「艦長、官邸からです」

小林が官邸からの連絡を取り次いだ。

 

「代わりました梅田です、利倉さん」
「梅田艦長、そちらでも外電を受信したと思いますが

そのまま日本海に入って下さい。

我々の観測ではGGへの侵攻は陽動だと思われます」

 

「陽動ですか?GGに入ったのはどれくらいの戦力ですか?」
「ロシアの歩兵2個師団、戦車2個大隊ですね。普通にいけば

数日で全土を占領するでしょうが、部隊の前進は国境から

10km地点で止まっています」

 

「ロシアは、この紛争に世界の目を引き付けるつもりだという

事ですか?」
「そう思われます」
「では、本当の狙いは何処に?」
「現在モスクワが音信不通になっています、わざと無電封鎖

しているのかも知れませんが、ひょっとしたら例の現象の

可能性もあります」

 

「モスクワでクーデターですか!」
「分かりません、アメリカからも何の情報も来ていませんので。

ゆきかぜは日本海に入って待機して下さい、既に横須賀と

佐世保からは米艦隊が出撃しています」
「分かりました、今後はチームコールで連絡します」
「お願いします、梅田艦長」

 

「艦長、利倉さんですか?」
「うん。現在モスクワが通信途絶している」
「艦長、まさか…」
「詳細は不明だ、今後は官邸からの直接連絡を仰ぐ。

本艦はこのまま日本海に進出する」

「了解、日本海に入ります」
ゆきかぜは対馬海峡を超え日本海に入った。韓国からは

イージス艦が出撃して後を追ってきたが、しばらくすると

反転して引き上げていった。

 

「艦長、韓国艦反転しました」
「よし、コースこのまま」
「了解、コースこのまま」
「艦長、間もなく隠岐を通過します。舞鶴に向かいますか?」

 

「隠岐を通過後北上する。本艦は公海上で待機する」
小林が驚いて梅田を見た。
「艦長、ウラジオのロシア艦隊ですか?」
梅田は無言でうなずいた。

 

その間にも世界の外電はモスクワの音信不通を大々的に

取り上げ様々な憶測が乱れ飛んでいた。

 

「艦長、モスクワが陸軍のクーデター部隊に制圧されPT首相

が拘束されたとの事です」
「小林2佐、今後未確認情報は全て無視しろ。この状況下では

ブラフ合戦になる可能性が高い、官邸からのチームコールのみ

伝えろ」
「はっ、了解しました」

 

「全艦戦闘配備」
「了解、全艦戦闘配備。これは演習ではない、全艦戦闘配備」

 

                                   つづく