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漫画ときどき研究者

読んだ漫画と論文の感想を書いていくブログです。
ジャンプを読むように論文を読めるようになることが目標です。

Anchorage of microtubule minus ends to adherens junctions regulates epithelial cell-cell contacts.

Meng W, Mushika Y, Ichii T, Takeichi M.

Cell. 2008 Nov 28;135(5):948-59.

発表用の関連論文その2、理研CDBの竹市研究室 の論文です。
詳しくは日本語のレビュー (@CDB広報)があるのでご覧ください。

さて、上皮細胞(皮膚などのシート状の細胞)は、カドヘリンという分子を介して隣り合う細胞同士が接着し、接着帯という構造を形成しています。
この構造は細胞内の骨格タンパクと結合し、上皮構造の保持に重要です。
これまで接着帯に結合する骨格系としては、アクチンフィラメントに関して研究が進んでいる一方で、微小管についてはその関与は示唆されていたものの、微小管と接着帯を結びつける分子についてはあまり分かっていませんでした。
筆者たちのグループは以前にカドヘリンに結合するp120カテニンが、微小管を介して細胞運動などを制御することを明らかにしており、これを手掛かりに仕事を始めました。

まず、p120に結合するタンパクをpull down→MSで探し、PLEKHA7という分子を見つけます。
さらに、もう一度PLEKHA7に結合するタンパクを探し、Nezhaというタンパクを見つけます。
細かい結果は省略しますが、彼らはNezhaが微小管のマイナス端に結合し、KIF3Cというモータータンパクがマイナス端(つまりはNezhaやPLEKHA7の局在する接着帯)に向かって何か(カドヘリンではないらしい)を輸送しているらしいということを発見しました。
これらの分子の働きが阻害されると細胞の形が扁平になってしまって上皮構造が崩れることから、上皮構造の維持に重要であることも示唆されました。

二回も結合分子のスクリーニングをやるとは。。。
自分には、こういう“気合い”がまだまだ足りんと思わされます。

Genes required for mitotic spindle assembly in Drosophila S2 cells.

Goshima G, Wollman R, Goodwin SS, Zhang N, Scholey JM, Vale RD, Stuurman N.

Science. 2007 Apr 20;316(5823):417-21. Epub 2007 Apr 5.

発表用のネタ の発端となった論文です。
ショウジョウバエのS2細胞を用いて、分裂期のスピンドルの形態を指標とした網羅的なRNAiスクリーニングを行い、多くの分子を同定しています。
こういう風に書くとよくありそうな論文に見えますが、スクリーニングが非常にうまくデザインされていて、本当に勉強になります。
まず、分裂期にある細胞の割合を増やすためにCdc27のRNAiをかけた状態でスクリーニングを行っています。
また、細胞を96 well plateに捲いてDNA、γ-tublin、微小管の染色を行い(これは手作業のはず)、その後はロボットを使って自動で細胞の写真を取り、さらにそれをランダムにコンピュータの画面上に並べてくれます。
それを見てバイアスなしで表現型の判別ができるわけです。
さらに、ヒトの眼で見て判断するだけでなく、画像解析から8つのパラメータの値を算出させて、それを元に“定量的に”表現型を判断するという試みも行っています。

ともかくそうしたスクリーニングの結果、本当に多くの新規分子を同定でき、いくつも面白い結果を提出しています。
γ-tubulinのスピンドルへの局在に必要な一群のタンパク質(dim γ tubulin; Dgt)の発見、centrosomeの正確な分離にタンパク質分解系が必要であること、などなど盛りだくさんです。
その一つとして、RNAiでスピンドルが短くなる一群の遺伝子(short spindle; Ssp)を発見しており、そのうちのひとつのSsp4のRNAiにおいて微小管の切断が劇的に増え、遊離した微小管が見られると主張しています。
発表用の論文 で、結局のところこの推測は間違っていて、微小管のマイナス端が不安定化していることが原因であると示されるわけです。

数年ぶりに読みなおしたのですが、改めてすごい論文だと実感しました。


Patronin Regulates the Microtubule Network by Protecting Microtubule Minus Ends

 

Goodwin SS, Vale RD.

Cell. 2010 Oct 15;143(2):263-74.



え~発表のネタを変えることにしました。

ぎりぎりまで粘ってCell誌をチェックしたおかげで、面白い論文に出合えたもので。



さて、紹介するのは、有名なValeラボ の論文です。

細胞骨格のひとつである微小管に関する研究の歴史は古く、すでにほとんど分かっているようなイメージを持っていましたが、実はまだまだ未解明な部分が残っているそうです。

そのひとつが、微小管のマイナス端についてです。



微小管は名前の通り“管(くだ)”なのですが、“根元(マイナス端)”と“先端(プラス端)”という極性を持っています。

これまでに、プラス端に結合する分子は多く見つかっており、微小管のダイナミクス(重合、脱重合、“崩壊”などなど)を制御することが分かっていました。

それに対して、マイナス端に結合するタンパクは、(多くの細胞ではマイナス端はMTOCにアンカーされていることもあって、)ほとんど明らかになっておらず、ましてやそのダイナミクスがどうやって制御されているかはほとんど明らかになっていませんでした。



筆者たちはショウジョウバエのS2細胞を用いた以前のスクリーニング(現在名古屋大学の五島さん の論文です)で同定したssp4(short spindle phenotype 4)という分子に注目し、これが実は微小管のマイナス端に結合してKinesin-13による脱重合を(競合的に)阻害していることを示しています。

つまり、微小管のマイナス端を“cap”して保護しているようなイメージです。

で、この機能から、この分子を“Patoronin”と名付けています(protectorの意味のラテン語、patronusより)。



in vivo, in vitroのどちらのデータも美しく、非常に面白かったです。

むしろあまりにデータが多くて、何が言いたいのかいまいち理解できないデータもありましたが、私の読み込みが足りないんでしょう。


と、最後のほうまでは大興奮だったのですが、、、Discussionで衝撃の事実が判明してしまい。。。

実は、この分子、哺乳類のNezhaという微小管のマイナス端に結合する分子のホモログ(相同な分子)であるそうで、ってことは新規分子じゃないってことで。。。。

しかも(もし機能的にも相同ならば、)Nezhaも含めてPatoroninに名前を変えた方が良いとか書いちゃってますし。。。。。

Nezhaを発見したラボもかの有名な日本の大御所ラボですので、こういうのって後々問題を引き起こしたりしないんですかね。


くわばらくわばら、といったところですが、論文自体はやぱり面白いので、Nezhaの論文(2つ)と合わせて発表することにします。