ヴァイオリニスト、アウグスティン・ハーデリヒ(Augustin Hadelich, 1984- )を改めて聴いています。
嫋やかで繊細な演奏もいいですが、最近は「強い」演奏に惹かれます。
ハーデリヒのパフォーマンスは魅力的です。
ハーデリヒはドイツ人の両親のもと、イタリアで生まれました。父親と兄たちの影響でヴァイオリンやピアノなどを始めました。15歳のとき父の経営する農場が火事にあい、火傷を負いますが、急遽ドイツに搬送され事なきを得ました。
後にジュリアード音楽院に学び、在学中にミネアポリスのコンクールで金賞を獲得しました。
バッハの無伴奏パルティータ3番からジーク
強く華やかだけではない繊細な演奏も彼の魅力です。
メンデルスゾーンの協奏曲(フランクフルト放送交響楽団、ゼバスティアン・ヴァイグル指揮)
今まで聴いたなかで最高の演奏のひとつです。特に、第三楽章が素晴らしい。
短い音でも途中で音色が微妙に変化します。ビブラートの妙ですね。
フレージングもディナミークも繊細です。
単にバリバリ弾くだけの人ではないです。
もちろん、超絶技巧の人です。
アンコールで弾いた「オレンジブロッサムスペシャル」
カントリーのナンバーをヴァイオリンソロ用にアレンジしたもの。
彼はたいへん知的な人でもあります。
ハーデリヒへのインタビューから
「オイストラフの演奏を聴くとブラームスやチャイコフスキー、シベリウスが聴こえ、オイストラフが聴こえないことに衝撃を受けた。控えめでありながら美しく、自然に音楽的だった。それが私の心に響いたのだ。」
新奇なことではなく、その曲を表現するということでしょうか。
その一方、自分の個性も大切だと述べます。
「現代の若手奏者は、偉大なヴァイオリニストたちの演奏をオンラインで観られるため、急速に上達する。・・・(しかし)過去のヴァイオリニストたちは互いに異なる演奏をしたが、今ではそれが少し減っている。小さな子供たちですらあらゆるヴァイオリニストの演奏を見られるため、自分なりの解決策を探す機会が減っているのだ。」
楽器について
「ストラディバリウスやデル・ジェズ、グアダニーニを弾かなければならないという考え方は間違っている。それらを使わずに素晴らしい音を出すソリストもいる。奏者次第なのだ。」
「特別な現代製ヴァイオリンを数多く見てきたが、一部の製作者は『音量が非常に大きく、弾きやすい』ことに重点を置いていることに気づいた。・・・『このヴァイオリンは弾くだけで音が出る』と錯覚するのだ。」
「音量だけを基準に選んだ場合、数ヶ月弾き続けるうちに、音色の豊かさや複雑さが不足していることに気づくかもしれない。」
SNSについて
「ソーシャルメディアは支援者やファン、他の音楽家と繋がるためのツールであり、その点では有用です。しかし精神的に有害な側面も持ち合わせています。・・・私たちは、(SNSで)目にするものが常に理想化された姿だということを忘れてはいけません。だからこそ、物事を現実的に捉え、自分の状況に集中し、他人を過剰に見つめない姿勢が必要です。自分ができること、どう成長できるかに目を向けるべきです。」
