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漫画ときどき研究者

読んだ漫画と論文の感想を書いていくブログです。
ジャンプを読むように論文を読めるようになることが目標です。

先週自分のらぼの発表が終わったというのに明日は研究科の授業での発表です。
しかも英語なんです(;´Д`) うぅっ。。
まあやるしかないんでとりあえず頑張りますか。

で、紹介する論文は、

A genetically encoded photoactivatable Rac controls the motility of living cells.

Wu YI, Frey D, Lungu OI, Jaehrig A, Schlichting I, Kuhlman B, Hahn KM.

Nature. 2009 Sep 3;461(7260):104-8. Epub 2009 Aug 19.

細胞運動などを制御するRhoファミリーGTPaseの一つ、Rac1の活性を、光で操作する方法を開発した論文です。
Hahn labはFRETの開発などでも有名なラボですね。
昨年の論文なのでちょっと古いですが。

分子生物学の教科書には、“
Aというタンパクが活性化してXXXという現象が起きる”とか書いているわけですが、この記述には、“いつ”、“どこで”、ということを無視しています。
こういった“時空間的制御”は実は非常に重要なのですが、技術的に難しかったためにあまり多くのことは分かっていませんでした。
最近、タンパク質の活性を細胞の中で“計測する”技術(例えばFRETなど)が発展して、だんだんと“いつ”、“どこで”、という情報が明らかになってきました。

で、次のステップとして、あるタイミングで狙った場所だけでタンパク質を活性化し、提唱された仮説を検証していくことが重要になってきます。
そんなことできるのか?と感じるかもしれませんが、この技術もどんどん発展してきていて、ついに生きた細胞の中で十分使える技術が発表されました。
それが今回の論文です。

具体的にはRac1(の常時活性型orドミナントネガティブ型)に、光で開く“カバー”をつけます。
具体的にはLOV domain-Ja helixという光で構造が変わるタンパクをRac1につないでいます。
光が当たっていない状態では、カバーがかかっているため、このRac1は機能を発揮できません。
従って、細胞の一部分に光を当てると、当てた時にその場所にある分子だけカバーが外れ、Rac1の活性の変化(常時活性型の場合は活性化、ドミナントネガティブ型の場合は不活性化)が起きます。

ともかくこの技術を使って、細胞を狙った方向に移動させることに成功しました。
あとはRac1の活性化によってRhoAが不活性化するかとか、今まできちんと検証できなかった問題を調べています(これ自体はそんなに新しいことではない気がしますが)。

すでにショウジョウバエと線虫では実用化されている技術なので、生体内でも問題なく使えそうです。
今後も発展していくであろう、“光操作”業界のパイオニア的論文でした。

追記: 最近ご無沙汰のマンガのれびゅーも、書きたいものがたくさんあるので、時間ができ次第順次upしていきます。

訂正とお詫び: PA-Rac1の応用例ですが、ショウジョウバエとゼブラフィッシュでした。(線虫ももうそういう論文が出てるかもしれませんが。。。)
何とか発表も終わり、ようやく実験ができるかと思いきや、たまっていたデータ整理に追われています。
というかデータ整理をするのが面倒になって、自動にやってくれるプログラムを作っていたのですが、先週の金曜日から始めてようやく何とか動くものができました。
まあプログラムを作っていた1/10くらいの時間でデータ整理は終わるはずだったんですが(;´Д`A ```

私は共焦点顕微鏡(Nikon)を使って三次元画像を撮っているのですが、印刷などのために二次元に投影した“スタック画像”を作らなければなりません。また、私が顕微鏡で撮っているサンプルは大きいため、一視野では収まりません。そこで視野をずらしながら何枚かに分けて撮って、後からphotoshopのphotomerge panoramaという機能を使って張り合わせて“パノラマ写真”を作っていました。そこで、①元の三次元画像を二次元にスタックしてtif形式で保存し、②それらを一枚のパノラマに張り合わせて保存する、という操作を自動化することを試みました。
需要はほぼゼロに等しいとは思いますが、ようやくできて興奮しているのでupしてしまいます。
また、プログラムはCを昔に独学でかじったことがあるだけなのでかなり変だと思いますが、ご容赦くださいませ。

