1992 -4ページ目

1992

1992

3月30日木曜日。
大阪へ向かう電車の中。今日は暖かい。もう春だ。昨日はバイト先の居酒屋で4年間いっしょに働いていた先輩と入る最後の日だった。このどうしようもないダメな先輩は、おれは最初全然好きではなかった。仕事は適当、変にプライドが高い、常識がない、30歳にもなって居酒屋でアルバイトの現状維持。4年間プライベートで会うことは一度もなかった。あまり関わりたくなかった。でも何故か、バイトを辞めて昼の仕事につくと聞いたとき、凄く寂しかった。ついにあの先輩が大きな一歩を踏み出しちゃんとした仕事に就職しようとしている、応援しなくてはいけないのに、それよりも寂しいという感情の方が強かった。その先輩はとにかく優しかった。金がないおれに何度かご飯を奢ってくれた。休憩中、家から持ってきたカップ焼きそばを作っていると横からこっそり唐揚げを入れてくれた。思い返せば4年間ずっと不思議な距離感だった。寂しいと感じるのにはたぶん、あの先輩がいることでどこか安心していたというのもある。30歳でずっとアルバイトしているあの人もいる、おれなんてまだ全然大丈夫だ。きっとそう思っていた。酷い話だ。昨日はずっと、寂しいと感じるその感情の出所を探していた。こういう気持ちになるのは初めてだった。もうおそらくほとんど会うことはない。大して支障はない。今日は暖かい。もう春だ。あんなに待ち望んでいた春が来たのに、いざ冬の気配が消えると、少し寂しかった。