私は、声のする方へ近付くと、
おじいさんも近付いて来て、

「元気だったね?ずいぶん探したんだよ。名前を聞いてなかったから、お父さんの会社に電話してもらって、このくらいの歳のお嬢さんがいる人で…とか言ってね。結構いるんだよね。こんなにかかっちゃいました。ははは…」
と言ってニッコリ笑った。

「そうだったんですね。ありがとうございます。もう、逢えないかと思いました。逢えてよかったです」
と言うと、

「この子が、僕のキーボードをお母さんに聞かせたいって言ってくれたのが、すごくうれしくってね。ずっと願いを叶えてあげたいと思ってたんですよ。」
と、父と母に話してくれた。

あれから、病気をして入院して、あの楽器店に行けなくなったらしい。

「今は、もう大丈夫なんですか?」
と聞くと

「うん、見ての通り元気になりました」
と言って笑った。
おじいさんは、七年前と全く変わってなく、病気をしてたなんて思えないほど元気だった。


「今日は、楽しんで帰ってくださいね。聴かせる様なものじゃないけどね」
と言って手を差し出した。

広いホールの真中に、真っ白なクロスのかかったテーブルがあり、椅子が三つおいてあった。






その後、秘書の方より連絡があり

おじいさんの会社で経営しているホテルで、食事会をかねて会うことになった。


私は、おじいさんが私をおぼえていてくれたこと、元気でいてくれたこと、

何より探していてくれたことが、すごくうれしかった。




再会の日・・・

招待された父と母と私の3人で出かけた。

シンピジュームの鉢植えを持って・・・


ホテルに着いて、ロービーで


「すいません、中尾さんにお会いすることになってる○○ですが・・・」

と言うと

「はい、中尾から伺っております 。 ご案内致しますのでお待ちください」

とすばらしい笑顔で対応された。


奥から、担当の方らしい男性が出てきて

「中尾がホールの方で待っておりますので、こちらへどうぞ」

と案内され、


大きなホールの前に来ると、

「こちらでございます」

とドアを開けてくれた。


それはそれは、大きなホールで

天井には、大きくてきれいなシャンデリアがキラキラと輝いていた。


薄暗い部屋の中から、

「今日は、来てくれてありがとうございます」

とおじいさんの声がした・・・




七年の間…

おじいさんにいつか逢えるだろうと通ったが、全く逢えなくなってしまった。
楽器店の方に訪ねたが、
「この頃、お見掛けしなくなりましたね」
と残念そうに言われて、
病気になったんじゃないか…などと店長さんと話して、いっぱい不安になった。

よく考えると名前も知らない、会社はわかっていても、そんな事で電話するのも申し訳ないし…
もっと詳しく聞いていればよかったと後悔した。

それから、二年三年と月日が流れて、あの楽器店のスタッフも全て入れ替わり、おじいさんの情報を聞ける術をなくしてしまい諦めるしかなかった。

どんどん時が流れて、忘れかけたある日…

仕事場から帰った父が

「今日、中尾さんって方の秘書とおっしゃる女性の方から電話があって、『中尾がぜひ、ご家族を食事会にご招待したいと申しております』とか言われたんだけど中尾さんって知ってるか?」

と聞かれ

「中尾?知らないけど…」

と言うと

「えっ、お嬢さんの知り合いって言ってたよ」


中尾?… 聞いた事ない…

「なんかピアノとかキーボードがどうだとか言ってたぞ」

と聞いた瞬間
おじいさんだ!…とすぐにわかった。

「え~っ!どうして!すごいっ」
を連呼する私に

「知り合いだっただろ?すごく探してらっしゃったみたいだぞ」


驚きといっしょに感動が襲って来てに涙がでた。