ともかく備忘録&(ほとんどいないとは思いますが)同じような単調作業をやっている人のために以下に方法と作ったプログラム(マクロ)を書いておきます。

まず、ImageJ をベースにしたフリーソフト、Fiji をダウンロードします。
で、Nikonの画像は特殊なので、開くためにIcs_Opener.jarをダウンロードして、Fijiのpluginsフォルダに置いてください。
また、一番下のマクロをコピペして、Fijiのmacroフォルダに置いておきます。
次に、一枚に張り合わせたい画像(の元ファイル)を一つのフォルダにまとめ、それらをあるフォルダの中にまとめて置いておきます(図1)。
で、Fijiを起動し、Plugins -> Macros -> Runで先ほど保存したマクロファイルを指定します。
すると、作業フォルダを聞いてきますので、大元のフォルダ(図1ではtest)を指定すればokです。
あとは自動的にフォルダ内をスキャンして、パノラマ画像を(フォルダ名を名前にした)tif形式で保存してくれます(図2)。

漫画ときどき研究者-図1 漫画ときどき研究者-図2

*******以下マクロです*********************************************************

dir = getDirectory("Choose a Directory"); //作業フォルダを選択
folderlist = getFileList(dir);
for(i=0; i<folderlist.length; i++){
//print(folderlist[i]);
FolderName = folderlist[i]; //フォルダ情報をすべて取得
Name = File.getName(dir + FolderName);
list = getFileList(dir + FolderName); //作業フォルダ内のファイル情報をすべて取得
count=0;
for(j=0; j<list.length; j++){
if(endsWith(list[j], "ics")){ //icsファイルの時のみ以下の操作を行う
run("Open...", "path=" + dir + FolderName + list[j]);
name = my_nameWithoutExtension(list[j]); //拡張子を取り除く
selectWindow(name + " ch: 2"); //488のチャネルの画像を選択
run("Z Project...", "start=1 stop="+nSlices+" projection=[Max Intensity]");
run("8-bit");
saveAs("Tiff", dir + FolderName + name);
//run("Close");
for(k=1; k<5; k++){ //stack前の画像を閉じる
selectWindow(name + " ch: "+k);
run("Close");
}
if(count==0){
name0=name;
}
else if(count==1){
run("2D Stitching", "first=["+name0+".tif] use_channel_for_first=[Red, Green and Blue] second=["+name+".tif] use_channel_for_second=[Red, Green and Blue] use how=5 create create Method=Max. Intensity fused=[Merge-"+count+".tif] compute_overlap x=0 y=0");
selectWindow(name0+".tif");
run("Close");
selectWindow(name+".tif");
run("Close");
}
else{
run("2D Stitching", "first=["+name+".tif] use_channel_for_first=[Red, Green and Blue] second=[Merge-"+count-1+".tif] use_channel_for_second=[Red, Green and Blue] use how=5 create Method=Max. Intensity fused=[Merge-"+count+".tif] compute_overlap x=0 y=0");
selectWindow(name+".tif");
run("Close");
selectWindow("Merge-"+count-1+".tif");
run("Close");
}
count+=1;
//print(count);
}
}
selectWindow("Merge-"+count-1+".tif");
saveAs("Tiff", dir + Name);
print("ok");
run("Close");
}

//拡張子を取り除く
function my_nameWithoutExtension(str){
n = lastIndexOf(str, ".");

if(n>=0) rstr = substring(str, 0, n);//拡張子が存在する場合
else rstr = str;//"."拡張子が存在しない場合

return rstr;
}

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関連論文もいくつか読み終わり、研究の背景も大体つかめたので、論文紹介の主論文 を読み直します。
ショートバージョンと私個人の感想は以前のエントリー をご覧ください。
専門用語も増える上に、長文になってしまうと思いますが、ご了承ください。

