「しかし艦長、敵潜がウラジオを攻撃したというのは?」

菊川が梅田を見た。

 

「最早あの敵潜はロシア軍ではないという事だ。能力者

勢力による反乱、事実として受け止めねばならんな」
「艦長、官邸からチームコールです」

小林が振り向いた。

 

「代わりました、梅田です」
「利倉です。梅田艦長、モスクワが反乱勢力に制圧された

ようです。既にロシア全土が内戦状態に陥っています」

 

「それは、アメリカからですか?」
「はい、総理は非常事態の演説を行いました。既に自衛隊

には防衛出動が指令されています」

 

「そうですか、米軍の動きは?」
「各地の米軍基地が対核戦略による非常体制に入ったようです

日本政府にも事前通告がきました」

 

「総理は?」
「何も回答していません。艦長、自衛隊はあくまで日本政府の

指揮で動いて下さい。と言っても現状で動けるのはゆきかぜ

だけです、米軍の動きは気にせず我々からの指示を待って下さい」

 

「分かりました。我々はこの海域で待機します、ロシア軍の

動きがあれば連絡をお願いします」
「分かりました。…あっ、艦長、ちょっと待って下さい…」

 

「艦長、どうしました?」

小林が梅田を振り返った。
「何かニュースが入ったらしい、官邸もかなり騒がしくなってるな…。

はい、梅田です」
「あっ、失礼しました。艦長、今、総理宛に大統領からホットライン

が入りました」

 

「大統領から?」
「はい、宇宙ステーションに向かっていたシャトルが…」
「はい?利倉さん、よく聞こえませんが」

 

「艦長、シャトルが爆破されました」

 

「何ですって!シャトルが…利倉さん、そのシャトルには

能力者部隊が乗っていたのでは?」
「そうです、敵のエスパー部隊も宇宙に出ているようです」
「…」

 

「艦長、総理がお話したいとの事です」
「はっ、分かりました。…はい、梅田です」
「梅田艦長、やっかいな事になりました」
「はい。」
「OB大統領から日本側の能力者部隊の協力を要請されました」

 

「何です?我々のですか?」
「はい、アメリカの部隊はロシアと国内の押さえで手一杯に

なっているとの事です、さっきのシャトルの撃墜で宇宙空間

の主導権を敵に握られたようですね」
「それで、こちらの部隊をという事ですか?」

 

「はい、最低2名出して欲しいと」
「2名…」

 

「艦長…」

小林が立ち上がった。

 

「総理…分かりました、人選はお任せ下さい」
「ありがとう、梅田艦長。2名はアラスカに向かわせて下さい」
「それは、給油無しにはとても」
「既にハワイから空母が中間点に向かっています、給油はそこで」

 

「総理、それは!…分かりました。30分後に出発させます」
「艦長、感謝します。米軍には特別にゆきかぜのチームコール

を通知してありますので、識別の問題はそれで」
「はっ、了解しました」

そのまま梅田は無線を切った。

「艦長、官邸は何と言ってきたんですか?」

小林が梅田に詰め寄った。

 

梅田はゆっくりと立ち上がった。
「副長、命令を伝える」

 

 

梅田のただならぬ表情に、小林は異変の重大性を

感じ取っていた。

 

                                 つづく