1ヵ月後、きみ達は政府特命官の仕事を終えてクラブM

戻っていた。

 

梅田達ゆきかぜのクルーは、やっと休暇が取れて店を

訪れていた。

 

「艦長、この度は本当にお疲れ様でした」

梅田にビールを注ぎながらきみが微笑んだ。

「ああ、みんなもう何年分の仕事をした事かな?全員特進

ものの働きだった(笑)…ところで小林2佐、貴官の仲人は

任せてくれるのだろうな(笑)」

 

「おおー!(笑)」

梅田の言葉に店内には歓声がこだました。

「えっ?いやその、自分はまだ…」

途端に小林はしどろもどろになった。

 

「ちょっと小林君!次代のチームゆきかぜを担う人物が

そんな腹の据わらない事でどうするの!」
美代子の一喝に小林は益々言葉が出なくなった。

 

「おい洋一、今からそんなんじゃ、一生きみさんに頭が

上がらなくなるぞ(笑)」

大田が面白がってはやし立てた。

 

「バカ、幸平!何言ってんだ」
「おやおや、海自のニューリーダーも形無しですね(笑)

ですが梅田艦長、その大役は五島総理も是非にという

ご希望なのですが」

安倍が梅田に向き直った。

 

「おおー!」

店内にはまた新たなどよめきが起こった。
「ほう、そう来ましたか。しかしこの件に関してはシビリアン

コントロールの影響は及びませんぞ(笑)不肖梅田、必ず

この任務を完遂してみせます!」

 

「ああ、艦長。任務と言われてしまうと総理の指揮権が

発動されますが」

菊川が真顔で応えた。

 

「うっ、そりゃあマズかったな。前言撤回!小林2佐、

長年の付き合いだ、どうかその役俺にやらせてくれ」
「艦長、そりゃあ今度はパワハラになりますよ(笑)」

 

「ワーッ!(笑)こりゃいい!」

大田のおかしな分析に店内は大爆笑になった。

 

「ママ、本当に良かったの?小林さんと結婚したら、

この人達がいつも押しかけて新婚生活どころじゃ

なくなるかもよ(笑)」

 

「もう、ひなちゃん!何て事言うのよ」

きみが顔を赤くしてひなを見た。

 

「ありゃ-?ママが赤くなってる!大変だー!(笑)」

 

「もうー、なっち!バカな事言ってないで水割りお代わりよ」

ナッキーがカウンターから怒鳴った。

 

「でもひなさん、ご両親が見つかって良かったですね」

神食満がウィスキーのグラスを置いてひなを見た。

「はい、でもせっかく戻ってこられたのにまた明日から

NASAに行くんですよ」
「えっ?何故です」

 

「やはり自分達が開発に関わった衛星の事が気になるん

でしょうね。あれだけ苦労したのに、もう学者という人達は

何を考えてるのか分からないですね」

 

「それは、何となく私も分かるかな」

美弥子がひなを見た。
「美弥子さん、」
「私も今回の任務で自衛官になって良かったなーって再確認

したんです」

 

「それはチームゆきかぜの一員になってだろう、真喜志1尉」

小林が美弥子を見た。
「はい!その通りです」

 

「でも久高島の美奈子さんとは?…」

ひなが不安気に美弥子に尋ねた。
「姉も分かってくれました、やりがいのある仕事なら続けなさいと」

「そうだったんですか(笑)」

ひなは安心したようにうなずいた。

 

「ああ、衛星といえば昨日OB大統領が発電衛星の国際管理

を明言しましたね、これからは国連が中心になって地球環境

の保護を推進する事になります」

 

「利倉さん、やっと国連が本来の仕事をする時代が来ますね」

安倍が感慨深そうに利倉を見た。
「ええ、今回の内乱では米露ともに数万の犠牲を出しています。

それを無駄にしない為にもOB大統領の歴史的な決断でしたね」

 

「もう能力者を使った闇の勢力が世界支配を企む事は

無いでしょうか?」

神食満が安倍を見た。

 

「それは分かりませんね、今回人類が得たエネルギーは

莫大なものです。いつの時代にもそれを狙う勢力というのは

現れるものですよ」

 

「その時にはまた我々が出動しますよ。神食満特命官、

ご心配無く(笑)」

大田が敬礼した。
「破壊された中継衛星は新しく作られるんでしょうか?」

神食満はあっさりと話題を変えた。

 

「ありゃ…」

大田はそのまま固まってしまった。
「ええ、来月には新しいE572がインド上空の静止軌道に

配置される予定です」
「ほう。安倍さん、2ヶ月とは対応が素早いですね」

梅田が感心して安倍を見た。

 

「まあインドの依存度も高いですからね、今後の関係も考慮して

アメリカもメンツにかけて急いだのでしょう」

 

「ねえ、E572ってインドの番号なの?じゃあ日本の上に

浮かんでるのは何番?」

なっちがナッキーに尋ねた。

 

「えっ?それは…」
「日本をカバーしてるのはE576だよ」

安倍がすかさずなっちに答えた。

 

「へー、何で日本は576?」
「もう、なっち!」
「これは私の考えだけどね、76は漢字を当てると南無(なむ)だ」
「ナム?」

なっちは首をひねった。

 

「うん、南無というのは元々サンスクリット語のナマスに由来する。

ナマスとは感謝という意味だよ」
「えっ、じゃあ5つの感謝?」
「そうだね、5つというのは」
「あっ分かった!オリンピックでしょ!」

なっちがしてやったりという表情になった。

「ああ、そうかも知れないね。5は人間の基本の数だ、それを発展

させて近代五輪のシンボルにもなっている。日本を含めたアジア

ではこの感謝の気持ちが未来衛星に込められたんじゃないかな」

 

「未来衛星。素敵なネーミングですね」

きみが笑顔で安倍を見た。

 

「私達を未来へ導く太陽の衛星ね」

ひなの言葉に一同はうなずいた。
 

 

(「未来衛星、人間に発せられた太陽からのメッセージだ。

それにどう応えていけるか、」)

神食満は人類がまた新たな課題を背負ったのではないかと

自問していた。
                                                                        未来衛星576 (了)