「分かりました、順を追ってお話します。私はこの衛星の

責任者のフォスター大佐です、ちょうど1週間前に我々は

外国軍の襲撃を受けたのです。あなた方は、合衆国の?」

 

「我々はノーラッドの調査団です、敵との交戦を想定して

潜入しました。大佐、外国軍とは?」

 

「はい、国籍も人種も様々な連中でした。こちらのセキュリティ

を難なくすり抜けて突然侵入してきたのです」
「大佐、他の技師達はどうしたのですか?」

美弥子が大佐を見た。

 

「恐らくこの奥の区画に閉じ込められていると思います、技師の

一人に能力を持っている者がいて日に一度はテレパシーを

送ってくるので、他の技師達も無事だと思います」

 

「能力者の技師!それは」

 

きみが思わず大佐に詰め寄った。

 

「キミ!」

ジョディがきみを制した。

「大佐、その侵入してきた外国軍は今何処に?」
「2日前に全く気配がしなくなりました。それまでは慌しく

動き回っていたのですが、ここから出て行ったのだと思います」

 

「2日前といえば、シャトルが…」

ジョディの表情がこわばった。
「でも顔を見られているあなた方を残して衛星を放棄するのは

おかしいですね…ジョディ!まさか」

 

「ブービートラップ!?大佐、衛星の駆動系をトレース

出来ますか?」
「コントロールブースは無事なはずです」
「コントロールブース、ここね!」

ジョディはIDカードを裏返して場所を確かめた。

「待ってジョディ!それこそトラップかも。私が確かめるわ」

美弥子の言葉にジョディがうなずいた。
「OK!行こう」

 

 

そのまま四人はコントロールブースの方向へ飛び出した、

さすがに無重力訓練を受けていたジョディは壁や天井を

蹴りながらどんどん進んでいった。

そして部屋の前に着いた彼女がコンソールを睨むと横滑り

にドアが開いた。

 

「ジョディ、大丈夫?」
「ここから見る限りはね」
美弥子は部屋の中を凝視した。

 

「うん、敵の気配は無いわね」
「行こう!」

四人はブースに入った。ジョディがコントロールパネルを睨むと

モニターに衛星の駆動システムの系統図が映し出された。

 

「動力、発電、充電、変換系、送信系、居住ブロック、生命維持

装置…システムは異常無いわね。大佐、どこかおかしい所は

ありますか?」

 

「うーん、これを見る限りではシステムに問題は無いですね」
「じゃあ何だろう?…もしかしてアナログな時限爆弾?」
「そこまでは分からないわ。ジョディ、取りあえずの危険は

無いんじゃないかしら」

美弥子がジョディを見た。

 

「大佐、技師達が閉じ込められているのは?」
「このA-4区画です」

大佐がモニターの一角を指差した。

 

「よし、ロック解除だ」

美弥子がモニターを見つめるとA-4区画のロックが解かれて

レッドの画面がブルーに変わった。画面には10個のヒューマン

サインが現れた。

 

「10名ですね、やはり敵はいないようです」

美弥子の言葉にジョディはヒューマンサインの画面を切り替えた

が各々のサインは登録されている技師のデータと一致していた。

 

「うん、データは一致してるわ。あとはフォスター大佐にゲストが

三人か…」
「よし、A-4区画へ行こう」

四人はうなずいて居住ブロックに向かった。

 

 

居住区に着くと既に10名の技師達は部屋から外に出ていた。
「おースコット!無事だったか」

大佐の声に施設主任のスコット技師が駆け寄ってきた。

「大佐!ご無事でしたか」

二人は抱き合って再会を喜んだ。つられて他の技師達も

集まってきた。
「みんな、無事で良かった!」

 

「大佐、その人達は?」

スコットがきみ達を見た。
「ああ、ノーラッドの勇士諸君だ、我々を救出に来てくれた!」
「やったー!助かったー!」

技師達は口々に歓声を上げた。三人は技師達の握手攻めに
あった。

 

「ああ、あなたが!」

きみが声を上げた。一同は驚いてきみを見た。きみは一人の

女性技師に歩み寄った。
「あなたは?」

女性は不審な表情できみを見た。

 

「あなたは黒井ナナさんですね」
「はい…」
「私は日本でひなさんと一緒に暮らしていた者です」
「ひなと!…あなたは?…」

 

「私は黒井きみです、今ではひなさんと姉妹になっています」
「きみさん?…ひなと姉妹って、ひなは、あの子は今どうして

いるのですか!」

ナナはきみに詰め寄った。

 

「大丈夫、ひなさんも私も政府の仕事をするようになって、彼女は

今自衛隊の護衛艦に乗っています」
「ひなが軍艦に?」
「お母さん、私もひなさんと同じ軍艦に乗っていました。元気に

していますよ」

美弥子もナナに語りかけた。

 

「そうですか、元気で…」

ナナはそれ以上の言葉が続かず、その場に泣き崩れた。
「ナナ!」

技師達は驚いてナナの周りに集まった。

 

「お母さん、」

きみは膝を突いてナナの肩に優しく手を回した。ナナは

きみの額に自分の額をつけた。

 

「ありがとう、きみさん。あの子に優しくして下さったのですね

まあ、可愛い妹達までたくさん!ありがとう、本当に。あの子

に何もしてやれなかった親として、お礼を言います」
ナナはきみの両手を握って頭を下げた。

 

「何を仰るんです、ひなさんはずっとご両親を待っていますよ。

一緒に日本へ帰りましょう」
「ありがとう。でも、私も主人も今は…」

ナナは顔を伏せた。

きみは決然と立ち上がった。
「大佐、お話があります」
「キミ!」

 

 

ジョディが驚いてきみの肩に手をかけたが、きみは構わず

話し始めた。

                                  つづく

最終章 「陽光」 EPS:85 破滅のシナリオ