|
ロッカールームでパイロットスーツに着替えた きみと美弥子は、後部甲板に上がった。
既にオスプレイ改良型戦闘機はメカニックによる チューンアップを終え、二人の搭乗を待っていた。 その機体の前では、見慣れた人物が笑顔で手を 振っていた。
「美代子さん!来てくれたんですか?」 医務室で黙って座ってる訳にはいかないわよ」
「わざわざありがとうございます、百瀬1尉」 きみが頭を下げた。
「何水臭い事してんのよ!きみさん、あんたの 気持ちは良く分かってる。他のだれよりもね」 そう言うと美代子はきみを抱きしめた。
「あっ、あの、ここに一人いますけど…」
「いえ、決して忘れていませんよ。神食満さん、 いろいろ良くして頂いてありがとうございました 百瀬1尉に連絡して下さったのも神食満さんでしょ」
「えっ、いえどうも。ボクにはこれくらいしか出来る事が ありませんから」 美弥子も頭を下げた。
「真喜志1尉、ボクからこんな事を言うのは何だけど。 美奈子さんや島の人達はあなたの事を心配しているよ いや、心から会いたがっている」
「分かっています。姉にもいろいろと話して下さったん ですね、感謝しています。 でも、今はどうする事も出来ません。もし、この任務が 終わって生きていられたら」
「美弥子!あんたはこんな事で死にはしないの、きみさん と一緒に必ず戻ってくるのよ。そして大手を振って久高島 に帰るの、お姉さんはあんたを待ってる、暖かく迎え入れて くれるわよ」
「ありがとうございます、美代子さん…」
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」 きみが美弥子を促した。 二人は揃って敬礼した。
「よし。女は度胸だ、思い切ってやってこい!」
「あっ、小林さん…」 きみが驚いて小林を見た。
「あー、間に合った!」 シャキッとしなさい」 小林が美代子に敬礼した。
「CICはよろしいのですか?」 きみが小林を見た。 ゆきかぜの副長として二人を見送ります」
「へー、艦長も良いとこあるわね、たまには(笑)」 美弥子が美代子を睨んだ。 小林がきみを見つめた。
「…」
「あーもう、じれったいわね!」 美代子がしびれを切らして叫んだ 「戦いが終わったら結婚しよう、とか何とか言わないの? きみさんもう飛んでっちゃうよ!」
「あっ、いや、自分はその…」 ゆきかぜも海の底だわ」 美弥子が美代子の袖を引っ張った。
「きみさん、どうか無事で。一緒に行けない自分が情けない」 ひなちゃん達をよろしくお願いします。」
「じゃあ、そろそろ…」 美弥子が伏目がちに小林を見た。
二人は揃って敬礼しオスプレイに乗り込んだ。メカニックが 機体から離れ、オスプレイはゆっくりと甲板上を動き始めた。
小林達三人は整列して敬礼した。コクピットのきみと美弥子 も敬礼を返した。やがて左右のローターが回転し始め機体 はゆっくりと上昇していった。
「美弥子ー、必ずここに帰って来い!」
美代子の叫びを後に、オスプレイは東方に飛び去っていった。
つづく |