにはリアルな映像に食い入るオペレーター達の歓声が

飛び交った。
「うーん、リアルタイムでこれだけの映像が見られるなら

それだけで大きな戦力だな」

大田が感心して小林を見た。

 

「そうだな。俊之、この映像は何処まで見られるんだ?」
「SPY-1レーダーの探知範囲、450kmまでOKだ」
「ほー、じゃあもうオペレーターも要らないな」
「幸平、これは真喜志1尉達の精神集中でやってるんだぞ。

出来れば使いたくない、彼女達の体力もギリギリなんだ」

 

「そうか、あくまで切り札なんだな」
「よし、今日の演習はここまでだ。ひなさん、ナッキー、

明日は二人が管制訓練だ」
「はい、分かりました」

ひなとナッキーが同時に敬礼した。

 

「艦長、本艦の演習終了します」

小林が梅田を見た。
「よし、他艦にも伝えておけ」
「了解しました、他艦に連絡します」
CICの緊張が解け、立ち上がってスクリーンを見つめていた

オペレーター達も席に戻った。

 

その時、緊急回線が点滅した。

「艦長、緊急回線!チームコールで入っています」

菊川が叫んだ。
「何、東京からか?」

大田がキャプテンシートの梅田を振り返った。
「こちらに回せ」
「はっ!」

 

「うん?西日本で…」

梅田が首を傾げた。

 

「艦長、東京から何と?」
「西日本全域でエレカーにトラブルだ、発電機もダウン

しているらしい」
「西日本全域で?俊之、西日本上空に異常はあるか?」

小林が叫んだ。

 

「未確認機は無い、航空トラブルではないな。電波状態も普通だ」
「真喜志1尉、何か感じるか?」
「いえ、何も。敵対的な思念は感じられません」

 

「洋一、外電だ!韓国、中国も発電機がダウンしている!」

 

「そうか、衛星だ!艦長、発電衛星に異常があったと思われます!」
「小林2佐、官邸に確認せよ」
「了解!」
「何?どうしたの、停電?」

なっちがぽつりと呟いた。
「なっち!」

 

「宇宙の発電所がトラブったみたいだな」

大田が腕組みした。

「第1配備発令、全艦対潜対空警戒を厳にせよ」

梅田の号令でゆきかぜは準戦闘配備に入った。

 

 

唐突に訪れた異変に、クルー達の緊張は徐々に高まっていった。

 

                                     つづく