井穴刺絡による治療において、その症状が交感神経異常亢進か副交感神経かを推し量るのは非常に重要である。その判断に基づき、それぞれ、H6 商陽(手の陽明大腸経)F4 至陰(足の太陽膀胱経)そいてH5 関衝(手の少陽三焦経)F5 竅陰(足の少陽胆経)に井穴刺絡する。さらに他の井穴を組み合わせて症状を消していく。そう。井穴刺絡は恐ろしいほどの即効性と切れ味がある。

一方、経方医学もそれを知る以前に学んできた、あるいは伝え聞いてきた漢方医学治療とは次元が違う即効性と切れ味がある。そもそも刺絡を学び始めた理由は漢方(経方医学)と鍼を相互補完的に使い分けることでより即効性、持続性のある治療法を確立させることであった。

 実は私は自分で選んだ道とはいえ、結果的にしばらく生薬処方が充分にできない環境におかれ、そのかわりに刺絡治療を患者さんに展開する機会を得る結果となった。その結果、刺絡治療は私の治療バリエーションの中にしっかりと組み込まれた。この時期はともかく効かせたい。なりふり構わなかった。しかし当時からいちいちこの症状は「交感神経異常亢進」とかこの疾患は「副交感神経が異常亢進している」という表現はどうも引っかかるし、一部の研究会を除き、公の席で発表できるものではない。ちゃんとその井穴を使う意味を伝統医学から導き出して表現できるようになりたい、その様な欲望に駆られるようになってきた。しかし、いざ手元の資料を紐解くと経絡の働きや、経穴の穴性からではとても井穴刺絡治療の交感神経亢進カテゴリ、副交感神経亢進カテゴリを表現できない。もっと根本的に何か違うアプローチできないのか。そして充分説明できる理論はないのか。悶々とした日々を過ごしていた。

 ただぼーっとあれこれ妄想するのも何も変わらない。そこでこのシリーズでは経方医学から見て、治療方針あるいは病態の説明、方意の解説において、それが井穴刺絡での治療ではどれに当たるのかを、経方医学の著作を読み進めながら俯瞰し、論考していくうちに何らかの着想を得ようと思う。