シャトルの前方には発電衛星E560が見えてきた。

 

それは1976年火星上空で発見された第3衛星M3の

テクノロジーをベースにアメリカが30年の歳月をかけて

開発した巨大人工天体であった。

 

全長は1.5kmの円筒形で表面の巨大な集光ミラーで

太陽光を衛星の内部に取り込み、ソーラーパネルで発電

した電気をレーザー波に変換して地球を取り囲む20基

中継衛星に送り、更にそこからマイクロ波に変換された

電波が地上へと送られていたのだが、今その機能を停止

して中の状況は全く分からなくなっていた。

 

「これがステーションから貰ったE560のデータよ、侵入口

はこの両端の直径100mの平面エリアに4ヶ所づつ。

シャトルを3分間横付けさせて私とミヤコ、キミが侵入する。

 

シャトルはマイクに預けるから100kmの距離を保って、

ミッションが成功したらテレパシーを送るわ。もし24時間

経過して私達からの連絡がなければステーションに戻って

ノーラッドの指示を仰いで」

 

「OK。ジョディ、無理しないでね」

マイクがうなずいた。
「分かってる。あんたもしっかりね、もしもの時はシャトルと

ステーションの安全はあんたに掛かってくるのよ」
「了解」

マイクは敬礼したままウィンクした。

 

「よし、キミ、ノーマルスーツは良い?」
「ええ、OKよ」

きみはそう言うとノーマルスーツ用のヘルメットを装着した。

 

「じゃあマイク、頼む」

ジョディもヘルメットを装着してマイクの肩を叩いた。三人が

シャトルのエアーロック区画に入るとマイクは一気にE560

の進入口に向けてシャトルを突進させた。

 

見る見るうちに衛星が近づき、ジョディ達三人はシャトルを

出て衛星の側面に取り付いた。ジョディはマスターキーを

取り出して衛星の点検用進入口を開けると、きみ達を手招

きした。

 

きみがふとシャトルを振り返ると窓から双子が手を振っていた。

きみは驚いて早く行け、と手で合図したが双子は相変わらず

手を振り続けていた。

 

 

衛星の点検用通路は人一人がやっと通れるくらいの狭さだった。

三人は少し前屈みになりながら一列で進んだ。

 

「えーっと、ここからゲートがあと3ヶ所よ。施設自体がデカイから

警戒も手薄なようね、ミヤコ、敵の気配を感じたら一気に行くよ」
「OK、きみさんは何か感じる?」
「いえ、何も。ひょっとしたら、敵の数はそれほど多くないのかも

知れないわね」

 

やがて、三人は最後のゲートを潜った。内部の衛星推進施設に

通じる細長い廊下に出ると、ジョディが立ち止まった。

 

「どうしたの?」

美弥子の問いかけにジョディは前方を指差した。

 

「あー、あれか」

ジョディが前方を凝視すると鈍く格子状に輝く電磁スクリーン

が浮かび上がった。

 

「電気がたくさん使えるからって、原始的なネズミ捕りね(笑)」

ジョディは腕組みして美弥子を見た。

 

「どうする?消そうか」
「ダメ、システムに介入したらたちまち警報が届くんでしょう。

ジョディ、解除コードを探して」
「OK」

ジョディは側面のコンソールへステーションで渡されたIDカード

をかざした。

 

「あら、パスだって」
ジョディが振り返った。美弥子がコンソールのキーを叩いて

パスワードを見つけ出した。

「OK、消えたわ。みんな一緒に入るよ」

三人は並んで廊下を進んだ。
「何か防御システムには程遠いね、敵の侵入なんて想定

してないんだろうな。よし、ここを抜けたら施設管理スタッフの

居住区よ」

 

そこから30m程廊下を進んだ三人は施設管理スタッフの

簡易居住区域に入った。

 

「ジョディ、ここには何人のスタッフがいるのですか?」

きみが尋ねた。
「貰った資料では10名ね、3ヶ月毎に5名づつを入れ替える

ローテーションで動いてたみたい」
「それなら結構本格的に暮らしてたんでしょうね」

 

三人はガランとした居住区を歩いていたが同時に立ち止まった。

 

「いるわね、」
「うん、10m先の角の部屋」

ジョディと美弥子がうなずき合った。

 

三人はヘルメットを外した。

 

「フー、すっきりした(笑)行くよ!」

 

ジョディが先頭を切って飛び出した!部屋の前に来るとジョディ

は壁面のコンソールを睨んだ、するとシステムが反応し、ドアの

ロックが解除された。

 

三人は身構えて部屋に入った。その時、薄暗い部屋の中で

一条の光が走った!三人は本能的に身をかわして光源の

方向に飛び込み、一人の人間を組み伏せた。

 

「おとなしくしろ!それ以上暴れたら首をへし折るぞ!」

ジョディの一喝が効いたのか、その人間は抵抗するのを止めた。

 

「分かった、もう抵抗はしないから放してくれ」
「何を利いた風なことを」

ジョディが周囲に視線を走らせると部屋の明かりが点いた。

ジョディにねじ伏せられた男の姿がはっきりと現れた。

 

「あっ、あなたは!」

美弥子が男の顔を見て声を上げた。

 

「あなたは、フォスター大佐ではありませんか?」
「そうです、フォスターです。どうかこの勇ましい女性に

力を緩めるように言って貰えませんか?」

 

「ジョディ、この人はE560の管理責任者のフォスター大佐よ」
「その責任者が何故私達を狙撃するの?答えろ!」

 

「うわー!ちょっと待ってくれ。あなた方を狙撃したというのは

そこに転がっているペンライトの事か?」
大佐はジョディに腕をねじ上げられながら顔をしゃくった。

 

「ペンライト?」

美弥子は二人の傍らに落ちていたペンライトを拾い上げた

ライトは点いたままになっていた。
「これですか?」
「そうだ!そうですウッ…」

 

「ジョディ、放してあげて」

美弥子の言葉にジョディはねじ上げていた大佐の右腕を放した。

 

「あー、助かった。お嬢さんありがとう」
「大佐、説明して下さい。いったい何があったのですか?」

 

 

美弥子の問いに大佐は姿勢を正した。

 

                                    つづく