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「利倉さん、日本側の査察団の人選はどうなる でしょうか?」
「まあ常識的には技本と科学技術庁から専門家を 派遣する事になるでしょう、官僚以外の民間からは 出しようがないですね。安倍さん、ゆきかぜには?」
「昨日、梅田艦長に連絡しました」 九州周りで日本海に入るとの事です」
「一応、舞鶴基地寄港という事にしましたが、これで 実質イージス艦3隻が出動態勢になります」 ゆきかぜが日本海に進出するというのはあり得ない 話ですからね」
「まあ、能力者部隊というのは海自の中でも機密事項 ですから。ゆきかぜには他の護衛隊との接触も禁じて あります」 したら却って危険です」 一方のゆきかぜは太平洋を西に航行し、鹿児島沖に 差し掛かっていた。
「艦長、佐多岬を通過、東シナ海に入ります」 小林が梅田を見た。
「よし、黒島を通過したら北上して長崎方面に向かう、 コースこのまま」 CICのキャプテンシートに腰を下ろした梅田が指示を出した。 小林が復唱した指示はそのままブリッジに伝えられた。
既にCICに取り付けられた大型スクリーンの左には 真喜志1尉、正面後方にはきみとなっちがスタンバイ していた。
スクリーンには遠方に黒島が捉えられている。 梅田がなっちに声をかけた。 なっちがスクリーンを見つめると途端に画面がズーム アップされ、黒島の詳細な画像が映し出された。
「艦長、ブリッジの連中より我々の方がよりリアルな画(え) を見られますね」 小林は満足気に梅田を見た。 喜ばしいがな」
「艦長、今日の宣言からすると、やはり敵はロシアですか?」 とっての敵国というものは存在しない」 向かいますか?」
「うん、この辺りでうろうろしているとそれだけでノーザン や韓国を刺激しかねないからな、ノンストップで行こう」 菊川が顔を上げた。
「早いな、よし、コースこのまま、速度このまま」 を進むぞ」
その時、小林のモニターが反応した。 梅田が小林を見やった。
「艦長、ロシア国境で衝突です。カスピ海西方のGG共和国 にロシア軍が侵攻中」 梅田は携帯端末のモニターに上がってくる外電に食い入った。
GG共和国は元々旧ソ連の一部で1991年に独立していた がカスピ海油田からの原油をトルコやヨーロッパに送るパイプ ラインが国内を通っており、ロシアにとっても石油戦略上の 重要な地域となっていた。
「GG共和国の独立派の迫害を非難しての侵攻か…」 GGを占領出来ればそれはそれでロシアとっても利益に なる話だ。小林2佐、官邸に連絡しろ」 国境紛争はその後梅田達が予想もしていなかった方向 に拡大していく事になった。
しかし、この時はゆきかぜの、そして日本のだれもが そこまでの想像力を働かせる余裕は無かった。
つづく |