ショウジョウバエの培養細胞(S2細胞)を用いた、以前のスクリーニングで得られたPatroninという分子のRNAiによるノックダウン (特定のタンパク質の量を減少させること)を行うと、freeの微小管を持つ細胞が増えることを発見しました。
ここで、freeの微小管とは顕微鏡観察で両端がはっきり確認できる微小管のことです。
ちなみに微小管はGFP-tubulinで可視化しています。

この原因として、以前の論文では微小管の切断が増えていると推測していたのですが、実際に経時観察をしてみても微小管の切断は見られない。さらには、微小管を切断するタンパク質も同時にRNAiでノックダウンしても、Patroninのノックダウンによるfreeの微小管の増加を抑えることはできませんでした。以上のことから、微小管の切断以外の“何か”が起きていることが示唆されました。

では、何が起きているのか?
彼らはfreeの微小管の“動き”に注目します。freeの微小管はプラス端が先頭でマイナス端が後端になった形でまっすぐ動いていることに気付きました。強く光を当てて蛍光分子を褪色させる(photobleachと言います)方法を用いてfreeの微小管の一部分をマークして経時観察を行ったところ、マークした領域はマイナス端からプラス端へ向かって動いていく様子が観察できました。この結果は、freeの微小管の動きは、プラス端が伸びながらマイナス端が削られていく、“トレッドミル ”と呼ばれる現象であることを強く示唆します。通常の細胞では、プラス端は伸びるものの、マイナス端は削られていかないため、筆者らは、“Patroninのノックダウンでは微小管のマイナス端が不安定になっている”という仮説を立て、この仮説を検証していきます。

次に筆者らは、微小管の端を“削る”分子である、Kinesin-13と総称されるタンパクたちがマイナス端を削っているのではないかと考えました。実際に、ショウジョウバエに3つあるKinesin-13のうちKlp10Aという分子をPatroninと同時にノックダウンすると、Patronin単独のノックダウンで見られた、トレッドミルを行うfreeの微小管が見られなくなりました。また、Patroninをノックダウンした細胞でKlp10A-GFPを発現させてその局在を調べたところ、freeの微小管の後ろ側(つまり削られているマイナス端)に局在していることが確認できました。

それではPatroninも本当にマイナス端についているのか?抗体染色(ノイズが多いorz)やGFP-Patroninの観察から、一応微小管のマイナス端らしきところ(正確にはmicrotubule-nucleating center)にも局在することを示します。

ここで筆者らはin vitroに系を移してより詳細な解析を行います。こういった実験に詳しくないこともあるでしょうが、ここからが個人的に感動したところです。彼らは、カバースリップの上にGFP抗体を介してGFP-Patroninをくっつけ、そこにrhodamineで標識した(安定化した)微小管を加えて観察しました。その結果、微小管は一方の端のみがカバースリップに固定された状態で空中向かって伸長していく様子が観察できたのです。さらには微小管のプラス端に向かって動くkinesinも加えるとPatroninは動きの先端に、マイナス端に向かって動くdyneinを加えると動きの後端に存在することから、確かにPatroninは微小管のマイナス端にくっついていることが示されました。(ここのロジックは一見分かりにくいですが、ちょっと考えると分かります。)

最後に、本当にPatroninはKlp10Aから微小管のマイナス端を守ることができるのかを調べます。カバースリップに微小管をくっつけておき、そこにKlp10A(正確には亜熱帯マラリア原虫にあるKlp10Aの相同な遺伝子; MCAK)を加えると、微小管が両端から削られていきます。一方、さらにここにPatroninも加えると、マイナス端側からの分解のみが抑えられます。以上の結果から、確かにPatroninは微小管のマイナス端に結合してKlp10Aによる分解を抑えていることが示されました。

やっぱりちゃんと(?)論文を読むと疲れますね。
読んでるうちに調べなきゃいけない論文がまたいくつか出てきたので、午後はそれも読まなくては。。。
にしてもスケジュールを勘違いしてていくつか実験を組んでしまったのがまずかった。。。
発表まであと2日しかないのだが、実験をしながらで準備がまにあうのだろうか。。。。
まあとりあえずおいしいご飯でも食べて、現実逃避リフレッシュしてきます。