L1 retrotransposition in neurons is modulated by MeCP2.
Muotri AR, Marchetto MC, Coufal NG, Oefner R, Yeo G, Nakashima K, Gage FH.
Nature. 2010 Nov 18;468(7322):443-446.レット症候群 という病気をご存知でしょうか。
この病気では、生後に発症する進行性の神経疾患で、未だに有効な治療法がない病気です。
現在までに、MeCP2という原因遺伝子が同定されており、世界的に精力的に研究がおこなわれています。
MeCP2はDNAのメチル化酵素で、一般的にはメチル化した付近にある遺伝子の発現を抑える効果があると言われています。
従って、MeCP2がなくなると、色々な遺伝子の抑制がはずれてしまうので、確かに色々と良くないことが起こりそうに思えるのですが、具体的に何の抑制が外れてしまうのかはあまり分かっていなかったようです。
筆者らは、その候補の一つであるLINE-1というトランスポゾン に注目しました。
neural stem cellでのLuciferaseレポーター実験とマウス個体を用いたEGFPレポーター実験から、確かにMeCP2がなくなるとL1トランスポゾンが移動しやすくなる(i.e. 抑制が弱くなる)ことを確認しました。
また、L1トランスポゾンがゲノムにどれくらいの数(コピー数)入っているかをqPCRで調たところ、これも確かに増えていました。
さらには、ヒトのレット症候群の患者さんの細胞から作ったiPS細胞を用いて、実際にヒトの患者さんでもL1トランスポゾンの移動が増していることが示されました。
ただし、これがレット症候群の原因なのか、それとも単なる病気の二次的な効果なのかは分からないと議論しています。
まあそれが示せていないからarticleではなくletterなんでしょうが。
こういう研究が出てくると、iPS細胞の意義を改めて認識することができますね。
これからは、こういう病気のモデル動物の研究では、当たり前にヒトのiPS細胞を使った実験も求められるようになってくるんだと思います。
